「叱る」と「怒鳴る」は全く異なるもの!
正しく叱れる指導者を目指しましょう!
※最近は怒鳴ることはもちろん、もはや大きな声で叱ることもほとんどないですね。はっきり言って怒鳴った方がよっぽど楽ですが。あくまでも過去記事としてご覧ください。
〇「叱る」とはどういうことか?
以前、野球部の練習試合についてお話しましたが、今回はそれにも関連して「叱る」ことをテーマにお話したいと思います。
みなさん、部活動を指導する際にどう「叱る」ようにしていますか?
私は基本的には子どもは褒めて伸びるものだと思っています。
野球部の顧問になった当初も些細なことでもどんどん褒めて育てようと思い指導にあたっていました。
しかし、1年、2年とたってもなかなかチームが成熟していきませんでした。
褒めて伸びる部分も多かったのですが、組織として強いかと言われると非常に微妙でした。
ある時、練習試合で他校の先生が緩慢なプレーをした選手(エースの子でした)を厳しく叱っているのを見て「これが足りなかったんだ。」と気付きました。
その先生に叱られた子は本当に反省しているようでした。
そして、その先生に褒められた子も本当に嬉しそうでした。
今思えば、うちのチームは褒められ慣れてしまっていたのだと思います。
慣れてしまった「褒め」はもはや「褒め」ではなく、緩みにつながってしまっていました。
その日以降、私は褒めることと同じくらい叱ることを意識することにしました。
以下、私が実践してきた叱るポイントをまとめたいと思います。

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1、叱るポイントを明確にする。
…これはいろんな方が言われていることですが、「どんなことをしたら先生に叱られるのか」明確にしておくことです。
たとえば、「人が傷つくことを言ったら絶対に許さない」。
これはあらかじめ子どもたちにしっかりと伝えるべきです。
そして、一度決めたなら絶対に揺らいではいけません。
怒ったり怒らなかったりしてはいけないということです。
この基準は部活動保護者会やミーティングでしっかりと明示しました。
2、すぐにその場で叱る。
…誰もいないところに呼んで叱る人がいますが最悪です(デリケートな問題の場合はそういうこともありますが)。
後で叱るも最悪です。
子どもからすると今更感が出てしまい、効果は激減してしまいます。
叱ることが目的ではなく、叱ることによってその子やチームの行動を改善することが目的です。
ですからその場ですぐに叱るようにしましょう。
たとえば野球道具を雑に扱っていた選手がいたら、即その場で
「それは無いだろう!野球道具を投げていいのか!?」
といった形でピシャリと叱りましょう。
そして、後述しますが、近くまで呼んで、
「何で先生が叱ったか分かるよね?」
といった形でトーンを落としてプラスアルファの指導をすべきだと思います。
3、叱るレベルを3段階用意する。
…常に同じ叱り方ではダメです。
子どものしてしまったまずいことのレベルに応じて叱り方を変えましょう。
たしなめる→ピシャリと叱る→厳しく叱る
のように自分なりに3段階くらい用意すると子どもにこちらの気持ちが伝わります。
何でも大声で怒鳴っている人や、逆に何でもたしなめる程度の人がいますが伝わりません。
また、ネチネチと叱る人がいますが最悪です。
その間に子どもは別のことを考え始めますよ。
できるだけ短く叱りましょう。

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4、大声で叱らなくてはいけないのは2場面①。
…3段階のうち、一番上の「厳しく叱る」は簡単に使ってはいけません。
使う場面は2場面。
一つはチームメイトを傷つけることを言ったり、したりした子がいた場合です。
これは野球がどうこうではなく、「人間形成」の観点から絶対に許してはいけません。
ここでたしなめる程度で終わってしまうと何度も繰り返し似たような問題が起こることになります。
5、大声で叱らなくてはいけないのは2場面②.
…もう一場面は練習試合などで責任のある地位にある(部長や副部長、不動のレギュラーなど)選手の見本にならないプレー、緩慢なプレーに対してです。
私は基本的にはプレーの技術的なことに対して叱る必要はないと思っていますが、見本にならないプレー、緩慢なプレーは別です。
たとえばフライを打ち上げたときに全力疾走しなかった。
普通の子なら「今のも全力疾走しないとダメだろ」と注意し、「次から気を付けような」くらいで済ませます。
しかし、責任ある子がもしそんなプレーをしたら「おい!なんで全力疾走しないんだ!」とチームメイト全員に分かるように厳しく叱ります。
これはチーム全体にしてはいけないことを分からせるため、「部長クラスでも先生は差別しないで叱るんだ」と思わせるため(実際には逆差別ですが、部長クラスは褒められることが多いため子どもはこう感じるようです)、部長クラスはモチベーションが高いので多少叱られてもがんばることができるため、以上のような理由からです。
ただし、必ずフォローは入れます。
次の項にまとめました。
よくみんなを平等に叱ろうとして、結果としてできない子ばかり叱っている人がいますが、これはチームに良い影響がないどころか、部内いじめにつながってしまう危険性もあります。
↑こちらの記事に詳しく書きました。
もちろん、公式戦では叱りません。
公式戦では選手が失敗をするのは指導者の責任ですからね。
また、普段の練習でもあまり叱りすぎてしまうと練習が嫌になる=学校が嫌になってしまうので、普段の練習は褒めるメインでいいと思います。
6、叱ったら必ずフォローする。
…これがものすごく大切だと私は考えています。
叱った子をそのまま放置する人がいますが、子どもの気持ちを考えてください。
特に大声で叱られてベンチに帰ってくる子の心境はどうでしょうか。「しまった…」と不安な気持ちで来るはずです。
ここで追い討ちはいりません。
先に述べたように責任のある子もしくは期待している子を叱るわけですから帰って来たら必ずフォローしましょう。
「なんで先生が怒ったか分かるか?このチームの中心は君だろ?君が見本を見せないで誰が見せるんだよ。大丈夫、君ならできるから試合に出してんだ。次はできるだろ?」こんな感じで語りかけます。
これは叱っているようで実は褒めているのがお分かりでしょうか?
こんな形で話をされると子どもは「次こそ期待に応えよう」という気持ちが出てきます。
また、この語りはチームメイトにわざと聞こえるようにやってください(影でやってはダメです)。
みんなに聞こえるようにやることで、こちらの意図がチームメイトにも伝わるし、ただ頭に来て怒っているわけではないことが分かります。
このフォローがないと子どもはどんどん野球が嫌になりますし、それを見ているチームメイトも顧問の顔色をうかがってプレーするようになっていきます。
そして、何よりフォローをしないでただ怒鳴っていたら体罰です。
昨今、よく見るのが「帰れ!」と指導者が言ったところ、本当に帰ってしまったというシーンです。
これは、よく「いまどきの子どもは…」と言われがちですが、そのいまどきの子どもに対応した指導ができないのなら指導者を辞めた方がいいと思います。
叱って、考えさせて、ヒントを与えて、チャンスを与える。
叱ってはいけないのではなく、選手が伸びる叱り方をしなくてはいけません。
以上、私が実践してきた叱り方でした。
特に最後の「フォローを入れる」というところは絶対に必要ですのでぜひ取り入れてみてください。
ただ、最終的にはどのくらい子どもに愛情があるかだと思います。
単なるテクニックで叱っても子どもには伝わってしまいます。
褒めるにしろ叱るにしろ愛情をもって子どもたちを育てていきましょう。
また、もちろんこれは他の部活動でも応用できますのでぜひ応用してみてください。
関連記事です。