教員の勤務状況が大変なことになっている!
部活動問題に解決の糸口はあるのか!?
※こちらの記事は2016年に書いたものです。現在の私の考えとは異なりますのでご了承ください。
〇部活動が教員を苦しめている。
前回までに教員の勤務の実態をまとめ、
「授業時数を減らすこと」と「部活動の在り方を再考すること」
が必要なのではないかという話をさせていただきました。
今回は部活動をどうするべきなのかということに焦点を当ててお話したいと思います。
前回お話したように、部活動は「教育課程の一環ではあるが、教育課程内ではない」という非常にあいまいであり、部活動を受け持つかどうかは管理職の裁量と個人の判断になっているというお話をしました。
そのために、一方では非常に大変な部活動を任せられ、50名部員がいる部活動を土日も休みなく見ている人もいれば、何の部活動も受け持っていないという人もいます。
土日の勤務で少しの手当ては出るものの、部活動をやって遅くまで残ろうが、定時に帰ろうが給料は変わりません。
それでも、「部活動がやりたくて教員になったんだ」とか「好きなスポーツを教えることができて嬉しい」という人はまだいいかもしれませんが、全く運動経験のない初任の先生がテニス部の顧問をやらされているというような場合は本当に悲惨です。
そして、そういったケースは稀ではなく、よくある話です。
〇部活動を外部委託するという改善策
こういった状況をどうにかしようということで、既に提案がいくつか出ています。
一つは部活動を外部委託すること。
外部委託といっても二種類の方法があると思います。
一つは教員が顧問という形で残りつつ、外部指導員という形でメインの技術指導は外部に委託するという方法。
もう一つは部活動をスポーツ少年団のように完全に学校から切り離して場所だけ提供し、完全に外部の活動という形にする方法。
この二つがあげられているようです。
しかし、この二つの案は難しいところがいくつもあります。
外部指導員という形で関わってもらう場合、これは学校・部活動によってはすでに外部指導員をお願いしているケースがあります。
これはやったことのない競技であったりして技術指導ができない教員にとっては非常にありがたいのですが、全学校、全部活動で外部指導員を揃え、16時から毎日来てもらうというのはどう考えても現実的ではありません。
おまけにこのやり方では、本来の目的である教員の負担を減らすということは達成できません。
なぜなら、外部指導員の方との連絡、指導方針のすり合わせ、外部指導員の登録手続きなど様々な仕事がさらに増えることになるからです。
おまけに外部指導員の方がいるから「はいおまかせ、教員は17時に帰ります」そんなことはできません。
ケガ人が出たり、何か問題があったりしたときに責任を取れるのは教員ですから、結局負担は減らないのです(技術指導の負担は減ります)。
完全に外部委託する方法も難しいと言わざるを得ません。
このやり方だと学校によっては野球部やサッカー部などメジャーな競技は地域の人たちの協力によってある程度活動を維持できるかもしれません。
しかし、部活動はそういった競技だけではなく、美術部や書道部などの文化系の部活動もあります。
各学校で生徒のニーズに応えられるようにいろんな部活動が設置されているわけです。
しかし、外部委託すると人気のある部活動(=指導できる人が多い部活動)だけが残っていく可能性が高いわけです。
また、この形だと外の野球クラブや書道教室に通うのとあまり変わらなくなってしまいます。
それだと極めてまずいことに「教育課程の一環」にならないのです。
外のクラブや習い事と部活動の決定的に違うところは顧問が教育者であるか否かです。
外部委託した場合、指導する人は教員ではありませんので、「教育課程の一環」としての活動を期待することは難しくなります。
「教育課程の一環」ではないのであれば学校の敷地を放課後に利用してもらって活動を行う理由も特になくなってしまいます。
〇部活動を逆に校務分掌にしっかりと位置付けてみてはどうか?
というわけで、外部委託方式では教員の負担が減らない、もしくは教育的な活動にならないということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
では一体どうしたらいいのでしょうか。
ここからは少し時代に逆行した逆説的な意見になってしまうのですが、私は「教育課程内にはっきりと位置付け」、なおかつ「校務分掌にし、全教員が受け持つこととする」提案をしたいと思います。
負担を減らすという話をしてきたのに、これでは負担が増えるのではないかと思う人も多いでしょう。
しかし、なぜ多くの教員が疲弊してしまっているかもう一度整理すると「あいまいな位置付け」でなおかつ「部活動の負担の不平等」が原因となっています。
「部活動を受け持つ義務はないから私は持ちません。」これは非常に真っ当な意見です。
キャパシティがなく、授業の準備が疎かになるのであれば正しい意見だと思います。
しかし、そのしわ寄せは多くの場合若手教員にきています。
授業の準備にベテランよりも時間を要する若手教員が大変な思いをしているわけです。
ですからもうはっきりと部活動を教育課程内に位置付け、明確に教員の仕事であるとしてしまうべきです。
そして校務分掌内に位置付けることで全職員の負担のバランスをとるようにします。
その代わり、定時以降の部活動というのは本来おかしいわけですから、土日の部活動と同じように、17時以降の部活動勤務に対してはしっかりと手当てをつけるべきです。
そうすることで負担とお金の問題は是正されるはずです。
さらに部活動に今まで通り教育的な意義も期待することができます。
※仕事のアンバランスについてはこちらでも触れています。
しかし、「いやいや、できないから部活動を断っているのにやれと言われても困る」という方もいることでしょう。
やれる範囲の中で最大限子どもたちのためにやれば良いだけです。
自分のキャパシティを超えてやることは回り回って子どもたちのためになりません。
17時までしか見られないなら17時までで良いのです。
土日の活動が難しければ平日だけで良いのです。
私の学校でも週一回1時間活動をしている英語部や書道部があります。
そのくらいの時間でもやってもらえれば確実に一人ひとりの負担は減るのです。
「それぞれがやれる範囲で教員全員で負担をする。それに対する対価は確実に支払う。」
これが一番現実的な部活動のあり方ではないでしょうか。
〇部活動問題を解決するための課題
これには解決しなければいけない課題がいくつかあります。
一つは世間の見方です。
部活動というものは今日では当たり前にあるものになっています。
教員が勤務時間外に活動を行うことが当たり前になってしまっているのです。
ですから17時までの活動にしたり、土日を休みにしたりすることに罪悪感をもってしまう教員も少なくありません。
この点を改善するためには、二つ目の課題と関連させて考える必要があります。
二つ目は管理職の考え方です。
管理職ともなると50代の方々ですから、自分が部活動を熱心にやってきたという方が多いのです(それだけ教員の仕事にゆとりある時代でした)。
そのイメージを若手教員にも押し付けてしまう管理職が意外と多いのです。
「若いうちはとにかく部活指導をがんばれ。私が若いときは一か月休みなしなんて当たり前だったぞ」などとプレッシャーをかける管理職もいるくらいです。
先にあげたように、自分のキャパシティ内でやれるかどうかは管理職がその考え方を理解できるかどうかにかかってきます。
家庭の事情などで17時までしか部活動ができない教員に対して「部活動をあまりがんばっていないから」などと管理職の評価(年度末に行われます)が低かったらこの私の提言は成功しません。
管理職研修などにより管理職が部活動のあり方をもう一度見つめ直し、地域の方々にも管理職から「教員がやれる範囲で努力していく」ということを発信していく必要があります。
以上、教員の勤務状況を改善するために部活動のあり方について私の意見を述べていきました。
私は部活動はこれまで「教育課程の一環」として人間形成の場になってきたと思っています。
ある意味日本のすばらしい文化の一つだと思うのです。
ですから良い点を残しつつ、教員の負担を減らし、より子どもたちのためになる学校になればいいなと思っています。
一方、部活動問題について考えていらっしゃる「部活動問題対策プロジェクト」の方々の意見は部活動を完全廃止することを目指しています。
↑こちらのリンクからぜひサイトを見ていただきたいと思います。
私の意見とは少し異なりますが、部活動問題に真剣に取り組んでいる方々です。
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