なぜボークだったか分からない!
そんな経験はありませんか?
複雑なボークのルールをかなり丁寧にまとめました!!
〇ボークのルールはかなり複雑…
今回は野球のルールの中でも複雑で、質問の多いボークについてまとめてみたいと思います。
ボークにはいくつも種類があり、野球未経験であったり、野手出身の指導者であったりした場合はなかなか指導しきれない部分でもあると思います。
そこで、できるだけ丁寧にボークについて説明していきたいと思いますので、参考にしてください。
2023年公認野球規則対応ですが、ローカルルールについては各団体でご確認ください。
1、投球動作を途中で中断した場合
「投手板に触れている投手が、5.07a(1)および(2)項に定める投球動作に違反した場合。」(公認野球規則6.02a(1))
簡単に言うと、投げる途中で動作を止めたらボークということなのですが、これもさらに細分化できます。
①投げようとしたが、軸足がふらついて投球をやめてしまった場合(こけてしまう場合もあります)。
②サインを見ているところからセットポジションに入ろうとストレッチをする途中でやめてしまった場合。
よくあるのが②です。
上の動画の二つ目のボークもこの②のボークですね。
悲しいことに甲子園でこの②のボークでサヨナラ負けという試合がありました。
それも延長15回までやってのサヨナラボーク…。
う~ん、何度見ても切ないです…。
2、投手がセットポジションで完全静止を怠った場合
「投手がセットポジションから投球するに際して、完全に静止しないで投球した場合。」(公認野球規則6.02a(13))
これまた非常によくあるボークですね。
投手はセットポジションでグローブの中にボールを入れるポジションで
「完全静止」しなくてはいけないというルールがあります。
完全静止というのがやっかいで、具体的に何秒かは決まっていません。
したがって球審によってボークになったりならなかったりするのですが、とにかくしっかりと止めれば問題はありません(目安としては1秒ほどではないでしょうか?)。
よく、ピンチのときに慌ててこのボークをする人がいます。
下の動画はTVを撮影した動画なので見にくいですが分かりやすいですね。
ちなみにランナーがいない場合でも完全静止しないとアマチュア野球ではイリーガルピッチ(反則投球)になります。
↑詳しくはこちらです。
その場合はボールカウントが一つ増えることになります。
3、バッターが構えていないのに投球した場合(クイックピッチ)
「投手が反則投球をした場合。」(公認野球規則6.02a(5))
公認野球規則の本文はあっさりしているのですが、【原注】に詳しくクイックピッチについて記載があります。
「クイックピッチは反則投球である。打者が打席内でまだ十分な構えをしていないときに投球された場合は、審判員は、その投球をクイックピッチと判定する。塁に走者がいればボークとなり、いなければボールである。クイックピッチは危険なので許してはならない。」(公認野球規則6.02a(5)原注)
要するにバッターがまだ構えていない(サインを見ているなどしていた)ときに投球をすると非常に危険なのでボークになります。
このボークは動画で見てもらえれば分かると思います。
ただし、バッターが一度構えたのに投球の途中で構えをやめた場合など、バッターに責任があると考えられる場合はボークにはなりません。
クイックピッチはバッターが構える前に投球してしまう非常に危険な行為なので指導者も注意しましょう。
本来はこの球審の方もバッターが構えていないのにピッチャーがセットポジションに入ろうとしたら「タイム」をかけるべきです。
以前、「クイックピッチをする前に球審がタイムをかけたらボークにならないじゃないか」という指摘を受けたことがあるのですが、そもそもこのルールは選手が安全にプレーができるように作られたルールです。
選手にケガの恐れがあるのですから、可能な限り「タイム」をかけるべきです。
↑こちらもご覧ください。
4、牽制をする際にそのベースの方向にしっかりと足を踏み出さなかった場合
「投手板に触れている投手が、塁に送球する前に、足を直接その塁の方向に踏み出さなかった場合。」(公認野球規則6.02a(3))
1塁に牽制するなら1塁に、2塁に牽制するなら2塁にしっかりと自由な足を踏み出して牽制しないとボークになります。
よくあるのが左ピッチャーがその場で足踏みをするように1塁へ牽制することです。
【湘南クラブボーイズ小笠原慎之介】 セットポジション&牽制.wmv
この動画の若き小笠原選手はしっかりと1塁に踏み出しているのが分かりますね。
これはボークではありません。
このしっかりと塁に踏み出すのこと細かな定義はありません。
これを逆手にとって、ボークかボークでないかスレスレの牽制を行うチームもあります。
中には、1塁審判が上手か下手か判断した上で、敢えて本来であればボークになる牽制をするチームもあるそうです。
くれぐれもアンフェアなプレーは慎んでもらいたいです。
5、1塁や3塁への牽制時に偽投をした場合
「投手板に触れている投手が、一塁または三塁に送球するまねだけして、実際に送球しなかった場合。」(公認野球規則6.02a(2))
偽投とは投げるふりをすることです。
以前は3塁への偽投はOKでしたが、現在は禁止されています。
ただし、プレートを外した場合は投手ではなく野手扱いになるので偽投をしても大丈夫です。
また、上記のケース以外でよくあるのは、左ピッチャーが1塁に偽投してしまうことや、右ピッチャーが1塁へ牽制する際にプレートを外していないのに投げなかった場合もボークになります。
こちらに詳しく書きましたが、右ピッチャーが1塁へ牽制を行う際に「一挙動」で行う牽制が認められています。
「前外し」などと呼ばれることもある牽制です。
この牽制の場合、プレートを外しているので偽投が許されると勘違いしている方も多いのですが、プレートを外すというのは外側に外すことを指します。
つまり、一挙動の牽制は1塁へ投げないとボークとなるので注意してください。
また、2塁へは偽投をして構いません。
6、ボールを持っていない投手がプレート付近に立った場合
「投手がボールを持たないで、投手板に立つか、これをまたいで立つか、あるいは投手板を離れていて投球するまねをした場合。」(公認野球規則6.02a(9))
これは隠し球を行うときに取られることのあるボークです。
ほとんどありませんが、プロ野球では何度かこのボークが適用されたことがあります。
すみません、これは映像が見つかりませんでしたが、ジャイアンツの元木さんが隠し球を試みた際に桑田さんがプレート付近に立ちボークが適用されたことがあります。
中学野球や少年野球ではまあそんなにないケースだと思います。
7、ランナーのいない塁に牽制(送球)をした場合
「投手板に触れている投手が、走者のいない塁へ送球したり、送球するまねをした場合。ただし、プレイの必要があればさしつかえない。」(公認野球規則6.02a(4))
これはよほど緊張しているかふざけていないとやらないと思います。
少年野球や中学野球では稀に守備の時間が長くなった際にケースが分からなくなってやっちゃう投手はいますね。
ただし、「タッチアップをしたランナーの離塁が早かったのではないか」などのアピールプレーのために送球することは認められています。
↑詳しくはこちらもごらんください。
8、左ピッチャーが1塁牽制(右ピッチャーが3塁牽制)をする際に自由な足がプレートの後縁を越えた場合
「左投げ、右投げ、いずれの投手でも、自由な足を振って投手板の後縁を越えたら、打者へ投球しなければならない。ただし、二塁走者のピックオフプレイのために二塁へ送球することは許される。」(公認野球規則6.02a(1)原注)
左ピッチャーが1塁に牽制する際は先にあげたように自由な足を1塁にしっかりと踏み出さなければいけない他、自由な足がプレートの後縁を越えた場合、ホームに投球しなければいけないというルールがあります。
よく、「自由な足が軸足と交差したらボーク」と間違えている人がいるので注意してください。
ただし、運用上、交差したらボークを取る審判の方も多いのでできるだけ交差しないように指導すると良いかと思います。
これはよくあるボークなので、左ピッチャーを指導する場合は注意してください。
当然、右ピッチャーの3塁牽制も同様なのですが、ケース的には圧倒的に左ピッチャーの方が多いので注意してください。
9、キャッチャーが敬遠時にキャッチャースボックスを外れて構えた場合
「故意死球が企図されたときに、投手がキャッチャースボックスの外にいる捕手に投球した場合。」(公認野球規則6.02a(12))
キャッチャーが関わるボークはこれ一つになります。
これは敬遠のときにあるボークで、ピッチャーがリリースするまではキャッチャースボックスから出てはいけません。
意外とよくあるボークなので気を付けてください。
敬遠時以外はキャッチャースボックスから足がはみ出ていても大丈夫です。
2017年の夏の選手権大会徳島県予選でまさかのキャッチャーボークでのサヨナラ負けという試合がありました。
選手は本当に無念だったと思いますが、ルール上明記されている以上、しっかりと対応していくしかありませんね。
指導者は頭に入れておきましょう。
10、投手がイリーガルピッチをした場合
「投手が反則投球をした場合。」(公認野球規則6.02a(5))
要するに普通じゃない投げ方をして、バッターが不利益を被る場合です。
もともとは2段モーションやグラブを叩くことがこの項目にありましたが、消えました。
これについては後述します。
個人的には一時期話題になったMLBのクエトという投手もイリーガルピッチしまくっていた気がしますが、これはセーフなんですね笑。
(11、2塁への牽制でプレートの前に外した場合)
こちらの動画をご覧ください。
ソフトバンクホークスの投手が牽制練習を行っていますが、みなさんプレートの前に軸足を外しています。
これは一般的には慣例的にOKとなっていますが、厳密にはルール上はボークになります。
公認野球規則にはプレートは後方に外さなくてはいけないと明記されています。
ただ、やってみると分かるのですが、試合が進むと軸足の足場が削れ、2塁に牽制するためにプレートをまたぐのは非常にやりづらくなります(そもそも試合開始時にプレートが盛り上がっているグラウンドも多いですね)。
また、前に外した方が回転半径が小さくなるので圧倒的に速いです。
なので、前に外した方がいいと思います。
が、公認野球規則に本当にのっとって適用した場合にはボークになり、文句は言えないので注意してください。
実は、私もやって良いプレーなのか長年よく分からず、最終的には日本野球連盟のアマチュア野球規則委員会に問い合わせて、ようやく「ボークを取ってもかまわない」と回答をいただき解決しました。
実際に、公認野球規則を読み解くと、プレートを前に外す行為というのは認められていませんし、ルール上はボークという解釈で良いと思います。
しかし、実際はほぼ流されているということで、自分が審判であればボークは取らないという結論に至るのかなと。
私はルール上ボークを取られてもおかしくはないということも伝えた上で前に外した方が速いと指導するようにしています。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
〇改正によりボークでは無くなったもの!
①2段モーション
実は2017年まではイリーガルピッチの一つ(=ボークを取られる)に「2段モーション」がありました。
しかし、2段モーションはランナーがいない場合に限り、2018年からほぼほぼ認められることと決まり、さらに2020年の改正によって、完全解禁となりました。
↑2018年の改正についてはこちらです。
(5)5.07(a)(1)①および同(2)②を次のように改める。(下線部を改正)
打者への投球動作を起こしたならば、中断したり、変更したりしないで、その投球を完了しなければならない。
(6)5.07(a)(2)【注2】を次のように改める。(下線部を改正)(1)(2)項でいう〝中断〟とは、投手が投球動作を起こしてから途中でやめてしまったり、投球動作中に一時停止したりすることであり、〝変更〟とは、ワインドアップポジションからセットポジション(または、その逆)に移行したり、投球動作から塁への送球(けん制)動作に変更することである。
『公認野球規則2020』より
公認野球規則はこのように「2段モーション」に関する記載が無くなっており、要は「2段モーション」がイリーガルなものであるという考え方自体が無くなりました。
これは、「2段モーション」がバッターに悪影響があるのかという研究の結果、2段モーションによってバッターが被る悪影響は無い、もしくは極めて限定的だと分かったからだそうです。
これは実は私も訴えていたことなのですが、研究が進んでいたことと、それを受けて改正されたことにびっくりです。
↑打者への影響が無いのではないかとはこちらでも書いていました。
高校野球以下のカテゴリーでは2018年以降も引き続き反則投球として扱われてきました(しかし、注意のみでボークは取られないという中途半端な内容)。
今回の改正でアマチュアでもイリーガルピッチにならなくなり、ついに完全解禁となりました。
2段モーションについてはFacebookで繋がりのある方がご丁寧に連盟等に問い合わせた結果を教えてくださり本当に助かりました。
②投球途中でグラブを叩く
もう一つ、地味に解禁されたのがこれです。
もともと、プロ野球ではほとんど無視されていたルールですし、中体連でもこのボークを取ったことも取られたことも無いです。
【全盛期シリーズ】〖改めて凄すぎ‼〗杉内俊哉のピッチング集‼ 脱力フォームからの糸を引くストレートがヤバすぎ‼
上の動画は杉内投手ですが、完全にグラブ叩いていますよね。
もともとあって無かったようなルールなので気にしなくて良いと思いますが、改正によって全く気にする必要がなくなりました。
グラブ叩いたからといってバッターが困ることも無かったですからね…。
以上、ボークについてまとめてみました。
正確にはもっと細かいボークもありますが、上記のボークを覚えておけば大体困ることはないと思います。
何か質問がありましたらお気軽にお問合せください。
指導者の方々は公認野球規則は持っていたほうが良いと思います。
アフィリエイトはやっていませんが、こちらもおすすめです。
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