軟式野球界では今や無くてはならない物となってしまった複合(コンポジット)バット。
中学野球でも本当に必要な物なのか考えてみませんか?
〇複合バットはとにかく飛ぶ!
私はこれまでビヨンドマックスをはじめとする各社の複合バットを紹介してきました。
これらの複合バットの特徴は
「とにかく飛ぶ!」
「打球が速い!」
ということがあげられます。
2002年に初代ビヨンドマックスが発売されて以来、各社が競い合い、様々なバットが登場し、その度に飛距離が増してきています。
中体連でも、一度は禁止に踏み切ったものの、再び使用が認められる地域が増え、今ではほとんどの中学生野球部員が複合バットのお世話になっている状況です。
私も自身の草野球でビヨンドマックスキングを使用しており、生まれて初めて軟球を左中間に120m超えのホームランを打つことができました。
このように複合バットのおかげで打つことの楽しさを味わった選手も多いことでしょう。
この点は私も複合バットを評価しているところです。
私も草野球用にビヨンドマックスを1本持っていますし、ブラックキャノンMAXの購入を検討しています。
〇果たして中学野球に複合バットは必要なのか?
実は、近年中学硬式野球用の複合バットも発売されています。
ZETT(ゼット) 野球 中学 硬式 FRP(カーボン製) バット アンドロイド2 84cm ブラック(1900) BAT21884
- 出版社/メーカー: ゼット(Zett)
- メディア: スポーツ用品
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やはりそちらも従来のバットよりも飛ぶそうです。
確かに飛距離が出れば野球の楽しさも増すかもしれません。
しかし、いくら今の複合バットの打感が普通の金属バットに近づいているとは言え、金属バットとはまるで別物なのは事実です。
複合バットならかなり前で打ってもボールを運べますし、詰まっても内野の頭は超えます。
↑その辺りの問題についてはこちらの記事で述べています。
しかし、その打ち方に慣れたまま高校野球に臨んだら手が痺れて仕方がないでしょう。
実際、以前よりも軟式野球出身のバッターが高校野球で活躍できなくなってきています。
それだけならまだ良いと思います。
中学生で打つことの楽しさを覚えて高校野球で自分の実力の無さを痛感し、努力する。
これは悪いことではないかもしれません。
しかし、私が一番危惧しているのは、複合バットの値段です。
現在一番高い複合バットは定価で40000円をゆうに超えます。
↑定価43000円…
これは中学校野球部が何本も揃えることができる物ではありません。
もちろん個人で買うのもなかなか難しいものがあります。
そして翌年にはさらに飛ぶバットが、さらに高い価格で販売されてしまう。
これはかつての水泳のレーザーレーサー問題を彷彿とさせます。
北京オリンピックを前にした2008年5月の時点では、ゴールドウイン社がSPEEDOとのライセンス契約を行っていた。しかし日本水泳連盟はゴールドウインとは契約しておらず、そのままでは北京オリンピックで日本代表選手はレーザー・レーサーを着用できない。そこで日本水連はまず、「契約中の3社(ミズノ、デサント、アシックス)に改良を求める」との立場をとり、公式大会などで選手に試用させて比較を行ったうえ、6月10日を期日にレーザー・レーサーの使用を認めるかどうかを決めることとした。これを受け、各社は5月30日に改良型の水着を発表した。6月6日に行われたジャパンオープンではレーザー・レーサーを着た選手が日本記録を連発(北島康介は6月8日に世界記録を更新)、17の新記録のうち16がこの水着を着た選手によって生まれた。この結果を受け日本水連は6月10日、レーザー・レーサーの使用を認める方針を発表した。
「草野球でホームランを打ちたい!」というレベルならまだしも、中学校の部活動で道具で勝負が決まるというこの状況は健全なのでしょうか?
もし複合バットが今後もこのような高価な物であり続けるのであれば、私は中学野球では再び禁止にすべきだと思います。
草野球では一向に構わないと思いますが…。
〇それでも購入してしまう中学校野球部。
そんなことを言うなら買わなければいいじゃないかという意見もあるかもしれません。
そうしたいのはやまやまですが、それはなかなか難しいことになります。
周りのチームが持っているのに、自チームが持っていないのは圧倒的不利なのです。
高い物でも揃えざるを得ない状況になってしまっているのです。
やはり私もお金がない中、部費で購入してしまっています。
ある意味、私のように「本当は必要ないと思っているのに買ってしまっている層」が一番タチが悪いのかもしれませんね。
「複合バットは使わない」
そんな強い信念をもってチーム作りをしているチームがあります。
愛知県の全国大会常連軟式クラブチーム東山クラブです。
東山クラブの戦いを見て、気になったことがひとつ。ビヨンドマックスなど、いわゆる「飛ぶバット」(複合バット)を誰ひとりとして使っていないことだ。これは、今の中学軟式野球界では大変珍しいことだ。偶然なのか、あるいは意図的なのか、その真意を藤川豊秀監督に聞くと、こう明かしてくれた。
「うちは基本的には使いません。チームを指導するうえで常に考えているのが、『高校につながる野球』です。複合バットのように芯があれだけ長いことは、普通の金属バットや木製バットではありえないこと。バットのバランス自体も、ほかのバットとは違います。中学野球がメインであればいいですが、うちの考えはそうではありませんから」
これまで、複合バットを使っていれば、長打の可能性があった打球を何本も見てきたという。それでも、「それで負ける分には仕方がない」と割り切っている。
この記事を見て感動しました。
私も藤川さんのように信念をもって指導に当たりたいものだと思いました。
〇金属バットで戦いたい!
エスエスケイ(エスエスケイ) 軟式用金属製バット スーパーニューコンドルRB 83-680 SCN0041490-83 (Men's)
- 出版社/メーカー: エスエスケイ
- メディア: その他
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実は、複合バットを作っているメーカーの中にも複雑な思いを抱えている方がいます。
どこのメーカーかは伏せておきますが、私が電話取材したメーカーの中で、こんなことを言っていた方がいました。
「最近は一生懸命金属バットを作っても売れないんですよ。素人の人には音が変だって言われるんです。カキーンっていう野球の音が変だって言うんですよ。」
なんだか悲しい話ですね。
複合バットを紹介する記事を何本も書いておいてどうかと思うのですが、私は以前のように金属バットで戦いたいと考えています。
道具の差ではなく、選手の、チームの実力で勝敗が決まる野球がしたいです。
ただ、一方で長打を打つ喜びも味あわせてあげたいとも思っているわがままな私なんですけどもね…。
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