中学校野球部!絶対に強くなるヒント集

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『「学力」の経済学』!教育関係者だけではなくみなさんに読んで欲しい名著!【2015年6月発売】

思い込みで語られてきた教育に、

科学的根拠(エビデンス)が決着をつける!

(書籍帯より)

 

〇『「学力」の経済学』が我々に投げかけること。

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

最近再び、大ベストセラーとなった中室牧子氏の『「学力」の経済学』 を読みました。

大ベストセラーになるだけあって、この書籍は読む価値大だと思います。

教育関係者はもちろん、子をもつ親御さん、いや大人の方みなさんに読んでもらいたいと思えるすばらしい書籍でした。

この本の最後、第5章にこの本が一番伝えたいことが簡潔に書かれています。

 

「教育にエビデンス(科学的根拠)を。」

※以下、「エビデンス」とだけ述べさせていただきます。

 

〇エビデンスが足りない教育界

この本では教育に関わる様々なテーマを扱っています。

・子どもをご褒美で釣ってはいけないのか?

・テレビやゲームは子どもに悪影響を及ぼすのか?

・教育にはいつ投資すべきなのか?

・しつけは重要なのか?

・少人数学級には効果があるのか?

・教員研修に効果はあるのか?

・教員免許更新制に効果はあるのか?

などなど。

 

この本がすばらしいのは、これらのこと全てを中室氏の主観ではなく、エビデンスに基づいて結論を述べている点です。

これらのことについて語る教育評論家は非常に多いです。

主観や体験談で良いのであれば誰でも語ることはできるし、私でも語ることができます。

そういった評論家の声、世間の声、現場の声も確かに大切かもしれませんが、

それらが正しい意見なのかどうかはエビデンスに基づいていなければいけない。

それが中室氏の主張であり、この本の特徴です。

 

 

〇「教育にはいつ投資すべきなのか?」を例に。

では、中室氏の論調を「教育にはいつ投資すべきなのか?」を例に見てみたいと思います。

一般的に日本では(諸外国もそうですが)年齢が上がるにつれて教育費をかける傾向がありますね。

中学校・高校に行ったら塾。

私学に通わせ始めるのも高校からが多く、大学になると多くの家庭で私立大学を受験させます。

年齢が上がるにつれて教育費が高くなっていくことが効果のあることだと何となくそう思っている。

しかし、中室氏はこのことをエビデンスに基づき否定します。

こんなことに科学的な根拠があるのかと思うかもしれません。

実は「ペリー幼稚園プログラム」というアメリカシカゴ大のヘックマン氏らによって行われた実験によって幼児教育に力を入れることが最も効果が高いことが明らかになっているのです。

この実験の内容には私もびっくりしました。

「ペリー幼稚園プログラム」では以下のような手厚い幼児教育を抽選で当選した58名に提供しました。

・幼稚園の先生は、修士号以上の学位をもつ児童心理学等の専門家に限定

・子ども6人を先生1人が担当するという少人数制

・午前中に約2.5時間の読み書きや歌などのレッスンを週に5日、2年間受講

・1週間につき1.5時間の家庭訪問

『「学力」の経済学』より引用

これらの教育を受けた子どもへの効果を測定していきます。

そして、一方でこのペリー幼稚園に入園できなかった65名 についても同様の測定を行っていくのです。

これ自体はさほど驚くことではないかもしれませんが、この子どもたちを追跡調査した期間がなんと約40年

約40年に渡って追跡調査を行うことで、幼児教育がいっときの効果を上げるだけではなく、生涯に渡って効果が高いことを証明することに成功したのです。

 

実は、この幼稚園に入園したことで得られた学力への影響は8歳前後でほぼ無くなっています。

入園できなかった子どもとの学力差が8歳でほぼ無くなったというのに、追跡調査により、以下の点で明らかな差異が判明します。

・6歳時点でのIQ→高い

・19歳時点での高校卒業率→高い

・27歳時点での持ち家率→高い

・40歳時点での所得→高い

・40歳時点での逮捕率→低い

『「学力」の経済学』より

これは幼児教育に力を入れたことで、学力のみならず、忍耐力や社会性といった「非認知能力」が上昇した結果だと発表されています。

このように、幼児教育に力を入れることは主観や個人の経験などではなく、実験によってエビデンスが得られているのです。

 

 

〇学校現場にもエビデンスを!

先ほどの例を聞いて、考えていただければ幸いなのですが、現在の日本の学校教育にはエビデンスが足りません。

これについては中室氏は、日本では教育で実験を用いるということがあまりよく思われないこと、文科省がもつデータを研究者が簡単に利用できる環境ではないこと、そもそも教育経済学という学問が評価されていないことなどの原因があるとおっしゃっています。

また、それにプラスして、現場の教員も主観や経験談に頼りすぎていることも私は原因の一つではないかと思います。

たとえば管理職も習熟度別少人数クラスを行えば学力が上がると信じている。

しかし、そのエビデンスはあるのですかと聞かれて答えられる管理職がいるのでしょうか?

部活動問題もそうです。

部活動が生活指導に良い影響を与えていると語る教員は多いですが、エビデンスはないのです。

※習熟度別少人数や部活動を批判しているわけではないことをご了解ください。

 

エビデンスが足りない中で我々(教員のみならず、地域、家庭)ができることは、あまりにも主観や経験、先入観に縛られないこと。

「それって本当に正しいことなのかな?」

という視点をもち、教育に携わっていくことではないでしょうか。

校内研究などを行う際にもエビデンスが得られるようなテーマ、方法で行っていきたいものですね。

今回、例に挙げた事例以外も丁寧にエビデンスが説明されていますから、気になる方はぜひ読んでみてください。 

 

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