甲子園ではここ10年で0アウト1塁バッター2番のバントが激減!
0アウト1塁で有効な作戦はバントかヒッティングか!?
どちらが得点を期待できるのか考えてみましょう!!
〇0アウト1塁でのバントは得策か?
日本の野球界では0アウト1塁で行う作戦として「バント」が定説になっています。
中学野球、高校野球、さらにはプロ野球でも送りバントが当たり前のように行われています。
バントをせずにヒッティングをすると「強攻」と言われ、それで点が入らない場合は批判されることもありますよね…。
しかし、本当にバントをすることが正解なのでしょうか?
最近、同じような疑問をもち、研究を行っている方が多数いて、意外にも
「バントよりもヒッティングのほうが得点期待値が高い」という結論を出している方が多いです。
こちらは東京学芸大学の及川研氏(学芸大学野球部顧問の先生でした)が栗山英樹日本ハム監督らと共同研究して発表したものなのですが、
・0アウト1塁でバントすると得点期待値は0.73。
・0アウト1塁でヒッティングすると得点期待値は0.86。
という結果が出ています。
得点期待値とはその作戦を採用した場合の期待できる得点の平均のことです。
つまり、ヒッティングをした方が多くの得点が期待できるということになります。
しかし、一方で得点確率はバントの場合が37.6%、ヒッティングの場合が36.5%となっていて、1点でも取ることができる確率は若干ですがバントのほうが高いという結果も出ています。
〇2017年夏の甲子園ではヒッティングが激増!
2017年の夏の甲子園は過去最多68本のホームランが記録されました。
あまりの激増ぶりにNHKの「クローズアップ現代」でも特集が組まれました。
その番組の中で示されたデータがおもしろかったので紹介します。
↑クローズアップ現代HPより
甲子園大会の「0アウト1塁バッター2番」のケースで、平成18年は73.7%がバントを選択。
しかし、今年平成29年はなんと47.4%と25%ほども激減しているのです。
これだけの変化があるということは甲子園での主流はもはや「バントよりもヒッティング」に変化していると言っても良いでしょう。
しかし、これがすなわち「0アウト1塁ではヒッティングが有利」と考えるのは早計です。
なぜなら、これは甲子園での結果であって、高校野球全体の結果ではないからです。
甲子園大会に出場するチームは明らかに偏ってきています。
一部の強豪私学に野球エリートが集中してきてるのです。
そういったチームでは1番から9番まで他のチームでは主軸を打てる選手です。
2番バッターにヒッティングで期待できるのも不思議なことではありません。
〇バッターによって変わるのではないか?
よくブログなどを見ていると、先に挙げた上記の
・0アウト1塁でバントすると得点期待値は0.73。
・0アウト1塁でヒッティングすると得点期待値は0.86。
という部分のみを引用し、「バントは得策ではない」と結論づけている人がいるのですが、これはそう単純な問題ではありません。
よく考えてみて欲しいのですが、
・バントのサインが出る=それほどバッティングが期待できない。
・バントのサインが出ない=そこそこバッティングに期待できる。
わけです。
つまり、もし仮に0アウト1塁で全選手にヒッティングさせた場合、バッティングが期待できない選手も打つことになるわけですから、当然得点期待値は下がります。
この統計はバッティングが期待できない選手(下位打線や投手)にバントをさせ、打てるバッター、調子の良いバッターにはヒッティングをさせての結果ですから、この統計だけで「0アウト1塁はヒッティングの方が良い」という結論にはできないわけです。
そのことは先の記事で及川氏も言及しています。
もし本当にバントとヒッティングどちらが得点期待値が本当に高いのかを調査したいのであれば、0アウト1塁は全選手がバントをするシーズンと0アウト1塁で全選手がヒッティングをするシーズンを作り、調査をする必要が出てきます。
そんなことは不可能ですから、やはりバッターに応じて作戦を使い分けることが得策なのではないでしょうか?
では、バッターによって作戦を使いわけるとしたら、どのくらい打てるバッターにはヒッティングをさせて良いのでしょうか?
これは私も分からないので調べると興味深いブログがありましたのでそちらを紹介したいと思います。
こちらのブログが非常に分かりやすくOPSを指標として解説してくれています。
結論から書くと得点確率のボーダーはOPS.609となっています。つまりOPS.609以下の打者であれば、バントをさせる事により、一点を取る確率は高まるという事になります。そしてこの数値に最も近い選手(規定到達内)はソフトバンクの今宮(OPS.602)となります。ソフトバンクの今宮といえば、守備は良いけど打てない選手の代名詞的存在。規定到達打者の中では炭谷(西)、中村(ヤ)に次ぎ下から3番目の打力(OPS)です。
ということで、得点確率だけで見るとOPS.609以上の選手であれば強行策に出ても良いとなっています。
プロ野球の平均OPSは.700ほどなので、ほとんどの選手でヒッティングさせても良い計算になりますね。
↑OPSについてはこちら。
下位打線や投手のときにバントという形が良さそうです。
少なくとも広島の菊池選手なんかにバントをさせるのは得策ではない気がします。
〇高校野球や中学野球でも同じことが言えるのか?
残念なことに先の研究はプロ野球でのことなんですよね。
高校野球や中学野球にそのまま当てはめることはかなり難しいと言えるでしょう。
プロ野球選手と高校生以下で決定的に違うところが2点あります。
①プロに比べてバントに対する守備力が低い。
②プロに比べて長打力が無い。
特に中学野球だと、バントをある程度上手に決めるとオールセーフというケースも多いです。
ホームランもほとんどありませんから、ヒッティングしたところで大量得点はなかなか期待できません。
中学野球だとOPS.600以下の選手はかなり多いと思われます。
以上のことを考えると、高校野球や中学野球ではバントの方が得点期待値も得点確率も高い可能性がかなりあります。
〇少年野球ではどうか?
高校野球や中学野球でそうなのですから、おそらく少年野球ではなおさらバントが得点につながる可能性は高いと思われます。
しかし、少年野球でのバント作戦はあまりおすすめしません。
理由は野球というスポーツの入り口にあたる少年野球では野球を好きになって欲しいからです。
少年野球を教えているわけでもない私が提案するのもあれなんですが、せっかく野球というスポーツを始めたのだから楽しく続けて欲しいと思っています。
野球の醍醐味はやはり打つことではないでしょうか?
試合のたびに「お前は打てないからバントだ」というのではなかなか野球を好きになれないのではないかと思うのです。
事実、私の甥っ子は試合のたびにバントやスクイズのサインが出て、失敗しては怒られているようです…。
先日こんな記事を目にしました。
あのバントのスペシャリスト宮本氏がバント禁止の大会を開催したと。
素晴らしい試みだと思います。
個人的には少年野球はバントも盗塁も無しで普及して欲しいなと思っています。
↑私個人もこんな野望があります。
以上、0アウト1塁でバントとヒッティングどちらの作戦が有効かでした。
結論としてはバッターによるし、チームの考え方にもよりますということになりますが、この機会に自チームの戦術について考えてみてはいかがでしょうか?
関連して2番打者最強説についても考察してみました。
ぜひご覧ください。
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