応援はパワーになる!
応援してくださる方々に感謝する視点をもって指導にあたりませんか?
〇Mさんとの出会い
前任校で、毎週練習試合や公式戦を身に来てくださる80歳を過ぎたご婦人(以下Mさんとします)がいました。
もともとは私の勤務校でボランティアをなさっていたつながりで、野球部の子が、
「M先生、今週末うちのグラウンドで練習試合があるので来てください。」
とお願いしたことがきっかけだったと思います。
職員室にいらっしゃって、私に
「誘われたんですけど、行ってもいいかしら?」
「もちろんです。よろしくお願いします」
というところからご縁が始まりました。
それが私が初任のときの話です。
それ以来、試合の際には毎回来てくださるようになりました。
当時のチームはまだ弱小チームで、練習試合でも負けることが多かったのですが、市内であればどこでもいらっしゃってくださいました。
そして、大きな声で「〇〇君、ほれ、がんばれ!」と声をからすほど応援してくださったのです。
選手たちも優しいそのMさんが大好きで、Mさん専用の椅子を用意したり、水分補給を気にかけたり、私を含め、とても良好な関係になっていました。
Mさんは保護者の方々ともすぐに意気投合し、遠くの試合は保護者の方のお車でいらっしゃるようになりました。
私も選手たちも「副顧問」「応援団長」といった扱いをさせていただいて、いつの間にかMさんを都大会に連れていこうという意識が芽生えていました。
〇自信をもって臨んだ大会での敗退…
私が赴任して4年目、主顧問になって2年目の秋のことです。
だいぶ部活動経営のノウハウも分かってきて、選手たちも技術的に成長し、練習試合での勝ちも増え、自信をもってプレーできるようになってきていました。
新チーム最初の公式戦、私が赴任してからはベスト16が最高だった野球部ですが、その大会は本当に優勝が狙えるのではないかと感じていました。
しかし、結果は準々決勝敗退…。
初のベスト8とは言え、自信をもっていただけに私も選手たちもショックを隠し切れませんでした。
そんなとき、私たちにMさんが手紙をくれたのです。
以下がその内容です。
〇Mさんからの手紙
【野球部試合観戦記】
野球ファン、大好きな私は、野球部の試合はほとんど毎回応援に行きました。
部員の生徒から試合があると聞くと、もう胸がワクワクして駆けつけました。
部員の一生懸命にプレーする姿にいつも感動しました。
元気がよく、熱意あふれるチームのみなさんに、若さを吸収することができて、「ありがとう」と心の糧にしています。
多くの試合を観戦したので、感想をまとめてみました。
〈試合観戦のメモより〉
☆数多くのチームからたくさんの良い点も弱点も勉強しました。
・守備のミスが少なくなり、動きが敏速になった。(好プレーが目立つ)
・ピッチャーのコントロールがよく、自信をもって投げているので安心。
・一人ひとりが自分のポジションを責任もって守っている。(バッティングもよくなった)
・勝とうという意欲が強くなり、ねばり強さが試合をするたびに強くなった。
・交代のときにスピードが出てきて気持ちがよい。(守備につくのが早い)
・円陣を組んで先生の話を聞く態度が真剣で集中してきた。
・応援が元気で迫力を感じる。(ベンチの部員の応援もすばらしい)
・勝利することはもちろん大切だが、野球に対するマナーがよくなった。
・練習の時の声がすごく大きく、以前とかなり変わってきた。試合のとき、始まる前に校歌なども大きな声で歌い、終わったときも校歌を歌っているし、よく走っている。あいさつもすばらしい。
・最近の活躍ぶりはすばらしい。父母の方も「野球部が強くなった」と喜んで話、上達ぶりを評価している。(チームワークがまとまってきた)
・ミーティングのときも、私語が無くしっかり反省しているようで気持ちがよい。
・仲間への思いやりもあり、よいプレーにはみんな快く褒めている。(大切です)
・K中と対戦したとき、相手の部員が一列に並び、「すいませんでした」とあいさつしたとき、何だか胸が熱くなりました。よい勉強をしたと思います。(勝利すること、それは願いですが、あのときのK中の部員のマナーには頭が下がり、大切なことだと忘れ得ぬ試合でした)
・すばらしい顧問、コーチの指導で、部員は幸せだと思います。(父母も同じことを言っています)来春はベスト4、いや優勝を目指して一層がんばってください。ずっと応援します。フレフレ野球部!!感動をありがとう!!誇れる上級生、学ぶ下級生!!
※K中は途中で対戦したチームでワンサイドゲームになったことから、選手が途中からやる気を失い、顧問の先生の雷が落ちたチームです。もともと格上の相手でした。
〇応援の力は大きい!
この手紙をいただき、私が初めに読ませていただいたのですが、感動で涙が出ました。
私はそれまで、「どうやって野球部を強くするか」をずっと考えてきましたが、その中心は技術的・組織的なことでした。
私の指導には「誰かのためにがんばる」「応援してくださる方への感謝」といった視点が抜けていました。
私はすぐに部活動通信にこの手紙を載せさせていただき、ミーティングで選手と一緒にまた読みました。
選手も感動した表情をしていたのを覚えています。
「応援してくださっている方々のためにも、落ち込んでいる暇はない。みなさんに感謝をして、これからまた春の大会に向けてがんばろう!」
と私は伝え、それ以来選手たちの中にも「応援してくれる人たちのためにもがんばる」といった視点が生まれました。
私もそれ以来、感謝の気持ちを込めて清掃活動を行ったり、地域の方を招いての招待野球試合を行ったりするようになりました。
その効果があったのか分かりませんが、翌年には初の都大会進出を決めることができました。
Mさんとは今でも連絡を取らせていただいていますが、本当に感謝しています。
私に大切なことを教えてくださった恩師だと思っています。
みなさんも「応援してくださる方への感謝」という視点を入れて指導にあたってみませんか?
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