全日本少年春季軟式野球大会を観戦!
やはり全国大会常連校は「組織作り」と「人間形成」ができている !
目指すべきはそこではないか!?
〇全日本少年春季軟式野球大会とは?
2017年3月27日、静岡の清水庵原球場に全日本少年春季軟式野球大会の準決勝を観戦しに行ってきました。
それほど遠くないので、毎年行こう行こうと思っているものの、実際に観戦できたのは今回で2回目。
前回は2013年でしたので4年ぶりになってしまいました。
この全日本少年春季軟式野球大会、野球が好きな方でもご存じでない方もいるのではないでしょうか?
実は2017年で8回目の開催となった、比較的歴史の浅い大会なのです。
どういう位置づけの大会かというと、文部科学省が主催する「中学生版の春のセンバツ」です。
軟式野球連盟のホームページでは以下のように紹介されています。
中学年齢層の大会で平成22年から静岡県にて開催されている。
高校野球の「春のセンバツ」同様、新人戦として球児の憧れの大会となるよう文部科学省の後援を受け新設された大会。
毎年静岡県で開催される、各地区の代表が日本一を争う大会です(文科省主催なのに3日で5試合なのは今回は突っ込まないでおきます)。
中体連の大会ではないので、クラブチーム・中学校野球部・地域の選抜チーム全てが出場することができます。
今年の大会では準決勝で高校野球ファンならにやりとしてしまうカード、星稜中対明徳義塾中の対決が実現し、明徳義塾中を破った星稜中が、決勝で秋田の選抜チームである秋田クラブを破り2度目の優勝を果たしました。
〇仙台育英学園秀光中等教育学校野球部を見に行った私!
正直、高校野球以下の試合を見る際に、私は個の力に注目することはあまりありません。
よほど抜けている選手がいたときに素直にすごいなと思うことはありますが、私が試合でよそのチームを見るポイントは「チームとしての魅力」です。
それは過去に何度も記事にしていますが、どのくらい「組織として成熟」しているか、そしてどのくらい「人間形成」に力を入れているか という部分からくるものになります。
また、プラスして、そういったチーム作りに取り組んでいる指導者の方に注目します。
ですから、よく大会等で同じ試合を見ていても他の指導者の方と全然見ているところが違うことも多いです。
「〇番の子のバッティングすごかったね。」
なんて言われても、よほどの選手じゃない限り注目していません(対戦する相手だったら別ですが)。
むしろ打った後にどこまで全力疾走しているか、長打を打たれた後のカバーリングはどうなっているか、などといった組織力や人間形成に関わるところばかりに目がいってしまいます。
ということで、今回私がどうしても見たかったのは「仙台育英学園秀光中等教育学校(以下秀光中)」です。
秀光中はよく中学野球太郎などで取り上げられていましたし、2014年の全中で優勝するなど、全国大会の常連ですから有名だと思います。
しかし、強いから注目したわけではありません。
これだけ毎年のように全国大会に出場し続ける(春夏どちらかに8年連続出場というのは全国最長だそうです)ということは「組織作り」と「人間形成」ができていなくては不可能です。
中学野球は高校野球と違って、私立であっても野球留学はなかなか難しいですし、声をかけることはできても野球推薦のような形でスカウトもできません(できる私立もあるのかもしれませんが…。少なくとも秀光中は一般入試に合格する必要があるそうです。)。
入学、入部してくれたメンバーで戦うしかないのです。
ということは、個の力では1回全国大会に出場できたとしても継続して力を発揮することは難しいです。
やはり、「組織作り」や「人間形成」に重点を置き、選手が自立してプレーできるように育てていく必要があるわけです。
今回、私はその点を見たくて静岡まで車を走らせました。
〇秀光中を見て学ばせていただいたこと!
試合は個の力で勝る秋田クラブが終始優位に試合を進め、4対0で勝利。
秀光中は相手投手を打ち崩せず(ヒットは1本だったでしょうか)、無念の敗北。
失礼な言い方になりますが、個の力ではちょっと負けていただけに致し方ない敗戦なのかなと私は感じました。
秋田クラブは選抜チームの難しいところ、毎日一緒に練習をするチームのような組織作りはできませんので「どのあたりで折り合いをつけ、個の力を発揮させるか」という選抜チームならではの悩みをうまく落としどころを見つけ、試合を勝ち抜く中でチームとして徐々にまとまっていったという印象を受けました(現にアップの一体感なんかは失礼ながら並のチーム以下でした)。
秋田クラブは秋田クラブですばらしいチームでしたが、私が目指すところは選抜チームのソレではないので、詳しく述べることは割愛します。
秀光中はそうした個の力に敗れてしまいましたが、秀光中の須江先生はフェイスブックの秀光中ページの監督談話で次のようなことを述べています。
大会総括(監督談話)
日本全国より沢山の応援や激励をいただきまして、本当にありがとうございました。
結果はご承知のとおり、日本一ならず。
2016年夏の全中に続き第3位なりました。選手は新チームスタートから、疾走感のある日々を積み重ねて良く頑張りました。敗因は監督の采配と選手起用でした。持っている力を出すことが出来れば、十分に可能な目標でしたが迎えた準決勝。相手をリスペクトし対策をして試合を迎えましたが、渡した流れを取り返すことなく選手のミスを誘発してしまいました。
夏の宮崎全中へむけて予選が6月から始まります。
丁寧に一つ一つ改善して、自信を持って大会を迎えられるように日々を過ごしていきたい思います。
皆様の熱い応援があってこその今大会となりました。変わらずご声援を頂けるようなチームでありたいと思います。
本当にありがとうございました。
この中で注目して欲しいのは選手の努力を称え「敗因は監督の采配と選手起用でした。」と自らの責任を明言しているところです。
敗戦時に選手に責任を負わせる指導者も多い中、このあたりの姿勢を我々は学ばなくてはいけないと思います。
過去記事でも似たようなことを述べさせていただきました。
ちなみに須江先生は「采配と選手起用」を敗因とおっしゃっていますが、これは3回までに投手交代を3度も行ったことを主に指しているのだと思います。
人によっては疑問をもつ投手起用だったのかもしれませんが、私は優勝までのイメージを明確に描いた采配と選手起用で、何ら落ち度は無いと見ていました。
優勝するためにはあれしか方法は無く、エースを先発完投させていたとしても決勝は戦えませんし(そもそも秋田クラブが強敵で勝てたか分かりませんが)、むしろ勇気ある選択だったと言えます。
準決勝で負けても決勝で負けても同じ。
日本一を目指しているという意図がはっきりと見える采配だったと思います。
また、その他にも須江先生には多くを学ばせてもらいました。
私はバックネット裏の良い席でベンチが見えるところで観戦していました。
指導者の言動も盗もうと思っていたからです。
しかし、試合前練習から試合終了まで須江先生の目立った動きを見ることはできませんでした。
近くで観戦していたにも関わらず「声」に関しては一度も聞くことができませんでした。
これがどういうことかお分かりいただけるでしょうか?
試合前になると細かいことが気になってあれこれと指図したり、場合によっては怒鳴り散らしたりする指導者を多く見てきました(私も過去そうでした)。
秀光中はそういう段階はとっくに終わっていて、選手たちが自分たちで成すべきことを考えて動くことができているのです。
ですから、選手がアップをしていても、選手がキャッチボールをしていても須江先生は遠くで見守っているだけです。
もちろんベンチ前やベンチ内でいろんな指示は出していたと思いますが私に聞こえないような声のボリュームでした。
試合中にポジションの確認や注意点などをベンチから大きな声で伝えているのも選手たちでした。
みなさんのチームは公式戦までにここまで自立したチームを作ることができているでしょうか?
細かいところも行き届いています。
とにかく全員が一生懸命に行っていたカバーリング。
これは「組織作り」と「人間形成」がうまくいっていないとできません。
全てのプレーに全員が動くということはそれほど大変なのです。
また、攻守交代時の全力疾走やアウトになるまでの全力疾走。
当たり前のことかもしれませんが、それらが指導者の強制という雰囲気ではなく、ごく自然にできているのです。
キャッチャーの面を拾って渡してあげるなんてことも、言われたからやっているという感じではありません。
そっちの方がお互いのためになるよねという雰囲気を感じました。
毎回ポジションまで全力で走るキャッチャーの子は、一番近くで見ていたのですっかりファンになってしまいました。
また、保護者の方々を中心にした応援団のすばらしさ。
これも、ただただ勝利を目指しているチームではこうはならないと思います。
保護者の方々、応援してくださる方々への感謝の気持ちがチームにあるからあれだけの応援を受けることができるのだと思います。
須江先生も先の文章の中で
皆様の熱い応援があってこその今大会となりました。変わらずご声援を頂けるようなチームでありたいと思います。
とおっしゃっています。
こうした姿勢が選手にも保護者の方にも伝わっているのだと思います。
今回の試合で感じたことではありませんが、秀光中の強さの秘密や、「組織作り」「人間形成」に関わるようなことはたまに記事になっていますので、リンクを貼っておきます。
今回はたった1試合しか見ていませんので、もちろん見えていない部分や私の勘違いという部分もあると思いますが、一意見として捉えていただければと思います。
〇我々でもできること!
正直、技術指導の面ではそれまでの積み重ねや、見るセンスも必要とされるので、限界はあると思います。
また、チームによって設備面で不利があったり、部員が足りなかったり、指導できる時間が十分になかったりすることは仕方のないことです。
ですが、それらを言い訳にするのではなく、ある環境、いるメンバー、限られた時間の中でできるだけの「組織作り」、そして「人間形成」はできるはずです。
「うちとはメンバーが違うから。」
「うちの選手とは意識が違うよ。」
そんな言い訳はやめませんか?
「組織作り」や「人間形成」は指導者によってアプローチの仕方は違うと思いますが、まずは一般的な社会で通用する人間を育てることを意識してみるのがいいと思います。
(追記)
その後、2019年7月に練習試合を行っていただきました。
↑詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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