宮川理論の基本的な考え方になっている「練習は練習」!
指導者も選手も、この言葉を正しく解釈して練習に臨めばもっともっと伸びます!
〇「練習は試合のように。試合は練習のように。」
私が高校生のときによく聞いた言葉です。
「練習は試合のように。試合は練習のように。」
この言葉って、スポーツに打ち込んできた人であればほとんどの人が聞いたことがあるのではないでしょうか?
この言葉は今でも正しいと私は思っています。
練習で公式戦本番のときのような緊張感をもって取り組み、逆に試合は練習でやってきたようにリラックスして臨む。
これはメンタル面で考えるとすばらしい考え方だと思います。
しかし、この言葉は「練習を全て試合のようにこなせ」という意味ではないと思うのです。
もちろん、試合と同じようにプレーをして試合に備える練習は必要です。
ですが、練習の全てをその調子でやっていたらさらなる上達が望めないことも多いと思いませんか?
たとえばバント練習。
いきなりバントが下手な子に速いボールを投げてバントをさせても上達するどころか、ボールが怖くなってさらに下手になることもありますよね。
バントが下手な子は型を教えてあげて、緩いボールから始めるのがいいと思います。
↑こちらの記事で詳しく書いています。
あるチームの練習を見ていたときに、バント練習の投げ手の選手がバッターが下手なのを知っていたのか、わざと緩いボールを投げていました。
それに気づいた指導者が
「そんな緩い球が試合で来るのか!?試合を想定して、もっと速いボールを投げろ!!」
と怒鳴ってしまったのです。
もちろん上手な子が緩いボールで適当にやっていたら叱るかもしれませんが、これはちょっと無理のある「練習は試合のように」だと思いませんか?
素振りもマスコットバットで常に全力で数多く振る。
守備も実戦形式で常にシートノックやゲームノック。
走塁練習も常に全力疾走で何回も繰り返す。
こういった基礎を無視した「練習は試合のように」は小学生や中学生では選手がつぶれてしまう可能性すらあると思います。
〇宮川理論の考え方、「練習は練習」!
そこでおすすめの考え方が「練習は練習」です。
この言葉は宮川理論が提唱している練習への取り組み方を表現した言葉です。
宮川理論についてはたびたび紹介しています。
ご存知ない方はこちらの記事をご覧ください。
宮川理論は基本的には長打を打てるレベルスイングを習得するためのバッティング理論です。
長打を打つ練習と言えば、従来の考え方だとマスコットバットでの何百回ものスイング、ロングティーと全力スイング、フリーバッティングの繰り返しといった練習が挙げられます。
これらはまさに「練習は試合のように」といった形で、常に全力を求める練習ですよね。
しかし、全力スイング、マスコットバットで数百回などとスイングなどといった練習は、正しいフォームの定着や軌道の習得といった基礎的なことには向きません。
しかも野球腰の恐れもあります。
↑こちらの記事に詳しく書いてあります。
宮川理論の素振りを見てみましょう。
これを見てどう思いますか?
このスイング練習は正しい軌道と大きなフォロースルーを習得するために練習をしているところですが、手を抜いて練習しているように見えるかもしれません(個人的にはもっと力を抜いていいと思います)。
指導者によっては、
「もっと全力で振れ!試合でそうやって振るのか!!」
なんて声が出るかもしれませんね。
もちろんこの選手が試合でこのまま打つわけないです。
ですが、このくらい力みなく楽に振ることで動きの確認はしやすいですし、全力で振っていない分、数多く練習することができます(実際、宮川理論のスイング練習は200回くらいやってもそんなに疲れません)。
こうやって基礎が出来上がっていくわけです。
「練習は練習」なのです。
〇「練習は練習」の考え方はバッティング以外にも応用できる!
宮川理論はバッティング理論ですが、この「練習は練習」の考え方は守備や走塁にも活かすことができると思います。
たとえば、私は守備練習はほとんどボールを手で転がすゴロ捕球を行います。
このときも、いきなり全力ではやらせないです。
まずは型作り。
ゆっくりと捕ってからのステップをやるところから始めます。
わざと軸足を大きく上げて意識させます。
数多くやりたいのでスローイングを本来の距離ではやりません。
たとえばサードの守備練習のときはマウンドあたりにネットを置いてやります。
このどれも試合とは全く異なる状況、動きですよね。
「捕ってから早く!強いボールを投げろ!!」
と「練習は試合のように」やっていたら基礎ができていない子はなかなか上達しませんし、数多くこなせません。
そのやり方で数多くやっていたら投げ過ぎになります。
↑こちらも参考にしてみてください。
走塁練習も、ベースランニングで1塁への駆け抜け、オーバーランの練習などで全力で走らなかったらそれはさすがに意味がありません。
しかし、盗塁のスタートの練習をしたいのであれば、全て2塁まで全力疾走でやらせていたら数をこなせません。
スタートだけ全力で切って、5歩くらい走って1塁にまた戻らせればそれほど疲れません。
スタート練習に特化して、数多く反復練習できますよね。
試合で2塁まで走らないことはありません。
「練習は練習」なのです。
そして最後の数本だけ2塁まで全力でやらせれば全く問題がないですよね。
↑こういうやり方もあります。
このように「練習は練習」と割り切ることで二つのメリットがあります。
1、敢えて我武者羅にやらないことでゆっくりと丁寧に基礎的な動きの確認ができる。
2、全力でやらないことで数多く練習ができる。ケガ予防にもなる。
この二つのメリットはかなり大きいですよ。
当然、「練習は試合のように」やった方が良い場面もたくさんあります。
しかし、例で示したように、「練習は練習」で行うことにもメリットは多いのです。
指導者の方々は練習に応じて、「練習は練習」なのか「練習は試合のように」なのかしっかりと示して、練習の効果を高めてみてはいかがでしょうか?
もちろん、「練習は練習」は適当に、雑にやることではないので勘違いしないように、させないようにしましょう。
※追記
自作の野球部通信に「練習は練習」についてまとめた記事がありますので、掲載しておきます。
以下野球部通信から抜粋です。
「これから新チームでの練習を進めていくにあたって、「練習は練習」という考えを覚えておいてください。練習は真剣にやらなければあまり意味のないものになってしまいます。これはみなさんも感じていることでしょう。しかし、真剣にやることと、全て試合と同じようにやることは似ているようで全く異なることです。私の練習は守備練習でも走塁練習でも基礎を分割してとにかく反復できるようにしてあります。たとえば守備練習では2歩・4歩などのステップだけ、走塁練習ではリードだけ、スタートだけの練習を反復していますよね。またはバント処理のような練習も短い距離にして反復しやすくしていますよね。このように、実際のプレーを分割、縮小して練習を繰り返すことで技術を身につけることを「分集法」と言います。これに対してシートノックなどの試合と同じようにプレーを行う練習法を「全集法」と言います。ある程度のレベルに達したら全集法も有効ではありますが、近年のスポーツ指導では分集法が非常に有効という研究結果が多数報告されています。現在では陸上競技や卓球、テニスなどで練習の中心が分集法にシフトしていますが、野球界ではシートノック、フリーバッティングなど全集法の練習が依然として中心となっていて、これでは上手な人しか上達しないことや、練習時間が長くなってしまうことが問題視されています。
もしも普段やっている走塁練習を試合と同じように2塁までの全力疾走を義務づけたら、同じ時間で現在の3分の1程度しかこなせないと思います。もしも守備の基礎練習を全て全力で1塁に投げさせていたら肩肘を壊してしまう選手が出てくると思います。もちろん試合では全力疾走しますし、全力でスローイングをしますが、それを毎回練習で行うことはケガ予防の観点からも、練習効率の観点からも得策とは言えません。もちろん真剣に行うのですが、常に出力100%で行うわけではない。それが上達への近道だということを覚えておいてください。この考え方を「練習は練習」と言います。私は「練習は練習」の考え方を徹底することで、みなさんが効率良く、短い練習時間でもケガなく上達することを目指しています。「先生はなんでシートノックをしないんだろう?」「なんで全力で投げさせないんだろう?」と感じた人もいたと思うのですが、しっかりとした意図があるのだということを理解して練習に臨んでくれると嬉しいです。これは私なりの「野球界の限界へのチャレンジ」です。」
おすすめしない練習特集はこちらです。
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