ポゼッションという言葉を知っていますか?
仙台育英秀光中が意識している守備の時間を短くすることで試合を支配することです!
テンポの良いピッチングで試合を支配しましょう!
〇ポゼッションとは?
みなさん、ポゼッションという言葉を聞いたことはありますか?
サッカーでは多く用いられる用語ですが、野球では馴染みの無い言葉だと思います。
このポゼッションという言葉は、全国大会の常連、仙台育英秀光中の須江先生が提唱している言葉です。
こちらの記事の中で須江先生が簡単にポゼッションについて説明なさっています。
須江監督 野球はサッカーや、バスケットなどの球技と比較して、ボールを持っている方が守備という特殊なスポーツ。よって主導権は守備側にあります。ゲームを支配するということは、攻撃の時間をいかに長くして、守備の時間をいかに短くするか。僕たちはポゼッションと呼んでいます。
須江先生の言葉を簡単にまとめると、
「攻撃の時間を長くして、守備の時間短くすることによって主導権を握ること。」
ということになります。
また、別の記事では当時の主将の宮本くんがポゼッションの効果について以下のように述べています。
※ちなみにですが、宮本くんは私が2017年に見た選手の中で一番能力の高い選手でした。仙台育英高校でも活躍してくれることと思います。要チェックです。
守備の時間を短くするには、まず制球力がなければ始まらない。宮本が「1イニングを約10球で終わらせるように考えている」と言うように、4人ともストライク先行で投球を組み立てられる制球力を持っている。3者凡退に抑えると、1イニングを約2分で終わらせることができ、目まぐるしい攻守交代に持ち込んで試合の主導権を握ることができる。宮本は「逆にやられると嫌ですね」と「ポゼッション」の効果を力説する。
攻撃の時間を長くすると先に述べましたが、当たり前ですが、これは別に遅延行為をするということではありません。
攻撃の時間を長くするには、ボール球をしっかりと見極められるようにするだとか、走塁を磨き、無駄なアウトを無くすだとか、様々な工夫が考えられると思いますが、結局のところランナーを出すことが出来なければなかなか攻撃の時間は伸びません。
相手投手の力に左右される部分が大きいということです。
それに対して、守備の時間は宮本くんが言っているように、努力次第である程度コントロールすることができます。
宮本くんは記事中で「1イニング2分で終わらせることができる」と述べています。
これは脅威的なスピードです。
実際にそんなことが可能なのでしょうか?
丁度良い実際の試合の映像をなかなか探すことができなかったのですが、こちらの動画をご覧ください。
こちらの動画を見ると、いかに秀光中が守備の時間を短くしようと努力しているかが分かります。
この動画では秀光中はホームランを含む2本のヒットを打たれています。
しかし、ホームランを打たれたにも関わらず、この回の守備の時間は5分を切っています。
これは脅威的なスピードです。
確かに三者凡退であれば2分で終わるような気がしますよね。
実際、私が観戦した試合では全国大会の最終日ということで、自慢の投手陣の制球力が今一つで、2分で三者凡退というシーンはありませんでしたが、とにかくポゼッションを意識していることは伝わってきました。
↑そのときの記事はこちらです。
〇具体的にはどのような工夫をしているのか?
ではポゼッション、特に守備の時間を短くするためにどのような工夫をしているのでしょうか?
もちろん須江先生に徹底取材しなければその全ては分かりませんが、試合を観戦する中でもいくつかの工夫が見えてきます。
見やすいようにもう一度動画をアップするので、そちらを見ながら記事を読み進めてください。
1、サイン交換の時間がとにかく短い!
…動画を見ていただければ分かるのですが、ピッチャーがプレートに立ったときにはもうサイン交換をしています。
ランナーがいるときも同じです。
2、ノーワインドアップでサイン交換が終わったらすぐにモーションに入る!
…もちろんランナーがいないときですが、ノーワインドアップで投球していますよね。
ランナーがいなくてもセットポジションで投げる投手が増えていますが、セットポジションの場合、静止する必要があります(プロ野球は除く)。
静止しなくてはいけない分、どうしてもバッターが待つ時間やルーティンを行う時間ができてしまうのでピッチャーのリズムに持っていくことが難しくなります。
また、ワインドアップだと振りかぶる時間がありますが、ノーワインドアップだとその時間も省略できる点も優れています。
動画の投手はサインを見てからモーションに入っていますが、私はモーションに入りながらサインを見て、モーションの中で握り替えるようにしています。
こうするとさらにテンポを上げることができます。
気をつけなくてはいけないのは、バッターが構える前に投げることは危険なので、バッターがきちんとピッチャーに正対していることだけは確認してください。
ただし、モーションに入ってからバッターが打席を外す、タイムをかけることはできません。
ノーワインドアップは自由な足を引いた瞬間からモーションが始まったと見なされます。
モーションに入る時間がセットポジションよりもかからないのもノーワインドアップの特徴です。
3、キャッチャーの返球を早くする!
…キャッチャーの返球も非常に早いですよね。
ランナーがいないときは座ったまま返球して良いと思います。
ボールが続いたらキャッチャーが一声かけてから1テンポ置いて返球しても良いと思いますが、基本的には動画のようにポンポン返球しましょう。
また、このときピッチャーのベルトより上の捕球しやすいところに返さないとリズムが崩れます。
ブルペンから返球を意識することが大切です。
4、プレートでボールを受け取る!
…球審をやっていると、いちいちマウンドから降りて返球をもらうピッチャーがすごく気になります。
これをやってしまうとテンポが相当悪くなってしまうんですよね。
キャッチャーからの返球もそうですが、野手や球審からの送球も全てプレート付近でボールを受け取るようにしましょう。
そして受け取ったらサインをすぐに見ます。
5、ランナーが出てもテンポを落とさない!
…ランナーが出るとどうしてもテンポが落ちてしまうことが多いです。
しかし、秀光中は牽制のテンポもものすごく早いですし、静止したらどんどん投げてきます。
これもサインの交換に時間をかけないからできることです。
セットポジションに入るまでの時間を短くすることで離塁の時間も短くなりますし、そうなるとスタートを切りづらくなります。
また、秀光中の選手はそれに加えてクイックもみんな上手です。
スタートを切られなければどんどんバッター投げることができるという好循環になります。
以上、ポゼッション、守備の時間を短くするためにできることを5点挙げました。
これらに取り組むことは簡単ですが、継続することはなかなかに難しいですよ。
これを継続した上で制球を安定させなくてはいけないからです。
日々の練習からかなり意識して取り組んでいかないとできることではありません。
↑コントロールをアップさせる取り組みについてはこちらをご覧ください。
ただし、このテンポで投げられるようになってくると、相手が考える時間が無くなり、ボール球を振ってくれることも増えてきます。
守備もかなり守りやすくなりますし、何より相手は相当嫌ですから、ぜひ取り組んでみてください。
ちなみに秀光中と練習試合をしたときの記事はこちらです。
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