ゴロゴー、ギャンブルスタートは取り入れていますか?
また、軟式野球で流行した3塁ランナーの特殊なリード「マイナススタート」を知っていますか?
ゴロゴー、ギャンブルスタートはかなりの高確率で成功させるためのハイレベルなリードになります!
〇軟式野球のランナー3塁といえばエンドラン!
軟式野球独特の作戦といえばランナー3塁でのエンドランが挙げられると思います。
軟式野球ではなぜランナー3塁でエンドランが好まれるかというと、
①硬式野球よりもバントを決めるのが難しい。
②軟式野球の方が打球が高いバウンドになるのでセーフになりやすい。
③エンドランだとファールでもアウトにならない。
といった理由が中心になります。
高校軟式以上では2018年度から、中学軟式以下では2018年秋大会から新軟式球に切り替わりますが、やはり硬式球よりは弾むので、おそらくそれほど傾向は変わらないのではと考えています。
こんな感じですね。
私はランナー3塁の場合「キャッチャーがウエストしないのを確認してからスタートを切るエンドラン」を採用しています。
通常のエンドランよりも若干スタートは遅れるのですが、それでも足がよほど遅くない限りほぼほぼセーフになります。
※ランナーが足がかなり遅い選手の場合は通常のエンドランにするか打たせます。
しかし、チームによってはエンドランでもスクイズでもなくゴロゴー、ギャンブルスタートを行ってくるチームもあります。
〇ゴロゴー、ギャンブルスタートとは?
ランナー3塁からの「ギャンブルスタート」と呼ばれる作戦は野村克也監督が考案したと言われています。
私は当時のことをほとんど覚えていないのですが、野村監督がヤクルトの監督時代に取り組ませたことが始まりのようです。
1992年の日本シリーズ。野村と森祇晶の両監督が知略を尽くした戦いは、第7戦までもつれ込んだ。1-1の7回、ヤクルトは1死満塁の絶好機をつくった。代打・杉浦の打球は二塁右へ。捕った辻が懸命のバックホームをしたが、高く浮いた。本来なら封殺プレーだが、伊東はジャンプして捕った。巧みなボディーコントロールで、走路にミットを落とした。間一髪タッチアウト。三塁走者の広沢のスタートが明らかに遅れたのは、ライナーを恐れたからだ。シリーズの勝敗を分けたこのプレーが、野村監督にギャンブルスタートを考案させた。そして翌93年のリターンマッチ。再び第7戦にもつれ込み、3-2の8回、1死三塁。「ゴロストップ」のベンチ指示を無視し、走者の古田はギャンブルスタートを切った。遊ゴロで決定的な4点目を奪い、リベンジに成功した。
と上の記事にもあります。
ここからその後、ギャンブルスタートはプロ野球だけではなく、高校野球や軟式野球にも広まっていきました。
作戦としてはシンプルです。
通常であればランナー3塁はライナーバックですから、転がったのを確認してからのスタートになります。
しかし、ギャンブルスタートではバッターがインパクトした瞬間にスタートを切ります。
本当に若干の差ですが、この一歩の差でホームインできる可能性が高まるわけです。
エンドランと違って外されたり、バッターが振らなかったりしても、スタートを切らないだけなのでアウトになることはありません。
こちらがギャンブルスタートですが、野村監督が考案した時点ではゴロゴーとほぼ同じニュアンスだったようです。
ですが、現在ではゴロゴーとギャンブルスタートを明確に分けて使用されている気がします。
ゴロゴーはゴロだと確認できた瞬間にスタート。
ギャンブルスタートはスイングが当たる瞬間にスタート。
なので、ギャンブルスタートの方がスタートが早くなりますが、リスクが大きくなりますね。
また、この作戦からの派生でバッターがスイングし始めたらスタートを切るギャンブルスタートとエンドランの中間の作戦もあります。
この場合、さらにセーフになる可能性は高まりますが、空振りだとランダウンになってしまうリスクが出て来ます。
このギャンブルスタートの威力が一躍脚光を浴びたのは2017年シーズンで引退してしまった片岡選手が2008年の日本シリーズで見せた走塁ではないかと思います。
※4分20秒くらいからご覧ください。
この試合はTVで見ていたのですが、最初ちょっと意味が分からなかったですね笑。
普通のサードゴロですからね。
まあ片岡選手だからセーフになるのであって、ギャンブルスタートをしてもさすがにあの打球は並の選手ではアウトになりますが、ギャンブルスタートの威力を伝えるインパクトはありましたよね。
そしてさらに、このギャンブルスタートは軟式野球界で独自の進化を遂げ「マイナススタート」という特殊なリードも登場しました!
〇「マイナススタート」とは!?
「マイナススタート」もしくは「マイナスリード」などと呼ばれるリードをご存知でしょうか?
ほとんどの方がご存知無いと思います。
このマイナススタートとは、3塁ランナーが3塁後方にリードを取ります!
「ちょっと何言ってんのか分かんない」というサンドイッチマンのようになってしまうと思います。
私も初めて都大会でマイナススタートを見たときは「ファッ!?」となりました。
図で示すとこのようになります。
赤で示したように3塁後方にリードを取り、ピッチャーのモーションに合わせてホームの方向に加速していきます。
そして、インパクトを迎える瞬間に全力で走っている状態にするのがこのマイナススタートの特徴です。
なぜ3塁後方にリードを取るのかというと、通常のリードの状態からホームに向かって加速し、インパクトの瞬間に全力で走っていたら、空振りしたらアウトです。
普通のエンドランと変わらないですよね。
ですが、後方からのスタートにすることで、空振りしたら急ブレーキをし、戻ればセーフになります。
空振りしたときに戻れる位置になるようにマイナス位置を選手によって変える必要があるということです。
ギャンブルスタートだとどうしてもインパクトした瞬間からの加速になってしまうので、ゴロによってはアウトになってしまいます。
エンドランだと外されたり空振りしたりするとアウトになってしまいます。
このマイナススタートは両者のいいとこ取りをした作戦になります。
残念ながらマイナススタートの動画を探すことができませんでしたが、インパクトの瞬間に全力を迎えるということになります。
ちなみに、投げた瞬間にコースは分かりづらいですが、高低は分かりますよね。
マイナススタートではエンドランとは違うので高低に大きく外れた瞬間に加速をやめます。
守っている側としては、ここがまたやっかいなところで、ウエストは意味なし、ボール球はやってこないし、ストライクを転がされたらピッチャーゴロでもセーフということで相当やりづらいです。
このマイナススタートを考案した人が誰なのかは分からないのですが、すごい作戦を考案したものだと思います。
現在でもこの特殊なリード「マイナススタート」を採用しているチームはあります。
〇マイナススタートの弱点!
しかし、私はこのマイナススタートを採用していません。
マイナススタートには弱点もあるからです。
先の説明をお聞きになってなんとなくご理解いただいたかもしれませんが、マイナススタートはかなり難しいです。
走塁が上手な選手がこのマイナススタートをマスターしたら相当な脅威になります。
しかし、並の選手だと空振りした際に戻れなかったり、加速のタイミングが合わずにホームでアウトになってしまったりすることがあります。
100%成功する作戦というものはありませんから、失敗する可能性があること自体は仕方ないです。
私がマイナススタートの弱点だと考えていることは
「指導者が介入できる点が一つも無い」
という点です。
エンドランやスクイズであれば指導者が相手が外すかどうか、このバッターなら決められるのかどうか考えてサインを出すことができます。
しかし、マイナススタートの場合、指導者が介入できるところがありません。
100%ランナーとバッターに任せざるを得ないのです。
それがどうしたと思うかもしれませんが、それだと指導者が責任を取ることができません。
失敗したら100%その選手の責任になってしまうのです。
これはチームを作っていく上でなかなかに障壁になってきます。
「失敗したら俺のせいだからな」
とはならないのです。
「あいつが決めてれば勝っていたのに」
となりやすいとも言えます。
そうなるとあまり上手ではない選手は失敗を恐れてプレーをすることになります。
些細なことかもしれませんが、私は自分が責任を取れない作戦は嫌いなのでやりません。
こちらの記事に詳しく書いてあります。
まあ、私はやりませんが、軟式野球においては有効な作戦であることは間違いないので、興味がある人はまず練習で取り組んでみてはいかがでしょうか?
ランナー3塁のリードについてはこちらをご覧ください。
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