バントよりも打った方が選手のため!?
みなさんのチームではどのくらいバントを重要視していますか?
私は以前はチームが勝つために必要な作戦として多用していたものの、指導者として学ぶ中でバントはあまり必要が無いような気がしてきました。
バントをしないチームを作りたい!
〇小技を極めて勝ち取った都大会!
もうだいぶ前の話になりますが、前任校で野球部主顧問3年目にして初の都大会出場を決めました。
当時はまだ自分自身20代、前任校は30年ほど都大会に出場できていなかったということもあり、私自身も、選手たちも手探りの中で掴んだ都大会でした。
↑そのときに行った組織改革、チーム作りについてはこちらにまとめています。
今思えば、まだまだ足りないこと、未熟なこともありましたが、主顧問として貪欲に学んでいった結果が都大会だったと思います。
↑当時は今のように体調を崩しやすくはなかったので、とにかくいろんな方から学んでいましたね。もちろん、今も体力が許す範囲内で学んでいるつもりですが。
このときに特に力を入れたのは「組織作り」と「人間形成」。
毎週昼食後に道徳講話をしたり、テーマを決めて集団討論をしたり、社会で通用する人間作りにも力を入れていました。
その点に関して、基本線は今も変わらないつもりです。
↑詳しくはこちら。
しかし、戦術に関しての考え方は今とかなり異なるかもしれません。
当時はかなり小技を多用するチームを作ってしまっていました。
↑こちらの記事で紹介している戦術が私が用いていた戦術のほとんどなのですが、サインは20種類以上ありました。
打って点を取るというよりは小技と足で点を取り、最少失点で守り抜くというスタイルで勝ち上がっていっていました。
実際に都大会に出場したときのスコアは
2回戦 5対0
準々決勝 1対0
準決勝 1対0
決勝 2対1
と4戦で得点差が開いたのは初戦のみで、他はロースコアゲームでした。
良く言えば守備が固い。
悪く言えば打てない。
もちろんバッティング指導にも力は入れていたつもりなのですが、今から比べると全然指導できていないに等しく、打てる選手を育てることができていなかったのでしょうね。
その結果が4番にもバントのサインを出すことがあるというチームを作ってしまっていたのではないかと思います。
あれだけまとまりのあるチームを作ることは難しいですし、今当時のチームを見ても「いいチームだな」とは思うと思いますが、「強いチームだ」と思うかどうかは微妙です。
やはり、野球においてバッティングというのはすごく大切なものだと思うのです。
〇近年重視される長打力!
こちらの記事にも書きましたが、近年軟式野球であっても長打力が重視されるようになってきています。
これはボールの変化、バットの進化など道具の影響もあるとは思いますが、それ以上にバッティング技術の向上、意識の変化が理由として挙げられると思います。
MLBではフライボール革命が流行し、ゴロよりもフライが求められ、MLB全体のシーズン最多本塁打記録も塗り替えられました。
NPBでもそこまでではありませんが、柳田選手を筆頭に、あきらかにこれまでのスイングとは異なり、ホームランを狙うスイングの選手が増え、人気を博しています。
高校野球でもホームランを打てる選手が求められています。
プロ入りを目指しているレベルの選手は当然小さくまとまるのではなく、ホームランを打てるバッターを目指します。
そのためにはホームランを打てる指導を受けられるチームを選ぶようになってきていて、大阪桐蔭を始め、打力のあるチームがさらに強くなるという流れができています。
そういったチームに対抗するために、公立高校でも打力の向上をテーマに挙げるチームが増えてきています。
↑県立相模原の佐相先生。
↑府立大冠高校の東山先生。
そうなると高校の指導者が中学生に求めるのもやはり打てるバッターです。
こうして、大きな流れの一環として中学軟式でも長打力が求められるようになってきているのではないでしょうか?
現に甲子園では点の取り合いが当たり前になってきていますし、中学軟式でさえ以前に比べてロースコアの試合は減ってきています。
2018年の新チームからはM号球に変わり、その傾向はさらに顕著になってきています。
そうなってくると、高校野球よりも上のカテゴリーで活躍できる選手を育てるためには、バッティング指導に力を入れる必要があるのではないかと言えるのではないでしょうか?
というか、ある程度バッティング指導ができるようになった今だからこそ言えますが、そもそもやっぱり野球は
打てた方が絶対に楽しいです。
高校でどうこうとか、プロがどうこうとかもあるっちゃあるかもしれないんですけど、草野球だろうがなんだろうが、本音はやっぱりホームラン打てた方が楽しいし、それが野球の魅力だと思うんですよね。
〇バントの意義とは!?
ここまで存在しているのですから当たり前ですが、戦術的にはバントは絶対に無しとは言い切れません。
こちらの記事で考察していますが、バッターのOPSによってはバントした方が得点期待値が大きくなります。
要するに打てないバッターの場合はバントした方がいいケースが多いです。
守備力があまり高くないチーム相手だとランナー2塁のバントはかなり脅威です。
守備のミスも出やすく、オールセーフになる可能性もかなり高いのではないでしょうか?
現に以前はこういうケースでバントさせてきましたし、そこでバントを決めることで喜ぶ選手もたくさん見てきました。
選手が、何度も練習してきたバントで勝利に貢献できたと喜ぶんです。
しかし、その選手が同じケースで長打を打ってランナーを返すことができていたら、もっともっと喜んだのではないでしょうか?
当然、選手によって打力は違います。
ですが、当時の私は全員が長打を打てるように指導できていませんでしたし、公式戦のそういった場面でそもそも長打を期待しないで来てしまいました。
それってつまらない野球だなと今は思います。
その選手が野球人生においてチャンスで打席に入ることができるのは何回くらいあるのでしょうか?
中学生で野球を始めて、中学3年間で野球を辞めてしまうなんて子も最近はたくさんいます。
仮に毎回レギュラーではないとすると、そういった子はもしかしたら練習試合も含めて10回くらいしかチャンスで回ってこないなんてこともあるかもしれませんね。
そのうち1回でも長打でランナーを返すことができたら、きっと人生の宝物になると思います。
それが公式戦だったら、一生自慢できることかもしれませんね。
そんな数少ないチャンスに「バントのサイン」というのは教育上ものすごくもったいないことのような気がするのです。
戦術的にもバントとヒッティングで何倍も得点期待値が違うということはありません。
指導者がバッティング指導を学び、力を入れていけば極端に打てない選手も減っていきます。
さらにバントを廃止し、ヒッティングの打席を増やす。
バントの練習時間も作らなくていいのでその時間もバッティング練習に回すことができます(一日10分バント練習をしたとしても、週5回なら50分もやっています)。
そうすれば、もっともっとヒットを打てる可能性が増えていくわけです。
するとさらに野球が楽しくなる。
選手は練習にもより熱心になっていく。
ということは結果的により強いチームを作ることができる。
さらに相手に与える影響も違うと思うのです。
バント攻撃をされて敗れるのと、長打を打たれて敗れるのでは感じ方が全く違います。
正直、レベルが低いチームはひたすらサード前にバントされたら耐えられません。
ピッチャーとしてもミスが増えるのでどうしてもイライラしてしまい、場合によってはチームメイトを責める気持ちが出てきてしまうかもしれません。
もちろん、ミスをしてしまう野手も一生懸命やっているので、お互いに辛いです。
野球がつまらないものに感じてしまうかもしれません。
ですが、打たれて負けたなら気持ちもずいぶんと違います。
ピッチャーは悔しい気持ちにはなるでしょう。
しかし、バント攻撃で成すすべなくというのと違い、次につながる良い意味での悔しさになると思うのです。
そして、「あのチームのように打てるチームになりたい!」と思わせることができたら、それは野球界に良い影響を与えてることになるのではないでしょうか?
個人的にはいいことづくしな気がします。
〇「バントしないチーム」にもちろん課題はある!
もちろん課題はあります。
それは「打てるチームを作らないといけない」というシンプルな課題です。
今でこそ、そこそこバッティング指導に自信はありますが、上には上がいるのも事実。
バントを捨てるということは、その分選手を打てるように育てることができなければ本末転倒です。
これはシンプルですが、指導者にとってかなりハードルの高い課題となるでしょう。
それでもやはり打てたら楽しいのが野球。
ぜひともバッティング指導に力を入れて、打てるチームを作ってみませんか?
(追記)
その結果、なかなか勝てていません…
ただ、野球を好きな選手はより増えた気がします。
バッティング指導のヒントになりそうな記事を集めましたので、参考になれば幸いです。