「突然思ったように投げられなくなった」
「怖くてインコースを突けなくなった」
こんな症状を見たことはありませんか?
イップスという動作障害の可能性があります!
指導者の方はイップスへの理解を!!
〇イップスとは何か?
まずはこちらの動画をご覧ください。
拾いものの動画ですが、かなり深刻なイップスであることが分かります。
「いやいや、普通に投げろよ!」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、彼はいたって真面目です。
これは「イップス」という動作の障害です。
↑イップスについては書籍もたくさん出ていますのでご覧になってみてください。
イップスとは一体何なのでしょうか?
こちらの「イップス研究所」さんがイップスを理解する上で非常に参考になります。
イップス研究所さんの記事からイップスについて引用させていただきます。
イップスは誰もがかかってしまう可能性のある精神的な症状です。
ゴルフ、野球だけでなく様々なスポーツ(メンタルが重要なもの)で、思い通りのプレーがどうしてもできず、症状として表れてしまうことです。
ゴルフでは昔からよく使われ、イップスにかかるプレーヤーが多いのはそれだけゴルフという競技がメンタルのスポーツだと言うことの表れではないかと考えられます。
最近では、ゴルフだけでなく、あらゆるスポーツにおいて、イップスという言葉が使われるようになってきました。
外部からのプレッシャーや自分の心の中で生じるプレッシャーによって普段は何も考えずにできていることが急にできなくなってしまうのがイップスと言われて いるものです。
イップス(イップス症状)は心の葛藤(意識、無意識)により、筋肉や神経細胞、脳細胞にまで影響を及ぼす心理的症状です。
スポーツ(ゴルフ、野球、卓球、テニス、サッカー、ダーツ等)の集中すべき場面で、プレッシャーにより極度に緊張を生じ、無意識に筋肉の硬化を起こし、思い通りのパフォーマンスを発揮できない症状をいいます。
また、普段と同じプレーが出来ず、ミスを誘発することもあります。
上記に書かれているように、イップスとは心理面がプレーに影響を与える心理的症状だと言われています。
もともとはゴルフで用いられていた用語ですが、今ではさまざまなスポーツで同様の症状が現れることが分かっています。
ゴルフの場合はパットでのイップスが有名です。
細かなコントロールが求められる競技ほどなりやすい傾向があります。
野球もその中の一つ、というかイップスになりやすい代表的なスポーツです。
同じくイップス研究所では、野球でのイップスについて以下のように記されています。
投手、捕手等、遠くへボールを投げること、思いっきり投げることは出来るが、近くを投げることが出来ない。又は、コントロールが定まらない。 投手においては、死球を与え、けがをさせたことにより、内角の厳しいコースを投げれなくなってしまった等、症状も個人個人違います。
最初に挙げた動画の方はかなり重度のイップスですが、もっと軽度の人もかなりいます。
どちらかというと近い距離で投げる際に症状が出やすいのが特徴です。
投手の他、捕手もイップスになりやすいポジションです。
私の大学時代の捕手の後輩は、首位打者を獲得するほどバッティングが良かったのですが、イップスのため途中からは代打での出場に限られるようになってしまいました。
プロ野球の有名な選手では、MLBでも活躍した田口壮氏が有名です。
田口氏はイップスのため外野手に転向後に開花し、MLBで活躍するほどとなりましたが、イップスのために引退を余儀なくされた選手も数多くいます。
イチロー選手もイップスを経験したことがあるとインタビューで述べたそうですが、詳しくは分かりません。
ただ、珍しいことでないのは確かです。
また、近年だと阪神タイガースの藤浪投手がイップスではないかと疑われています。
藤浪投手の場合はもともとコントロールは良い投手ではありませんが、2017年からその傾向がかなり顕著になっています。
このデッドボールは普通では無い抜け方をしており、確かにイップスを疑われてもおかしくありません(技術的な課題ももちろんあると思います)。
〇イップスになる原因は何か?
イップスになる原因は人によって様々ですが、先に引用したように、メンタルによるものが多いと考えられています。
イップス症状にも個人差があり、心の葛藤からフォームを崩してしまうケースや恐怖感や不安感から筋肉の硬化を起こし、思い通りのプレーが出来ない等様々で、心の感じ方でこのようなイップス症状になりがちです。人は皆、60兆個の細胞から成り立っており、強い思いや普段の生活から染み付いたプライド等が細胞に伝わり、心と身体、心と思考の葛藤が積み重なりこのようなイップス症状になってしまいます。
イップス研究所では「心の葛藤」と表現されています。
ただ、技術的な問題が発端となるという意見も少数ながらあるようです。
実は私もひどいイップスに悩まされたことがあります。
私は小学生から野球をずっと続けています。
その中でさまざまなケガを経験してきましたが、ケガと同じくらい辛かったのがイップスです。
私は複数回イップスを経験していますが、一番ひどかったのが中学生のときに初めて経験したイップスです。
当時は「イップス」という言葉は野球界では広まっておらず、指導者やチームメイトの理解も得られず、かなり辛い思いをしました。
きっかけは送球ミスをする度に先輩に怒られていたことだったと記憶しています。
あまり強いチームではありませんでしたが、上下関係の厳しい部で、ミスをするたびに叱責されていたので、中学時代は野球があまり好きではありませんでした。
次第に怒られるのが怖くなり、腕が振れなくなっていき、途中からは投げ方が分からない状態になりました。
先輩相手ではなくともキャッチボールも満足にできなくなりました。
イップスになったことがない人からすると本当に意味が分からないと思うのですが、投げた瞬間にワンバウンドさせてしまったり、ボールがすっぽ抜けて(通常のすっぽ抜けるレベルの比ではありません)、ほとんど真横に近い方向に投げてしまったりしていました。
他のイップス経験者と同じく、特に近い距離だとその傾向が顕著でしたね。
私の場合は完全にメンタルからくるイップスだと思われます。
実は私の例のようなケースはかなり多く、指導者や先輩からのプレッシャーがきっかけにイップスになってしまう選手はかなり多いです。
また、あまりに細かな部分、たとえばリリースの細部などまで指導してしまうと、考えすぎてなってしまうこともあります。
そのあたりのことはこちらの記事で詳しく解説しています。
先に挙げた藤浪投手もメンタル面の問題からイップスに陥っている可能性があります。
藤浪投手のイップスの原因として各方面で指摘されているのは、
1、ヤクルト畠山選手へのデッドボール
2、金本監督からのプレッシャー
の2点です。
藤浪、畠山に頭部付近への死球を与えて乱闘 2017/04/04 阪神VSヤクルト
頭部付近への死球で畠山選手がかなり激高しています。
おまけに乱闘にまで発展し、藤浪投手は心理的にかなりのダメージを受けたと考えられています(もちろん、当ててしまった藤浪投手が悪いですが)。
プラスして金本監督は野手出身で、投手にあまり理解が無い発言が多く、藤浪投手に対してもかなり厳しいことで有名です。
2016年には「懲罰続投」として藤浪投手に161球も投げさせ、プロワースト8失点させています。
個人的にはこの辺りから金本監督の目を異常に気にするように感じていました。
このように、チームメイトや相手選手、さらには指導者の影響でイップスとなることもあります(藤浪投手がイップスかどうかは断定できません)。
〇イップスを治すには?
では、実際にイップスになってしまった場合、治すにはどうしたら良いのでしょうか?
これまたイップス研究所さんの記事を見てみましょう。
今日では、心療内科でジストニアと診断された多くの場合は、投薬治療が主な治療法となっています。
抗コリン剤や筋弛緩剤の内服、ボツリヌス毒素製剤の局所注射、局所麻酔薬とアルコールによるブロック注射、近年の最新治療法では電気刺激を与える療法などが用いられますが、どの治療法も有効率は低いようです。当所では、投薬治療は「応急処置的方法」であり、根本的な原因へのアプローチではないと考えています。現に、来所されるイップス選手や職業性ジストニアのクライアントはカウンセリングや催眠療法等の心理的アプローチにより克服される方がほとんどです。人は、こうせねばならない、こうあるべきという固定観念(意識)に縛られると、本当はこうしたい、ああしたいという思い(無意識)と葛藤を起こします。その際に身体に現れる症状のひとつとして、イップスでありジストニアと呼ばれるものの根本的な原因であると長年の経験から感じています。野球で言うと、サイドスローのほうがその人の身体に合った投げ方であり、無意識ではそう投げたいのに、「オーバースローで投げなければいけない(意識)」という固定観念により、自分では意識していないのにも関わらず過度な緊張状態が起こり、イップス症状が起きるというわけです。
つまり、イップス(ジストニア)とは、「頭(意識)と心(無意識)と身体のバランスが合っていないよ!」という無意識が表すサインなのです。では、どうしたら頭と心と身体のバランスが上手く調整されるのでしょうか。当所では、3つの方向からアプローチをかけ、調整していきます。①まずは自分の現状を知り、受け容れる→心理分析テスト②物の見方や考え方、受け取り方(意識)を変える→カウンセリング③心(無意識)のケア→催眠療法の3点からアプローチしていきます。
この3点をケアする事により、イップスやジストニアを克服することが出来ると当所の長年の実績、経験が物語っています。また、イップスにより、本来の自然な身体の動きそのものが不自然になっている場合、自然な動作を身につけるためのイップス克服トレーニングも行っていきます。
イップスは通称のようで、心療内科等の医療機関ではジストニアと診断されることが多いようです。
ジストニアとは運動障害の総称で、イップスと同じ意味だと考えてもらって構いません。
※ただし、イップス単独で心療内科を受診する選手はほとんどいません。実は、イップスがきっかけとなり、「うつ病」などの病気になり、心療内科を受診するまでになってしまう選手がいます。指導者はたかがイップスと考えてはいけません。
イップス研究所さんではカウンセリングなどの心理的アプローチを行うことによってイップスを改善しようと取り組んでいるようです。
見てお分かりのように、イップスを治すというのはかなり大変なことになります。
心理的アプローチを行ってもすぐに治るわけではありませんし、完治しないということもあります。
指導者によっては技術的なアプローチを行うこともありますが、本当に軽度なイップスでなければ改善しないように感じています。
というか本来のイップスの定義を考えると、技術的なアプローチで簡単に治るようであれば本当はイップスでは無いのかもしれません。
イップスを治すということは相当に大変なことなのです。
ですから、イップスは治すというよりも
「イップスにならない」
「イップスにさせない」
ことが大切です。
それには指導者の理解、チームへのイップス予防指導が大切と言えるでしょう。
ちなみに、私の場合は特別な治療はしていません。
時間が解決してくれただけです。
私は秋田県出身で、中学時代冬季は室内でのトレーニングがメインでした。
ほとんどボールを触ることが無かったため、先輩たちが引退した後のオフシーズン(秋田県のオフシーズンは長いです)が明けたら自然と投げられるようになっていたという感じです。
ただ、綺麗なフォームには戻りませんでした。
いまだに気持ちが悪いフォームと言われます笑。
〇イップスチェックをしてみよう!
では、イップスについて知識が深まったところで、イップスかどうかチェックしてみましょう。
↑イップス研究所さんのこちらのページでイップスかどうかをチェックできます。
ちなみに私が先日やってみたところ、
『イップスになっている可能性大。頭(思考、心、身体)がいっぱいいっぱいの状態です。野球をしていても楽しくありません。ケアの必要があります。』
という判定結果が出ました(´・ω・`)マジカヨ
これだけでは絶対にイップスかどうかは判断できませんが、少なくとも質問内容からイップスになりやすい人の傾向は掴むことができます。
指導者の方には一度やってみてもらいたいです。
イップスになってしまうと野球を心から楽しむことができなくなってしまいます。
選手に苦しい思いをさせないためにも、正しい理解をしましょう。
※追記
2018年末にこちらの書籍が発売されました。
かなり参考になるのでぜひご覧ください。
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