「見逃し三振」=悪ではない!
見逃し三振を禁止することで起こる弊害も踏まえた上で指導者は指導を行いましょう!
見逃し三振をOKにすることで、むしろ出塁率が上がるかもしれませんよ!
〇見逃し三振で怒鳴られる?
みなさんは「見逃し三振」についてどうお考えですか?
先日、春日部共栄高校で監督さんが体罰を行ったという残念なニュースが流れました。
当ブログでは、これまでも体罰の根絶を訴えてきましたから非常に残念に思っています。
ただ、今回考えたいのは、この春日部共栄高校の監督さんが体罰に至るきっかけとなった「見逃し三振」についてです。
春日部共栄高校の監督さんは見逃し三振に激怒し、体罰に至ったと記事には書かれています。
果たして、見逃し三振はそれほどいけないことなのでしょうか?
見逃し三振は次のように批判されることが多いです。
「消極的!」
「振らないと何も起こらない!」
「気持ちが無い!」
確かに、スイングしなければ打球が前に飛ぶことはありません。
見逃しからヒットは生まれません。
指導者や見ている側からすれば、見逃し三振というのは何も生まない行為であり、「悪」とされるわけです。
では、見逃し三振をしてしまったバッターはどうして見逃しをしてしまうのでしょうか?
私は仕事柄、球審を務めさせていただくことが多いです。
球審をしていると、どんなバッターが、どんなコースを見逃し三振しているかよく分かります。
やはり一番多いのはコースいっぱいのところを見逃しているケースが多いです。
学童や中学野球では、そもそもストライクゾーンをしっかりと把握できていない場合もありますが、多くはボールだと思って見逃しているのだと思います。
際どいコースは球審次第の部分もありますよね。
もし、ボールだと思ってバッターが見逃し、判定がボールだったら見逃し三振否定派の方々はどのように反応するのでしょうか?
球審をやっていると、そういう場合、多くはベンチや応援席から「よく見た!」という声が上がります。
一方、同じようなボールでもストライクだった場合は「なんで振らないんだ!」という罵声が飛ぶこともあります。
結局、結果論でしかないんですよね。
こちらの記事にも書きましたが、気持ちの問題が本質ではないことが多いです。
見逃し三振だって、本当は技術的な部分の問題(プラス指導者の声かけ)が多いはずなんですよね。
先の春日部共栄高校でのケースもこれだったのではないでしょうか?
〇際どいコースは紙一重!
こちらの記事に詳しくカウントごとの待ち方をまとめていますが、みなさんカウントごとの待ち方のアドバイスはしていますか?
たとえばカウント3-2で明らかにピッチャーが格上の場合、際どいコースをスイングにいってもカットすらできない可能性がありますよね。
三振だけども振ったからいいのか、見逃してフォアボールの可能性を残した方がいいのか。
相手との力関係を考えた上で、空振りは無いと考えたのであれば、ストライクゾーンを広げ、多少ボールぎみのボールも打ちにいくのであればそれも良いかもしれません。
しかし、追い込まれていて、厳しいコースはヒットにできない、甘いコースだけに絞ると選手が決断したのであれば、それはそれで褒められることではないかと思います。
それでも見逃し三振を絶対に悪いことだと指導者が考えるのであれば、多少のボール球に手を出してしまうことも容認しなければいけません。
先に述べたように、際どいコースは球審次第の部分もあります。
全く同じコースでも、キャッチャーや球審によってストライクボールの判定が変わることがあるわけです。
たとえば、上の図のうち、①のボールはストライクです。
ただし、本来はあってはいけないことかもしれませんが、キャッチャーのキャッチングや球審の判定によって、ボールにもなり得るコースだと思います。
ここはスイングすべきですか?
絶対に打ちに行けという方が多いことと思います。
ですが、①をスイングにいけば、ボール球である②もスイングしてしまうことが増えていくことになります。
①はスイングしなければいけないが、②はボールだから絶対に振ってはいけないなんていう人もいますか?
バッターはマシンではないのですから、ほんの数ミリのストライクボールはなかなか判断できるものではありませんよ。
それなのに、見逃し三振に怒鳴る、ボール球に手を出して怒鳴る、それでは筋は通らないと思いませんか?
また、本来あってはいけないことですが、キャッチャーのフレーミングや球審の好みによって、②がストライクとコールされることだってあるはずです。
その場合はどうしますか?
ストライクゾーンを広げろという声をよく聞きますが、②もストライクのつもりでスイングさせるということは、②よりもさらに外側のボールにまで手を出すことになっていきますよ。
実際、球審をやっていると、見逃し三振で怒鳴られるチームはボール球を振っても怒鳴られるケースが多いです。
際どいコースというのは、ストライクボール五分五分なわけです。
ボール球に手を出すことが増えるとやはりバッティングは崩れやすくなります。
そもそも際どいコースのボールに手を出してもなかなかヒットにすることは難しいです。
バッティングを崩す上にヒットにもなりにくいとなれば、かなりリスクがある気がしませんか?
〇際どいコース以外も手が出なくなっていく!
しかもストライクゾーンを広げて待つことで、逆に意識がないゾーンに手が出なくなることもあります。
たとえば外いっぱいの意識が強すぎると内角に手が出なくなったり、ど真ん中に手が出なくなったりすることもあります。
これは様々な書籍で指摘されていることですが、「〇〇するな!」という指導の弊害です。
たとえば「高めを振るな!」と指導すると、イメージが高めに設定されてしまい、逆に高めに手を出してしまったり、萎縮してしまい甘い高さにも手が出なくなってしまったりします。
したがって、「高めを振るな!」よりも「ベルトより下を打っていけ!」の方が有効な声かけになるわけです。
ですから、「見逃し三振は無しだぞ!」といった声かけよりも、「甘いボールを打っていけ!」といった声かけの方が選手は力を発揮できます。
「見逃し三振をするな」という指導をしていると、萎縮し、甘いボールに手が出なくなる可能性もあるのです。
というか、そういうケースはめちゃくちゃ多いですよね。
はたして、見逃し三振を悪とすることで本当に出塁率は上がるのでしょうか?
確かに振らなくては何も始まらないのですが、振ることで終わってしまうものもあるということなのです。
それでもみなさんは見逃し三振を絶対悪としますか?
ぜひ考えてみてください。
ちなみに宮川理論では、そんな考えを「甘球必打」として指導しています。
こちらもこの記事に関連して参考になると思うので、ぜひご覧ください。
関連記事です。