相手バッターのスイングを見てポジショニングを変えることはできていますか?
バッターのスイングの軌道をしっかりと分析することによって打球が飛びやすいところはかなり絞ることができます!
勇気が必要ですが、積極的にポジショニングを変えてみましょう!
今回は私が試合の際に使っている田口シフトを紹介します!
〇MLBで流行している極端なシフトの正体!
NPBでは行われることはほとんどありませんが、MLBでは上の動画のように、極端な守備位置を採用することが近年かなり増えています。
もちろん、必ず成功するとは限りませんが、この極端なシフトの網にかかってしまい、ヒットを損したような感覚になるケースも多々あります。
こちらはいわゆる「大谷シフト」です。
大谷シフトを敷くことによってセンター前ヒットがショートゴロに抑えることに成功しています。
このようなMLBで採用されている極端なシフトは、セイバーメトリクスの発達によって採用されるようになりました。
各球団はバッターの打球傾向を分析し、どこに打球が飛ぶ確率が高いのかを「データ」で管理しています。
これは、印象でシフトを組むこととは全く異なります。
全試合全打席追いかけていれば、その印象は正確に近くなっていくかもしれませんが、一人のバッターを印象だけで捉えると、インパクトがあった打席にどうしても引っ張られてしまいます。
たとえば、私の中では、大谷選手は逆方向にもホームランを上手に打っているイメージがあるので、大谷シフトを敷くことはできないと思います。
MLBが行っている極端なシフトは、「印象」という曖昧な主観を徹底的に排除し、何%の確率でどこに打球が飛ぶのかという客観的なデータを利用したものなのです。
これはすごいことですが、相手のデータを得ることや分析することが難しいアマチュア野球では不可能に近いのです。
〇ではどのようにシフトを敷くべきか?
しかしながら、単なる印象でシフトを敷くのではあまり効果は望めません。
多くのチームでは印象や前の打席で飛んだ打球の傾向を見てポジショニングを微妙に変えているようです。
たとえば、よくあるアマチュア野球でのポジショニングは以下のようなものです。
・前の打席にレフトに長打を打っているので、レフトを下げ、センターを左中間に寄せる。
・左バッターという理由でレフトをライン際に寄せる。
・小柄なバッターなので外野を前進させる。
これらのポジショニングが当たることもあるかもしれません。
しかし、ほとんどの場合は偶然だと思います。
レフトに長打を打ったバッターはどうしてレフトに長打を打てたのでしょうか?
変化球が曲がらずに真ん中に来たのでたまたま引っ張れたのかもしれませんよ。
普段はほとんど引っ張れないバッターだったとしたら、このポジショニングのせいで右中間にフラフラと上がった打球が2塁打になってしまうかもしれません。
確かに走りながら打ってしまうような左バッターはライン際に打球がいくことも多いですが、しっかりと待って打てるバッターはそんなことはありません。
小柄だから長打力が無いというのも決めつけすぎてはいけません。
スイングパスが正しければ小柄な選手でも十分に長打を打つことはできます。
したがって、印象や前の打席の打球が飛んだ方向を見てポジショニングを変えることはあまりおすすめできません。
私がおすすめするのは、「バッターのスイングの軌道=スイングパス」を見てポジショニングを変えるという方法です。
↑スイングパスについてはこちらをご覧ください。
〇バッターのスイングタイプを三つに分ける。
私はバッターのスイングタイプを三つに分類しています。
まず、一つ目は極端なダウンスイングをするタイプのバッターです。
こちらの図をご覧ください。
試合中に伝達しやすいように便宜上「Aタイプ」と私は呼んでいますが、「A」に特に意味はありません。
Aタイプのバッターは極端なダウンスイングに見えるのが特徴で、ボールを点で捉えるため、基本的にはスイングパスが合いづらいです。
したがってボールを切るような打球が多く、特に真ん中よりも外のボールに関しては右方向への弱いフライになることが多いです。
基本的には手首を立てて、コネて打ってしまうので、低めのボールを中心にサードやショートへのゴロになることも多く、大きな強いフライはほとんど打つことが難しくなります。
ただし、真ん中より内側、かつ高めのボールに関してはスイングパスがボールの軌道に合うこともあるので、その場合はレフトに強い打球が飛ぶこともあります。
その場合はライナー気味になることが多いので、レフトはAタイプの場合、ライナーの処理は常に頭に入れておく必要があります。
外角を中心に攻めれば怖くはないのがAタイプです。
次が外回りしてバットが出てくるバッター。
私は便宜上「Bタイプ」と呼んでいます。
このタイプはバットが遠回りするため、基本的に引っ張れないのが特徴になります。
特に内角の速いボールは弱点と言っても良く、ファールにするのが精いっぱいです。
後ろの足が回ってこない、後ろの肩が下がりやすいなど、慣れてくると判別もしやすいです。
外のボールに関しては右中間に大飛球がいくこともあるため、良いバッターと勘違いしやすいのですが、外回りするので引っ張って長打を打つことはなかなかに難しいです。
内角を突ける投手は勇気を持って内角を攻めるといいでしょう。
そして最後の一つ、スイングパスが正しいバッター。
内角も外角も上手に打ち分けることができる、要するにいいバッターです。
このタイプのバッターはなかなか穴がなく、広角に打ち分けるので極端なシフトを敷くことは困難です。
こうしたタイプは仕方なくいわゆる定位置で守ります。
が、こうしたバッターは高校野球のレベルでもそこまで多くありません。
中学野球までのレベルであればチームに2人いれば多い方だと思います。
こちらは実際に私が都大会の際に書いたメモです。
実際の試合の際に書いたノートなので、字が汚くて申し訳ありませんが、都大会に出場したチームとの対戦であっても、定位置で守ったのは4番バッターのみです。
このチームは決してバッティングがひどいというわけではありません(むしろかなり強力な打線だったと思います)が、それでもこのように分類できるわけです。
このように、私は相手バッターをスイングによって分類し、それをポジショニングに活かすようにしています。
1打席目を見るまで判別できないこともありますが、大体のチームは試合前にスタメンが素振りをするので、そこを見て早めに判別できるようにしています。
かなり極端に動かすので、ちまたでは田口シフトと呼ばれています。
次の項ではタイプ別に、実際どのようにシフトを敷くのかまとめます。
〇田口シフトの基本!
田口シフトは先に挙げた三つのスイングタイプのうち、AタイプとBタイプの際に用います。
Aタイプの場合はこの図のようになります。
Aタイプで気をつけなければいけないのは、セカンド後方のライン際に切れるように上がるフライです。
これをポテンヒットにしないように、センターとライトをかなり動かす必要があります。
Aタイプは外角のボールをライト方向に長打にすることはかなり難しいです。
したがって、セカンドを下げるのではなく、外野を前に出すのが正解です。
その分、セカンドは後方の打球や一二塁間の打球を捕る必要がなくなるので、セカンドベースにかなり寄せることでセンター前ヒットをアウトにすることができます。
逆にサードやショートはコネ気味のやや強いゴロが多くなるのでライン際に寄ります。
レフトは内角高めのボールにスイングパスがあったときにはそこそこ強いライナーが飛ぶことがあるので、その打球をイメージして守ることが大事になります。
ちなみにセンターの守備力が高い場合はセンターゴロも取れます。
※追記
田口シフトでバッターがAのスイングの場合、センターは右中間を守ることになります。
基本的には左中間には打球が飛びません。
しかし、次の場合左中間に打球が飛んでしまいます。
・ピッチャーのボールが極端に遅い場合(相対的にバッターのレベルが上の場合)
・ピッチャーが真ん中高め、内角高めに失投した場合
・バッターが泳いだボールを前で捉えた場合
基本的にAは弱点が多いスイングなので、ピッチャーがしっかり投げ込めれば上記の心配はあまりありません。
しかし、私のチームではピッチャーをそのレベルまで育てきることができませんでした。
そこで考案したのが、Aでも比較的レベルが高いバッターの場合、セカンドが左中間を守ること。
これで左中間の打球が捕れます。
セカンドゴロはセンターかライトが1塁でアウトにしてくれるので、ピッチャーが安定するまでこれで行くことにしました。
7月の大会ではこのシフトがことごとく嵌まりました。
次にBタイプのシフトです。
Bタイプは外側のボールにスイングパスが合うと、右中間に強いフライが上がることがあります。
左中間に上がることはあまりありませんので、センターを右中間に寄せてしまいましょう。
セカンドはほぼ定位置でいいのですが、もしバッターの足が遅かったり、ライトの頭を超すほどのパワーが無さそうな場合は一二塁間の打球はライトに任せて、セカンドベースに寄ってしまいましょう。
そのあたりのことはこちらの記事に書いていますのでご覧ください。
また、強く引っ張れないバッターが多いので左方向へ強い打球が行くことは少ないです。
サードショートは思い切って前目を守りましょう。
以上の2パターンの田口シフトはあくまでも基本であって、ここにさらに様々な要素を踏まえて最終的なポジショニングを決定します。
たとえば以下のようなことも考慮します。
・バッターのスイングスピード。スイングスピードが速いとBタイプでも引っ張れる。
・会場の形態。 学校の校庭で試合をする場合はライトが浅いなど球場をは異なる特徴があることが多いため。
・野手の守備力。特にライトゴロを取れるかどうかはかなり気を遣う。
・バッターの走力。足が速い選手に対してはやはり内野手が若干前目に守る必要が出てくる。
・風向きと風の強さ。特にAタイプのフライは切れていくので注意。
これらのことを瞬時に判断、さらには微調整を行っていかなくてはいけないので、はじめはなかなかうまくいかないことが考えられます。
また、Aタイプ・Bタイプの判別も慣れないと間違ってしまうことも多いでしょう。
しかし、訓練していけば必ずできるようになります。
練習試合などで繰り返していくうちに、判別も早くできるようになりますし、選手も次第に理解していきます。
チームで一人くらいはAタイプとBタイプの判別ができる選手が出てくるでしょうし、伝達もどんどん早くなっていきます。
私のチームでは記録員がスコアブックにA、Bなどを記入し、バッターが打席に入る前にベンチに伝え、ベンチメンバーが野手に伝えています。
野手もバッターの様子を見ながら、1球ごとに微調整できるようになっていくと思います。
さらにはバッテリーもこの情報を活かし、
「Aタイプだから徹底的に外を攻めよう」
「Bタイプだから決め球は内角で行こう」
などと配球に繋げられるようになると、よりこのシフトは効果を発揮していきます。
〇こんなに極端なシフトを敷いて大丈夫?大丈夫!!
田口シフトを敷いていると、左中間がかなり大きく空いていたり、一二塁間からセカンドが消えたりとかなり極端なポジショニングになることもあります。
そうなると相手ベンチから
「左中間がら空きだぞ!狙え!」
なんて声が上がることがあります。
人によってはそういった声に不安を感じるかもしれませんが、これはちょっと無理な話なんですね。
AタイプとBタイプの分類というのは、その試合の中で修正できるようなことではありません。
ちょっと振り遅れている選手がライト方向にファールを打ち、それに対して「遅れているからテイクバックを早めに取れ!」なんていうアドバイスとは話が全然違います。
修正するにはかなりの練習が必要なやっかいな癖なのです。
※ちなみに修正するなら宮川理論がおすすめです。
むしろ無理に空いているスペースを狙って打とうなどと考えるとスイングがおかしくなってしまう可能性が出てきます。
こちらの動画は「王シフト」についての動画ですが、「王シフト」の目的として「王選手のバッティングを崩すこと」が挙げられています。
また、王選手もシフトに惑わされずに頭上を越す=ホームランを打てばいいという思考で「王シフト」を打破しています。
この両者の考えは非常に参考になると思います。
難しいのはタイプの分類です。
そこさえできるようになれば、シフト自体は失敗することはそれほど多くありません。
ぜひ挑戦してみてください!
関連記事です。