MLBでは重視されている守備指標UZR (アルティメットゾーンレーティング)!
日本ではまだあまり認知されていませんが、今後広まるでしょう!
UZRについて詳しくまとめました!
〇守備率だけでは本当の守備力は分からない!
打撃力を表す指標OPSはこちら。
選手の勝利への貢献度を測る総合指標WARはこちら。
投手の安定感を表す指標WHIP。
今回は守備の指標であるUZRを紹介したいと思います。
以前は、守備力を表す指標としては守備率が重視されていました。
守備率とは飛んで来た打球をミスなく処理できた割合のことを言い、
守備率=(守備機会-エラー数)÷守備機会
で出すことができます。
高い選手だと.990ほどで、10割に近い数字になります。
2018年NPBのショートだと守備率トップが京田選手で.991、次いで田中選手と足達選手で.989でした。
外野の場合は守備的が少ないこともあり、10割の選手が出ることもあります。
2018年シーズンは大田選手と中村選手、大島選手が10割。
2016年シーズンにはセ・リーグとパ・リーグ合わせて4名の外野手が守備率10割でした。
守備率は長らく重視されて来ましたが、致命的な欠陥がある指標です。
正面の簡単な打球だけを処理し、難しい打球は追わなければエラーにはなりません。
守備率には守備範囲が全く反映されないのです。
そればかりか、難しい打球に追いついた選手ほどエラーになりやすいので、守備範囲が広い選手のほうが守備率が低いということまであり得ます。
そこで考案されたのが守備指標UZRです。
〇UZRとは?
守備率が単純に出せるのに対してUZRはかなり複雑で、専用の処理ソフトが無いと出すことはできません。
各ポジションリーグの平均と比較し、どれだけ失点を多く防いだかを示す指標。フィールドをいくつものゾーンに分け、全打球の方向や種類、速度を記録し、各打球の難易度を設定したうえで各選手の実際の守備処理と照らし合わせる。選手によってはシーズンごとのばらつきが大きく、真の実力を判断する上での適切なサンプルサイズは3年ほどとされる。『スラッガー特別編集2017プロ野球選手名鑑』P230より
ということで、かなり複雑なことが分かります。
個人で計算することはなかなか難しいのですが、簡単にいうと打球難易度や守備範囲も反映した守備指標ということになります。
日本ではまだあまり馴染みはありませんが、MLBでは守備率よりも重視されている指標になっています。
+20~-20の幅に収まる選手が多く、+10以上だと優秀な成績と評価されます。
ちなみにバッテリーは評価の対象外です。
↑今回の記事作成にあたって、こちらの書籍を参考にさせていただいています。
〇ゴールデングラブ賞との関係性
プロ野球ではシーズンの守備面での功績を称える賞として、ゴールデングラブ賞がありますよね。
私はゴールデングラブ賞は守備率や印象で選ばれることが多いと感じています。
毎年UZRの観点で見ると疑問をもつことが多いです。
そこで、2018年のゴールデングラブ賞の受賞者の守備率、UZRを見てみたいと思います。
セ・リーグ(2018年)
一塁手 ロペス 守備率1.000(1位) UZR+3.9(2位)
二塁手 菊池 守備率.996(1位) UZR+7.9(3位)
遊撃手 田中 守備率.989(2位) UZR+3.7(3位)
三塁手 宮崎 守備率.963(4位) UZR-7.7(5位)
外野手 丸 守備率.995(2位) UZR-4.3(センターで3位)
外野手 大島 守備率1.000(1位) UZR+9.5(センターで1位)
外野手 平田 守備率.995(3位) UZR+10.8(ライトで1位)
セ・リーグはやはり印象で選ばれた感がぬぐえません。
次の項で2017年以前はどうだったのかを触れたいと思いますが、前年までの印象がかなり選考に影響していると感じます。
特に菊池選手は2017年に引き続きUZRは山田選手に負けています。
UZRは3年ほど見ると正確に出ると言われていますが、菊池選手はここ数年UZRが低下傾向にあるので、守備力は衰えたと言っても良いと思います(ただし、依然として球界トップクラスなのは間違いありません)。
また、田中選手と丸選手も印象で選ばれた感が強いです。
ショートに関しては坂本選手と京田選手の方がUZRが高く、守備率も京田選手が上回っています。
坂本選手は出場試合数が少ないので、出場試合数のことも考えると2018年は京田選手が獲得すべきだったのではないかと思います。
外野手に関してはUZRナンバー1+守備率も高い桑原選手が獲得すべきだったと思います。
3塁手は総合的に見てマギー選手ではないでしょうか。
さすがにUZRがマイナスな上に守備率も最下位の宮崎選手を選ぶのはどうなのでしょうか?
パ・リーグ(2018年)
一塁手 中田 守備率.998(1位) UZR-0.5(4位)
二塁手 中村 守備率.993(1位) UZR+7.4(1位)
遊撃手 源田 守備率.986(2位) UZR+32.9(1位)
三塁手 松田 守備率.978(1位) UZR+7.3(1位)
外野手 秋山 守備率 ランク外 UZR+0.3(センターで3位)
外野手 柳田 守備率.996(5位) UZR-4.3(センターで5位)
外野手 西川 守備率 ランク外 UZR+8.2(センターで1位)
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こちらは源田選手のUZRが大変なことに!
UZR+32.9は近年最高値。
というかUZRの歴史は浅いですが、歴代最高なのではないでしょうか?
源田選手は昨年も+20越えを果たしており、守備だけで見たら近年最高の遊撃手と言っても過言ではないかもしれません。
ちなみに昨年までゴールデングラブ賞を獲得してきた今宮選手はUZR-7.8。
意外かもしれませんが、ここ数年今宮選手のUZRは高くありません。
内野手は良いと思うのですが、外野手は名前で選ばれた感が…。
個人的にはUZRナンバー1+補殺1位の上林選手が選ばれるべきだったのではないかと思います。
〇2017年以前はどうなっているか?
1シーズンだけサンプルを掲載するのも少ないので、2016年と2017年の数値も紹介します。
やはりゴールデングラブ賞においてはUZRが軽視されている気がします。
セ・リーグ(2017年)
一塁手 ロペス 守備率.995(1位) UZR+7.6(1位)
二塁手 菊池 守備率.993(1位) UZR+3.0(2位)
遊撃手 坂本 守備率.987(1位) UZR+13.2(2位)
三塁手 鳥谷 守備率.968(2位) UZR-19.2(6位)
※鳥谷選手は400イニング以上守備をした野手の中でダントツ最下位。
外野手 丸 守備率.993(5位) UZR+6.2(センターで3位)
外野手 鈴木 守備率 ランク外 UZR+9.3(ライトで1位)
外野手 桑原 守備率 ランク外 UZR+13.9(センターで1位)
2017年のゴールデングラブ賞選考。
セ・リーグで気になる点は失礼ながら鳥谷選手が受賞している点です。
鳥谷選手の守備力が落ちていることは2015年シーズンあたりからファンの目にも明らかで、2016年は受賞なりませんでした。
しかし、2017年はサードで返り咲き。
しかし、UZRはぶっちぎりの最下位です。
申し訳ないですが、これは選考した側が名手というイメージに引っ張られてしまっているといわざるを得ません。
阪神タイガース 2017年5月14日 対横浜DeNA 鳥谷のサード守備まとめ
これについてはこちらの記事にもまとめてあります。
外野手は順当に選出されたと思いますが、鳥谷選手を見るとやはり印象度で選ばれがちなことが分かります。
ちなみに、2017年セ・リーグのUZRトップは中日の京田選手でUZR+14.4というすばらしい数字を残しています。
パ・リーグ(2017年)
一塁手 銀次 守備率.994(1位) UZR+2.9(2位)
※銀次選手は2塁手でUZR+3.0で1位。
二塁手 鈴木 守備率.993(1位) UZR-8.6(5位)
遊撃手 今宮 守備率.988(1位) UZR+2.7(4位)
三塁手 松田 守備率.967(1位) UZR+1.0(1位)
外野手 秋山 守備率 ランク外 UZR+3.9(センターで3位)
外野手 柳田 守備率.996(5位) UZR-6.0(センターで6位)
外野手 西川 守備率 ランク外 UZR+10.5(センターで1位)
鈴木選手もイメージ先行だった感がぬぐえません。
ただ、二塁手のレギュラー固定が鈴木選手と浅村選手しかいないような状況でしたから仕方ない部分もあります。
先に述べたように、今宮選手は名手として有名ですが、実は毎年UZRはそれほど高くありません。
2018年同様、2017年も西武の源田選手がUZR+21.6という異次元の数字を叩き出していました。
これは野手全体のトップです。
2017年も個人的には源田選手がゴールデングラブ賞を獲得すべきだったのではないかと思っています。
さて、今度は2016年。
セ・リーグ(2016年)
一塁手 ロペス 守備率.998(1位) UZR+5.2(1位)
二塁手 菊池 守備率.995(1位) UZR+18.7(1位)
遊撃手 坂本 守備率.974(4位) UZR+15.6(1位)
三塁手 村田 守備率.954(2位) UZR-11.9(6位)
※他球団で年間を通じて三塁手のレギュラーを確保した選手不在。
外野手 丸 守備率.993(4位) UZR-1.3(センターで3位)
外野手 大島 守備率 ランク外 UZR-1.9(センターで5位)
外野手 鈴木 守備率.991(5位) UZR-1.2(ライトで3位)
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パ・リーグ(2016年)
一塁手 中田 守備率.993(3位) UZR+7.6(1位)
二塁手 藤田 守備率.993(1位) UZR-6.2(5位)
遊撃手 今宮 守備率.982(1位) UZR-6.1(4位)
三塁手 松田 守備率.967(1位) UZR+12.2(1位)
外野手 秋山 守備率1.000(1位) UZR-5.5(センターで6位)
外野手 陽 守備率 ランク外 UZR±0(センターで3位)
外野手 糸井 守備率 ランク外 UZR-10.6(ライトで4位)
各ポジションで400イニング以上出場した選手を対象としています。
2016年はUZRが計算されないバッテリーを除くと14名中、UZRがトップだった選手はなんと5名しかいないということになっています。
おまけにUZRがマイナス評価の選手が9名もいます。
そもそもライバルがいなかった村田選手は仕方がないにしても、UZRがマイナスの選手がこれほど選ばれるのはどうなのでしょうか…。
逆にUZRは非常に優秀であったのに選ばれなかった選手もいます。
日本ハムの遊撃手である中島選手はUZRで+19.4という2016年シーズン全選手最高の記録を残しましたが、ゴールデングラブ賞は-6.1の今宮選手です。
守備の印象は薄いですが、全外野手レギュラー中1番のUZR+8.9だった筒香選手も落選しています。
実は2015年シーズンも全選手最高のUZRだった坂本選手が選ばれず、鳥谷選手が選ばれています。
こうやって見ると日本のゴールデングラブ賞の選考ではUZRはあまり重視されていないことが分かります。
必ずしもUZRが絶対的に正しい守備指標とは言い切れないのかもしれませんが、もう少しUZRを考慮してゴールデングラブ賞を決めるべきではないかと私は思います。
MLBでは一般的になっているようなので、今後日本でももっともっと広まる可能性が高いです。
覚えておいて損はないので、2019年シーズンはぜひ選手たちのUZRにも注目してみてください!
なお、数値はデータスタジアム社のデータを使用しています。
UZRは他にも算出しているところがあり、数値が異なることがありますのでご了承ください。
UZRと似ているDRSについてはこちらをどうぞ。
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