育成に力を入れるならなおさら勝利を目標にすべき!
勝利至上主義とはまた違う、待ち負けにこだわった末の育成が本当の選手のためになるはずだ!!
〇育成重視の考えには賛同するが、注意点も!
近年、少年野球や中学野球を中心に、選手の「育成」に力を入れていることを謳うチームが増えてきている気がします。
選手の人間力を育てること、もしくは選手の野球技術を高めること、さらにはその両方に主眼を置くというチームです。
このこと自体は非常にすばらしいことだと私は思っています。
↑特に最近感銘を受けたのがこちらの書籍でも紹介されている「堺ビッグボーイズ」さんの取り組みですね。
選手の将来を見据えた指導を実践していらっしゃいます。
Facebookの堺ビッグボーイズさんのページも参考になりますので、ぜひご覧になってみてください。
実は、私も「人間形成」に力を入れて指導しているつもりです。
これは部活動は学校教育の一環であるからということもありますが、野球界全体の現状を考え、野球界が社会のためになる人材育成に貢献できたらという広い視野でやっているつもりです。
↑以前この記事でも書きましたが、残念ながら野球部の評判は世間一般で良いとは言い難い状況であり、ここ最近も指導者や選手の不祥事が続いてしまっています。
↑こちらの記事に書いた仙台育英高校の事件は個人的にもかなりショックでした。
こういった状況ですから、野球人として、野球界を良いものにしていきたいと考え、「人間形成」を謳っているわけです。
当ブログでも、けっこうしつこいくらいに「人間形成」の重要性を記事にさせていただいています。
↑この辺りの記事は共感してもらえたようです。
また、当然ですが、「野球」というスポーツの指導者なわけですから、野球の技術指導にも力を入れています。
部活動として考えた場合には、顧問の先生全員が野球の専門家というわけではありませんが、外部指導の方の力を借りたりしながら、少しでも野球が上手になって欲しいと思っているはずです。
私は幸いにもずっと野球をやってきましたから、指導する選手にはみんな少しでも上手になってもらいたいと思って一生懸命関わっているつもりです。
ですから、野球技術の育成という点にも力を入れているつもりです。
↑こちらの部活動保護者会資料にもありますが、目的は「人間形成」ですが、目標は「都大会」としています。
昨今、特に「野球技術」という点に力を入れて育成しますというチームが増えてきているように感じています。
独立リーグなんかもそういった発想から生まれたのではないかと思うのですが、この「育成」に力を入れるといった際に注意して欲しいことがあります。
それは、勝ちにこだわって欲しいということです。
〇育成重視なのに勝ちにこだわるというのは一見すると矛盾するが…
育成を重視することはすばらしいと言っておきながら、「勝ちにこだわって欲しい」というのは一見矛盾しているような気がしますね。
しかし、「人間力」や「野球技術」を真に育てようと考えた場合、「勝ちにこだわる」ということ無しでは育たない部分もあるのは事実です。
これは勝利至上主義に走ることとは全く異なります。
たとえば、みなさん草野球の練習試合で退場する選手を見たことがありますか笑?
私は早朝野球を長年やっていましたが、そんなことは一度もないです。
これは、大人がやっているというのもあるかもしれませんが、そんなに勝ち負けにこだわっていないからというのもありますよね。
ちょっとしたミスやエラー、誤審なんかも笑って済まされるような雰囲気で楽しくやっています。
もちろんちょっと短気な人がイライラしているのを見ることはありますが…。
同じように、小学生や中学生でも初めから「勝ち負けはどうでもいいぞ」という姿勢でやると、一生懸命さに欠けることが出て来ます。
相手チームをヤジったり、ラフプレーをしたり、審判の判定に不満を言ってしまったり、これは絶対に許されないことです。
味方のミスにイライラしたり、きつい言葉を投げかけてしまったり、これも私は好きではないです。
これらの行為は私は許されないこととして指導します。
ですが、こういった行為は「勝ちたい。負けたくない。」という気持ちがあるから生まれるのだということも事実です。
「勝ちたい。負けたくない。」という気持ちがあるから、必死に勝つためにいろいろな感情が生まれます。
それでもやってはいけないことはいけないし、味方のミスも支え合う気持ちを持たなくてはいけません。
それを学んでいく、教えていくのが「人間形成」ではないでしょうか?
例を挙げます。
【高校野球】日本航空石川の選手が殺人タックル 日大三 vs 日本航空石川 (2017年明治神宮大会)
2017年の明治神宮大会で日本航空石川の選手が日大三高のキャッチャーの真正面にスライディングをしてしまい、キャッチャーが負傷退場してしまったということがありました。
現状のルールではキャッチャーもランナーも接触しないように努めなくてはいけませんから、これはかなりまずいプレーだったと思います。
しかし、このプレーは日本航空石川の選手が一生懸命に勝ちを目指したから起こったプレーだということも事実です。
本来であれば、相手選手を負傷させるような危険なプレーですから、私は小倉監督の前に日本航空石川の監督が出てきてラフプレーをした選手を厳しく指導する必要があると思います。
そういう中で一生懸命やる中でも許されないことを学んでいくのだと思います。
まあ公式戦の前にそういうことを指導しきれているのがベストだとは思いますが…。
「負けてもいいよ。」という中では草野球と一緒でなかなか必死さは生まれません。
そんな環境の中でミスがあっても笑っていられるのは別に人間力があるからではありませんよね。
「勝ちたい」という気持ちが無ければ、一生懸命なプレーはできないし、一生懸命やる中でもフェアプレーや相手を思いやる気持ちが大事だということを学ぶことはできないのです。
↑こちらのグッドルーザーを目指す指導も同様の趣旨です。
ぜひ参考にしてみてください。
技術面でも同じことが言えます。
勝ち負け度外視で、野球技術の育成を目指すというのはかなり難しいです。
これはプロ野球で成績がふるわないチームでよくあるパターンに似ています。
勝ち負け度外視で野球技術の育成だけを目指せば、結局行きつくところは自身の成績になってきます。
自分が打てた、守れた、投げれた。
こういったところにしか真剣になれなくなってきます。
数字には表れないけれども、チームが勝つためにはとても大切だということはたくさんありますよね。
たとえばカバーリング。
徹底したカバーリングをするにはかなりの根気が必要です。
毎回カバーリングを全力でやるためには、大変でも行うことができる理由が必要です。
それはやはり「勝ちたい」という気持ちではないでしょうか?
自分の成績にしか興味の無い選手はチームのために、仲間のために、勝利のためにカバーリングを毎回全力で走ることはできないでしょう。
5点差で勝っていても1点もやりたがらないピッチャーなんかも出て来ます。
自分の打席のことしか興味が無いから3球で凡退する攻撃なんかもあるでしょう。
自分の肩を見せつけたくて敢えてカットマンを使わない外野手も増えます。
また、ベンチでの応援だって数字には表れませんが、勝つための大きな力になります。
イニング間のグラブ渡しや、ランナーから帰ってきた投手に水筒を渡すなど、地味な行為も重要ですよね。
これだって「勝つこと」を目指すから大切さに気が付くことができる行為です。
ベンチワークだって立派な野球技術だと思いませんか?
このように、「人間力」や「野球技術」を育成したいと考えるのであれば、より一層「勝ち負け」にこだわるべきだと私は思います。
〇「勝利至上主義」との違い!
ただし、「勝ち負け」にはこだわるのだけれども、こだわりすぎないさじ加減が重要です。
「勝利至上主義」、勝つためには何をしても良いとはなってはいけません。
一生懸命に勝利のために全力を尽くすけれども、
試合が終わったら結果ではなく、内容を評価してあげてください。
勝てなかったから全てダメではなく、試合が終わった後の評価は「人間力」と「野球技術」の観点で見てあげるべきです。
「今日の試合は勝てなかったけれど、カバーリングを全力でできたし、2ストライクから粘ることができた選手も多かったから良かったぞ!」
と褒めてあげるのが育成かなと思います。
逆にたとえ勝てたとしてもそういった部分ができてなければ指導するのも育成です。
大きく考えると、
社会人以外のアマチュア野球は全て「育成」を重視すべきカテゴリーなのではないかと私は考えています。
「育成」を全面にアピールするかは別にして、勝てば官軍のカテゴリーでは無いはずです。
ですから、アマチュア野球の指導者の方には
「育成でも勝ち負けにこだわる」
「勝ち負けにこだわるけれどもこだわりすぎない」
という部分を意識してもらえたらなと思います。
また、その辺りのことを選手と確認し、選手の意識を高めるためにも選手としっかりとコミュニケーションを交わすことをおすすめしています。
選手のモチベーションを引き出すのは指導者の役目です。
以下の記事をぜひご覧ください。
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