素振りといえば、マスコットバット?
重いバットで振ることで確かに力はつくかもしれませんが、野球腰などのケガの危険も!
素振りをたくさんするならノックバットをおすすめします!
〇いまだに行われる重いバットでの数多くの素振り…
このブログをご覧になっている指導者の方々も現役時代はかなりのスイング数がノルマのように課されていたのではないでしょうか?
私も高校時代は毎日500スイングが課されていました。
基本的にはマスコットバットを使用しての素振りとティーバッティングが500スイングの中心です。
マスコットバットは確か1100gほどの物で、普段使用しているバットよりも200gほど重かったと記憶しています。
私はバッティングは得意でしたし、好きでしたが、このマスコットバットを使用してのスイングは好きではなく、ときどき上手に手を抜いていたことを覚えています。
しかし、それでも2年の冬に腰を痛めてしまい、シンスプリントだったこともあり、3年の春は棒に振ってしまいました。
今思えば、重いバットの振り過ぎによる野球腰だったのでしょう。
今ではそういった野球腰の危険性も指摘されるようになってきていますが、やはり重いバットを使用しての振り込みは多くのチームで取り入れられているようです。
2017年、公立高校で大阪府大会の決勝まで進出した大冠高校は一日1000スイング。
冬季は一日3000スイングですから半端ないですね…。
そしてやはり重いバットでスイングしていたようですね。
記事がすでに削除されてしまったのですが、済美高校もすごいようですね。
以前目にした記事によると冬場は1100gのバットでロングティー500本。
90分以内に1000スイングがノルマの連続ティー打撃の両方を連日行っていたそうです。
記事にはなっていないものの、このようにマスコットバットで数多くのノルマを課している野球チームは多いのではないでしょうか?
確かにこういった重いバットを500や1000などの数を振ることによって、通常の金属バットを握ったときに軽く感じて、鋭く振れるようになるかもしれません。
しかし、こうした練習には常に野球腰のリスクがあることを指導者は忘れてはいけないと思います。
〇参考文献を見てみよう!
ここからは書籍も参考に野球選手の腰痛(いわゆる野球腰)のリスクについてお話ししていきたいと思います。
こちらの間瀬泰克氏のこの書籍は野球関連のケガについてかなり分かりやすく丁寧に解説されていておすすめです。
こちらの書籍によると、大学生の野球選手の6割がいわゆる野球腰に悩まされているという衝撃的な調査結果が記されています。
運動経験が無い人の3.8倍も腰痛持ちが多いそうで、これは他の競技を圧倒しています。
特に野球腰のきっかけになりやすいのが小中学生の時期の無理な回旋運動が原因ということで、誤ったフォームでのスイングの繰り返しやスローイングの繰り返しが問題であると述べられています。
では、なぜ誤ったフォームでのスイングを繰り返してしまうのか?
これは馬見塚尚孝氏の『高校球児なら知っておきたい野球医学』を見てみましょう。
こちらの書籍によると、腰椎疲労骨折になりやすい練習メニューとして「ロングティー」が挙げられています。
ロングティーでは「なるべくに飛ばすように」と指導を受けることが多いため、繰り返しこの練習を行うことによって腰椎に回旋ストレスがかかります。それが腰椎疲労骨折を誘発させるのです。
『高校球児なら知っておきたい野球医学』P52より
というように、『野球 肩・ひじ・腰の鍛え方・治し方』で言及されているようにやはり、無理な回旋運動が原因となるようです。
そして、誤ったフォームというのは、この場合「遠くへ飛ばそう」としていつもと違ったスイングをしてしまうことを指していると言えるでしょう。
平沢選手のロングティーバッティングにカメラが接近【広報カメラ】
また、『野球 肩・ひじ・腰の鍛え方・治し方』では触れられていませんが、『高校球児なら知っておきたい野球医学』では、重すぎるバットを使用することの怖さが記されています。
重すぎるバットを使用することで、フォロースルーを止めることができず、腰が大きく捻られてしまう「オーバースイング」という状態になってしまうと言うのです。
オーバースイングもまた誤ったフォームだと言えるでしょう。
このオーバースイングを繰り返すと腰椎の障害リスクを増やし、パフォーマンスを低下させる恐れがあると馬見塚氏は述べています。
また、馬見塚氏は腰椎を痛めにくいバッティングフォームについても触れていますが、これは私が以前記事にしたものと同じ内容なので、そちらをご覧いただけたらと思います。
さらに、馬見塚氏は
まず、いつも使っているバットで打撃動作の習得とスイングスピードの向上を達成する。その後に、少しだけ重いバットで練習することが望まれます。
『高校球児なら知っておきたい野球医学』P54より
と、マスコットバットではなく、少しだけ重いバットにすべきだと述べています。
たとえば普段650gのバットを使用しているのであれば、700gにするといった形での練習を勧めているということですね。
以上、二つの書籍を参考にすると、要するに、フォームを崩してしまうような身の丈に合わないマスコットバットでのスイングやロングティーはかなり危険ということになります。
身体の出来上がった大人ならまだしも、小中学生(私は高校生もだと思いますが…)は特に危険ということです。
〇では、おすすめのスイング練習は?
ということで、高校野球では1000スイングなどのノルマが課されていることを紹介しましたが、それらの練習は身体が出来上がっていない小中学生にはかなり危険な練習であるということがお分かりいただけたのではないでしょうか?
小中学生は身体が出来上がっていないだけではなく、正しいスイングが身についていないこともありますからね。
ですから、1000は無いとしても小中学生にマスコットバットを使用しての300スイングなどの練習は避けるべきだと思います。
※個人的には高校生でも危険だと思うのですが…
では、どのような練習をすべきか?
私は軽いバット、普通の重さのバットを使用して素振りを行うべきだと思います。
軽いバットとして中学生におすすめなのが「ノックバット」です。
ノックバットは600g以下の場合が多く、しかも長さが90cmほどあるので、スイングの軌道を習得するのに最適だと感じています。
※小学生だと長すぎて結局「オーバースイング」になってしまうかもしれません。注意してください。
また、グリップテープを巻く必要も無いので経済的でもあります。
このノックバットを使用して、素振りをしましょう。
特におすすめなのが、ノックバットを使用しての宮川理論のスイング練習です。
だいぶ軽く振っているように見えますが、このくらい力まずに「練習は練習」の意識でスイングしましょう。
宮川理論についてはこちらをどうぞ。
また、ロングティー自体も私は絶対に行ってはいけない練習とは考えてはいません。
通常のボールで行う場合は球数をある程度抑え、指導者がしっかりとついて行うのが良いと思います。
ただし、マスコットバットで行うことはおすすめしません。
できれば普通の重さの木製バットか金属バット、ノックバットで行いましょう。
数多くこなしたい場合は腰に負担が少ないテニスボールで行うと良いと思います。
このロングティーの場合も素振りと同じように脱力して行うことをおすすめします。
また、マスコットバットを全否定もしません。
マスコットバットで腰を捻る動きを数多くすることは非常にリスクがあることは分かっていただけたと思います。
逆に考えると、腰を捻らない練習をするのであれば、使い道があります。
私は「縦振り」と呼んでいるのですが、剣道の面のような動作を繰り返す練習はリストが強くなりますし、バットの重さに慣れるのでおすすめです。
↑こちらの記事もあわせてご覧ください。
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