大谷翔平選手もクリケットバットで練習!
クリケットバットを野球の練習に使用することは有効なのか検証します!!
〇野球とクリケットは全く違うスポーツである!
大谷選手のクリケットバットの練習が話題になっていました.。
ですが、安易にクリケット最高ともっていっていいのでしょうか?
以前から私は強調させてもらっていますが、「ボールの軌道に入るスイングこそが最高のスイング」であると述べさせてもらっています。
↑こちらの記事もご覧ください。宮川理論で言うところの「無限のレベルスイング」ですね。
クリケットもボールを打つスポーツですから、クリケットにはクリケットのボールの軌道に入る最高のスイングがあるはずです。
その点をふまえてクリケットのピッチャー(正確にはボウラー)が投じるボールの軌道を見てもらいたいです。
クリケットは必ずワンバウンドさせなければならない+ピッチャーは肘を伸ばした極端なオーバースローで投じなければいけないという制約があります。
もちろんその中でも微妙に横の変化をつけてくることもありますが、二つの制約のおかげで野球よりもボールの横の変化は少ないです。
となると、クリケットのピッチャーが投じた「ボールの軌道に入るスイング」とはどのようなスイングになるのでしょうか?
多くの場合、縦方向のスイングがボールの軌道に入りやすく、空振りが少ないスイングになります。
クリケットは野球以上に空振りを恐れるスポーツ(場合によっては空振り1球でそのバッターはその試合で打席に立てなくなります)なので、とにかくコンタクト率を上げるためには縦に振ることが大事になってきます。
さて、野球と異なる部分も多く感じませんか?
ということで、クリケットは野球以上にゴロを打つことが有効なスポーツになります。
野球でいうホームランが6点、エンタイトル2ベースが4点入るのでそちらを狙うスポーツかと思いきや、先に述べたように、アウトになるとその試合はもう打席に立てないというルールがあるため、ホームラン=フライを狙うのはリスクが野球以上に大きくなるそうです。
このため、クリケットの攻撃側の戦略は相手のいない場所を狙ってゴロを打つことが基本になります。
そのために縦方向のスイングでボールに軌道を入れるわけです。
また、野球と大きく異なるのが、360度どこに打っても良いこともあげられます。
横のスイング(といっていいのか分かりませんが)だと後方に狙って打つことは難しいです。
野球の試合で狙ってバックネットにファウルを打つことはなかなか難しいのはイメージがわくと思います。
しかし、縦方向のスイングであれば狙って後方に打つことが可能です。
クリケットのスイングの多くは、遠くに飛ばすことや、フライを上げることを狙っているわけではなく、どちらかというとゴロを狙っているということを書きました。
なぜこんなことを書いているかというと、
大谷選手がやっている(他にもバッティング指導ですすめている方がいる)からいいに決まっているんじゃないか?
とかホームランバッター目指すならクリケットじなないか?
とか縦振りがいいんじゃないか?
とかクリケットと野球のバッティングは最高の相性なのではないか?
などと安易に結びつけるのは違うと思うからです。
何かを取り入れるということは副作用がある、もしくは知らずに取り入れることで副作用が出るわけで、知らないことは怖いということなのです。
そもそも大谷選手は何を目的にクリケットを練習に取り入れたのか、クリケットを練習に取り入れるとどのような効果(副作用も含めて)があるのかを考える必要があります。
野球とクリケットで異なる部分はまだまだあります。
というか異なる部分があるのは違うスポーツなので当たり前なのですが、バッティングに関わる重要な部分をお伝えしていきます。
クリケットのコートは直径100mほどなのだそうです。
こう聞くと広いと感じるかもしれませんが、中央にバッティングをするスペースがあるのでコート外まで打球を飛ばすとしても60mほどしかありません。
ボールは野球の硬球とあまり変わらないらしい(直接触ったことがなくてごめんなさい汗)ので、簡単に言うと野球ぐらいのフルスイングしなくても野球でいうところのホームラン(6と言います)が出るようです。
したがってクリケットの動画を見るとテイクバックは非常に小さく、フォロースルーもかなり小さいです。
さらに言うと、前回お話したように転がす方がリスクが少ないことなどと合わせると、バットへ伝わる力を最大化しなくとも構わなくなります。
この辺、日本語というか専門用語を間違えると界隈の方からつっこまれるので嫌いなので敢えて適当に書きますが、肩のラインからバットまで一直線になるのが何かの力最大になるのですが、クリケットはそこまでする必要がありません。
写真のように、肩のラインとバットのラインがズレて打つケースも非常に多いです。
ここのところは大きく異なる部分で、かつ重要な部分だと考えています。
実は今回この一連の記事を書こうと考えた一番の理由はこの部分で、クリケットバット(または類似するもの)を用いた練習をしている動画をいくつか見ましたが、このラインがけっこうズレてしまっていました。
〇クリケットバットを野球の練習に利用することの効果!
では、クリケットバットは野球の練習に有効ではないのかというとそんなことはないと
思います。
野球とクリケットが全く異なるスポーツであるということをふまえた上、そして野球のバットとクリケットバットの特性の違いを理解した上であればクリケットバットを野球の練習に用いることは有効な場合があると思います。
といっても、クリケットバットを実際にお持ちの方は多くないと思いますので、クリケットバットに特性が類似する物全般ということで話を進めていきたいと思います。
大きくは二つあると思っているのですが、一つ目は「面で打つ意識づけ」のためです。
私はテニスラケットを用いて面で打つ練習をさせることがあるのですが、意外と野球経験者ほどできません。
ダウンスイング傾向がある選手は初めは大体切った打球がいきます。
ラケットだと面が大きすぎるのですが、クリケットバットだと面の大きさも適度で、点ではなく面で打つ意識づけにはとても良いと思います。
おそらく大谷翔平選手もこの意識づけのために利用したのだと思われます。
一部が面になっている類似したトレーニングバットもありますので、それを用いるのもいいかもしれません(ちなみに私は一度購入したことがありますが、普通の木製バットよりも高く、体育倉庫のテニスラケットで十分だと感じて以後購入していません)。
フルスイングで行うというよりは軽くスイングして確認作業を行う意識でいいと思います。
ここで注意が必要なのは、「ではバットの時はどこで打っているの?」ということです。
インパクトの時にどこで打っているのかは分かります。
そこから逆戻しして、構えた時にどこに面している部分がボールに当たるのがベターなのでしょうか?
動画は失敗例です。
構えた際に投手側にある面で打つということはトップハンドをこねてしまっていることになります。
要は極端なダウンスイングです。
本来、自分が見ている面の裏側の面で打つことが正しいレベルスイングへの近道になります。
宮川理論では「裏の芯」とか「裏芯」などと呼んでいます。
この点を抑えないでクリケットバットを取り入れてもあまり野球にはつながらないと思われます。
もう一つ有効であろうと考えられるものが、「縦に振る意識づけのため」です。
クリケットの競技の特性上、さらにクリケットバットの特性上、野球よりも縦振りの意識をもって練習はしやすいと考えます。
要はバレルバットなどと同じような用途で用いるということですね。
ただ、こちらのページでは繰り返しになるのですが、そもそもスイングに横も縦もないと思っているんですね。
それはこちらのJBS武蔵さんの動画を見ていただけたらもうそれで終わりかと思います。
肩のラインと平行になるスイングが最適解で、低めをスイングしたら縦に見えるという、それだけです。
それ以外は物理法則から外れますよね。
宮川理論では基本的にこのような肩と平行になるスイングをレベルスイングとしています。
ただ、バッティングを指導していると、一般的にはこの肩のラインよりもヘッドが立っている選手が多く(昔多かったダウンスイングの指導の影響だと思います)、縦に振る意識は絶対に必要だと感じています。
縦振りの意識があって初めてレベルスイングになるという感じですね。
ただし、もちろん注意点もあって、あまりに意識しすぎたり、誤ったインプット(肩のラインを考えずにただバットを縦にする)をしてしまったりすると今度はヘッドが下がりすぎる病を抱えることになります。
近年中学生でこの症状を抱える選手は激増しており、引っ張れなくなったり、高めの空振りが多くなってしまったりしています。
クリケットバットを利用する場合のみならず、縦にスイングする意識をつけさせたい場合も指導者は注意が必要です。
〇まとめ
クリケットバットを大谷選手のように野球の練習に取り入れることは、競技特性の違いやクリケットバットの特徴をしっかりと把握できていれば有効な可能性はあると考えます。
クリケットバット自体は高額な物になるので、類似商品を使用する方が多くなるのではないかと思いますが、基本的には何かを取り入れるということは副作用もあるのではないかという視点は必要不可欠になります。
野球ギアは数多く販売されていますので、クリケットバットに限らず、メリットとデメリットをしっかりと把握した上で使用するようにするべきではないでしょうか。
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