優秀な指導者の条件とは?
これまで優れた指導者の方々をたくさん見てきた私が考える、優秀な指導者の共通項をまとめてみました!
〇優秀な指導者とは?
これまでの人生で、様々な指導者の方々とお会いしてきました。
自分がプレーヤーだったときも本当にいろいろなタイプの指導者がいました。
指導者になってからもたくさんの指導者の方にお会いしました。
私自身は「優秀な指導者」にまでまだ至ってはいませんが、
「この人は本当にすばらしい指導者だ」
「この人のような指導者になりたい」
と思うような優れた指導者の方にはたくさん会うことができました。
ただ、残念ながら逆に
「こんな指導者にはなりたくない」
「こんな指導者のもとで野球はやりたくない」
と思ってしまうような方がいたことも事実です。
今回の記事では、私が尊敬するような指導者の方や逆にそうではない指導者の方の共通点を考え、優秀な指導者の条件とは何かをまとめてみたいと思います。
↑アフィリエイトはやっていませんが、大利さんの書籍も非常に参考になるのでぜひご覧ください。
〇優秀な指導者の七つの条件!
条件1、常に学び続けている
これが一番大切な条件だと考えています。
特に今の時代は進化が激しい時代となっています。
インターネットの普及によって、野球技術の解析も日々進んでいます。
新たな野球理論や技術、戦術がどんどん出現しています。
硬式野球はダウンスイングでボールの少し下を叩くことが推奨されていたのは過去の話。
フライボール革命の考え方も急速に広まりました。
すぐにそれさえも過去の話になるかもしれませんね。
こうした時代、自分の実績は全く関係ありません。
自身の経験だけに頼っている指導者はその経験が通用している一瞬はうまくいくかもしれませんが、技術論や指導法が進化していく中で変化できなければすぐに古い指導者になってしまいます。
そもそもプレーヤーに求められる資質と、指導者に求められる資質は全く異なるものです。
野球未経験の優秀な野球指導者だってたくさんいます。
逆もまたしかりです。
野球だけではなく、全てのスポーツ、スポーツに限らず指導者は常に学び続けなければ進化に置いていかれてしまいます。
進化についていけない指導者は、残念ながら進化についていけていないことにも気づくことができていないことが多いです。
進化についていけていないことに気がついている指導者は学ぶし、時間的な制約等で学ぶことができないとしても、「あの先生に教わってくるといいよ」なんてことができます。
この条件は「変化に柔軟に対応できる」とも言えるかもしれませんね。
学び続けない指導者、自分の指導が完成していると思い込んでいる指導者の元で活動しなければいけない選手は不幸です。
技術的に優れたことを教わることができないだけならまだしも、「学ぶ姿勢」を学ぶことができないからです。
選手は指導者の姿勢を見て成長します。
指導者が学び続ける姿勢が無ければ、学び続ける選手は育ちません。
学び続けない選手も、これからの時代成長に限界がありますし、社会に出て通用もしません。
2020年に世界を、日本を襲ったコロナウイルスの影響で、学校は休校、部活動は活動停止を余儀なくされました。
しかし、そんな中でも学び続ける姿勢のある指導者はSNSやZoomなどを活用し、選手とコミュニケーションを取ったり、ミーティングを行ったり、自己研鑽をしたりしていました。
一方で学ぶ姿勢のない指導者は「Zoomなんて使い方が分からない」と放棄し、結果として選手に何もできなかったり、隠れて練習をしたりという様子が見られました。
こうした傾向は今後もっともっと顕著になっていくと考えられます。
条件2、聞く姿勢がある
これは1と重なる部分があるかもしれません。
優秀な指導者は人に聞くことを恐れないと感じています。
気になることがあれば「いつでも」「誰にでも」聞ける人が優秀な指導者です。
↑こちらの記事もぜひご覧ください。
練習試合などをしていても感じるのは、優れた指導者として有名な方ほど私のようなごく普通の指導者にもいろいろな質問をしてくださいます。
「バッティング指導はどのようになさっているんですか?」
「なぜあそこで前進守備にしなかったのですか?」
「オフシーズンはどんな練習をしていますか?」
など、質問は様々ですが、私よりも知識があるに決まっている方ほど熱心に聞かれる気がします。
逆に、「おいおいこのチーム大丈夫か」と思ってしまうようなチームの指導者の方ほど、申し訳ないですが、聞きに来ることはありません。
そういうところが積み重なって、指導者としての能力の差につながっていくのだと思います。
また、先程の話とも重なりますが、指導者が聞くことができるチームの選手も聞くことに抵抗が無いことが多いです。
選手はやはり指導者の背中を見ています。
もちろん、聞いたことを全て鵜呑みにしろということではありません。
参考になればそのまま採用しても良いでしょうし、聞いてみて自分には合わないと思ったら記憶にとどめておくだけで良いと思います。
優秀な指導者ほど、その取捨選択も上手だと感じます。
たくさん聞いて全てを受け入れようとするのもまた無理がありますよね。
条件3、勝利至上主義ではなく、選手の将来を見据えて指導を行っている
目先の勝利ばかりにこだわる「勝利至上主義」では選手の人間性は育ちません。
当然、カテゴリーによっては勝利を目指して一生懸命にがんばっていくことでしょう。
しかし、スポーツ、野球を通じて人間的な成長を遂げることができなければスポーツに打ち込む意味がありません。
過剰に「人間形成」と結びつけて、遅刻した選手をずっと走らせているなんて指導は好きではありませんが、「勝てば何をしてもいい」という指導はもはや選手にとって害しかないと思います。
要するに、スポーツマンシップを健全に指導できる指導者が優秀な指導者だと私は考えています。
↑ スポーツマンシップについては詳しくはこちらをご覧ください。
大会である程度の成績を残していても、次のステージで選手が活躍しないチームも多いです。
野球しかやってこなかったため、社会人になってから苦労するケースが目立つのも野球界の問題点です。
いくら大会で好成績を残していても、将来社会で活躍する人材を育てることができないのであれば優秀な指導者とは言えないと思います。
↑この条件についてはいろんな記事で述べさせてもらっていますので、こちらをご覧ください。
条件4、選手のミスを許容できる
練習試合や公式戦を見ていると、選手よりも先に指導者が我慢できなくなっているシーンをよく見ます。
「なんでそんなボールも捕れないんだよ!」
「なんで見逃すんだ!!」
「お前のミスのせいで点が入っただろ!!」
なんていう光景見たことありませんか?
↑試合での声かけはこちらの記事もどうぞ。
当たり前ですが、それでは選手は本来の力を発揮できません。
プレッシャーをかけることでメンタルを鍛えるなんてことを言う方もいますが、結局悪い体育会系の見本を作るだけです。
指導者の顔色を見てプレーをするイエスマンしか育ちません。
プレーのアドバイスをするなということではありません。
選手の力を引き出す声かけを指導者はできなければいけません。
そのためには、できるようになるまで同じことを何回でも同じトーンで言うのだと前橋育英の荒井先生もおっしゃっていましたね。
優秀な指導者は我慢ができます。
選手のミスに寛容です。
選手のミスに寛容(適当なことをやっているのを流すこととはまた異なります)だと挑戦する雰囲気が生まれます。
チーム全体の挑戦する雰囲気はチームを強くします。
↑そのあたりの理屈はこちらをご覧ください。
条件5、できない選手にも根気強く指導できる
ミスに寛容なことにも関連しますが、優秀な指導者ほど我慢強いです。
優秀な指導者は選手を大切にします。
たとえ何か苦手なことがある選手でも見捨てたりしません。
根気強く何度でも丁寧に教えることができます。
それに対し、「ちょっとあの指導者は…」と感じてしまうような指導者はできない選手を見捨てます。
人数が多いのになかなか芳しい成績を残すことができていないチームや、部員がどんどん減少していくようなチームの指導者によくある傾向です。
集まった選手のうち、できる選手に目をかけます。
できない選手にも初めは指導するのですが、途中で見切りをつけます。
↑こちらの記事もあわせてご覧ください。
そうするとどういうことが起こるか?
まず一つは、
本来もう少し我慢強く指導すれば伸びるはずだった選手の芽が出ません。
もしくは芽が出ても気がつきません。
優秀な指導者のもとでは、入学時は下手でも、丁寧な指導の結果、素質が開花してレギュラーになれる選手、レギュラーをおびやかす選手が出てきますが、こうした指導者の元ではありませんので、チームもなかなか強くなりません。
見切られた選手は不満分子になり、辞めてしまうか、辞めなくてもチームに良い影響が無いことが多くなってしまいます。
こんな指導者のもとで活動する選手は本当にかわいそうです。
↑こちらの記事もご覧ください。
もう一つは目をかけている選手でも指導者ができない選手に見切りをつける様子を間近で見ていたら、モチベーションが下がる選手もいます。
仲の良い友人が粗末な扱いを受けていたらよくは思わないでしょう。
また、「次は自分かもしれない」と変なプレッシャーがかかることもあります。
それは当然プレーにも影響が出ますし、成長の足かせになります。
逆に天狗になる選手もいます。
自分は選ばれた人間なのだと勘違いし、指導者が見切った選手をバカにするような選手も出てきます。
こうしてクソ野郎が作られます。
どのパターンにせよ、根気強く指導できない指導者はチームには悪影響しかありません。
優れた指導者は選手を大切にします。
どんな選手であっても公正・公平に指導するので、選手の技術的な成長も望めますし、そんな指導者のもと、人間的な成長も望むことができます。
条件3に書きましたが、たとえ結果的にチームが勝てなくとも、結果的にその個人がレギュラーになれなくとも、次のステージ、人生で活躍できる人間を育てることができるのが優秀な指導者です。
条件6、人を上手に使うことができる
優秀な指導者は人に任せることができます。
言い方を変えると人を上手に使うことができます。
ダメな指導者は人に任せず、自分だけでやろうとします。
もちろんどんな指導者でも、
「あの選手(コーチ)に任せたら失敗するかもしれないな」
と感じることはあります。
優秀な指導者はその失敗を見越した上で、その失敗がその人の成長の糧となると思い、敢えて手放すのです。
たとえば、選手に練習メニューを考えさせる。
優秀な指導者はとにかくいろんなことを考えさせ、挑戦させます。
失敗したら、なぜうまくいかなかったのかを考えさせ、さらに良くするための方策をともに考えます。
ダメな指導者は「どうせうまくいくはずがない」と思い、やらせません。
もしくは、やらせてはみるものの、失敗すると、「やっぱりできないのか」と見切りをつけてしまいます。
これは条件5の「選手のミスを許容できる」と同じですね。
優秀な指導者のもとで、選手はおおいに挑戦し、おおいに失敗します。
その経験を活かし、少しずつ成長していくのです。
また、優秀な指導者はコーチ等の他の指導者にも任せることができます。
中学野球部だと複数指導者(管理的な顧問ではなく)がいるのは珍しいかもしれません。
その場合は普段の指導は一人で行うしかありませんが、複数指導者がいるにも関わらず、他の指導者の力を活かしきれない人もいます。
私が副顧問をしていた際、一緒にやっていた尊敬する主顧問の方は「ピッチング」と「バッティング」は基本的には全て任せてくださいました。
一方で、主顧問の先生が私の力を全く借りようとせず、名ばかり副顧問になってしまったこともあります。
結果が出たのは前者の指導者の方です。
優秀な指導者は、他の指導者の適性を見ながら、任せることができる人です。
それができるのは、「自分にまだ足りない部分がある」という謙虚さと、他の指導者の適性を見抜く力があるからだと思います。
多くのコーチがいる場合、誰をどこに配置するかも非常に重要です。
優秀な指導者はその配分にも長けていると感じます。
選手、指導者に任せることができる以外にも、保護者や外部の人から力を借りることができるのも優秀な指導者の特徴です。
保護者を全く部に立ち入らせない人もいます。
もちろん、過去に理不尽なクレームやトラブルがあったからなど、理由があるからだと思いますが、優秀な指導者は積極的に保護者の力も借ります。
グラウンド施設の整備の協力を依頼したり、審判の手配をしたり、本当に上手です。
そして、協力を仰ぐことが上手な上に、線引きも上手です。
保護者や地域の方に協力をしてもらっているうちに、一部の特定の保護者の人とズブズブになってしまう指導者もいます。
そうなってしまうとその他の保護者に不信感をもたれてしまいますし、選手にも悪影響が出てしまうこともあります。
協力は仰ぐけれども、一線は画すという難しい匙加減が求められます。
優秀な指導者はその匙加減が上手です。
他には、チーム外部の人から教えを請うこと、支援してもらうことにも躊躇がありません。
現在では個人の野球塾を開いていたり、アスリートのスポーツ全般の指導を支援してくれたりする方がたくさんいます。
また、技術面だけではなく、栄養指導、メンタルトレーニング、時には「生き方」など様々な専門家がいますね。
そういった方々を講師に招いて、自分以外の指導を選手に与えることも惜しみません。
※資金面の問題で難しいことはありますが…。資金面の問題ではなく、プライドの問題で門戸を開かない指導者もたくさんいます。
優秀な指導者は人に任せ、人の力を頼ることができます。
条件7、技術指導もそれなりにできる
従来、一番指導者に求められていたのはこれだと思います。
もちろん、今でも技術指導力は必要です。
しかしながら、インターネットの普及により、指導者以外から野球を学ぶことが比較的容易になっています。
また、条件6で述べたようにゼネラリストではなく、その道のスペシャリストが数多く存在します。
こういった状況はさらに加速すると思われます。
たとえば週末ごとに様々な講師の方を招いてバッティング、守備、ピッチングなどを指導してもらい、平日は教わったドリル練習を反復する。
指導者は教わったポイントを見て、選手に助言をしたり、動画を撮影し、選手内で確認させたりする。
どうしても分からない場合は動画指導を依頼する。
なんてことができれば、指導者の指導技術の差は埋めることができます。
もちろん、毎週講師を依頼するなんてことは金銭的に難しいことが多いですが、近隣に守備の指導が上手な指導者、バッティング指導に定評がある指導者、様々いると思います。
そういったチームと合同練習を行ったっていいわけです。
こんな時代になってくると、指導技術よりも条件1~6の方が指導者に求められる資質になってくると私は感じています。
ただし、もちろん条件1~6を満たした指導者同士であれば、技術指導の力もあるに越したことはありません。
また、はじめから「技術指導はできなくてもいいや」という姿勢が正しいわけでもないと思います。
求められる資質としては順番が変わってきているのではないかということです。
↑当然、私も技術指導ができるように努力はしています。
ということで、優秀な指導者の七つの条件についてまとめてみました。
私自身ができていることをまとめたわけではなく、私がこれまでにお会いした指導者の方々の共通項をまとめてみたものになります。
もちろん、これ以外にも優秀な指導者の条件はあると思うのですが、参考になれば幸いです。
私自身もこれらの条件を満たすことができる指導者を目指してこれからも努力していきたいと思います。
関連記事です。