「正しいスイング」とは何だと思いますか?
ダウンスイング、レベルスイング、アッパースイング、一体どれが正しいのでしょうか?
考えてみましょう!
〇「正しいスイング軌道」とは?
JBS武蔵さんが非常におもしろい動画をアップしてくださいました。
正しいスイング軌道はどれだクイズです。
みなさんにもぜひ動画を見て、考えてもらえたらと思います。
さて、みなさんはどんなスイングが「正しいスイング」だと考えますか?
私は小中高から大学まで野球をプレーしましたが、高校までずっと「ダウンスイングこそ正しい」と教わってきました。
「叩け!」
「転がせば何かある!」
などとしょっちゅう言われていましたが、これは当時は別に特別なことではなく、どこのチームでも似たような指導がされていたのではないでしょうか?
私は幸いなこと?に足が遅かったので「転がせば何かある」という発想はありませんでした。
その結果、一人だけ極端なダウンスイングにはなりませんでしたが、周りはみんなかなりのダウンスイングでした。
近年はフライボール革命の考えが広まる、ネット環境が整い優れたバッティング指導が誰でも学べる、など様々な要因から、ダウンスイングは否定されることが増えてきたと感じています。
こちらのJBS武蔵さんの動画へのコメントを見ても、さすがに①が良いという人は確認できなかったです。
ではどんなスイングが「正しいスイング」なのでしょうか?
〇「正しいスイング」とは何か?
ここまでお話してきてなんなのですが、「正しいスイング」というとなかなか語弊や誤解が生まれそうな気がします。
JBS武蔵さんの動画の「正しいスイング」、みなさんが求めるところの「正しいスイング」というのは、おそらく「遠くに飛ばせるスイング」、「強い打球を飛ばせるスイング」、「打率が高くなるスイング」ということではないでしょうか?
このスイングを考えるには、「バレルゾーン」のことを知る必要があります。
「バレルゾーン」とは
膨大な打球データが積み重なることにより、メジャーリーグでは「バレル」という新指標も登場した。そのゾーンに入った打球は打率5割、長打率1.500を超えるという打球速度と打球角度の組み合わせであり、実際に16年にバレルゾーンに入った打球の成績は、打率8割2分2厘、長打率2.386を超えていた。
打球がバレルとなるには、少なくとも打球速度が158キロ以上必要とされる。その際は26〜30度の範囲のみバレルとなるが、打球速度が上がる毎に角度の範囲は広がっていく。閾値(しきいち:一線を越える値)である187キロに到達すると、なんと8〜50度の範囲でバレルとなる。
バレルとなった打球は大半が長打になるため、打者はバレルの打球を増やす努力をするべきだ。先ほど打球速度が速いと長打率が高くなっていた理由は、バレルゾーンに入る範囲が広がることが大きく関わっており、メジャーの打者たちはこのような打球角度を意識しながら打球速度を高める努力をしている。
https://www.baseballgeeks.jp/batting/【打撃特集2】/ より
バレルゾーンの説明図【出典『MLB.com』】
ということで、このバレルゾーンに入るスイングを求めることが、「正しいスイング」に近づくことになるでしょう。
打球速度が158キロだとか打率.500だとかはプロレベルの話なのでひとまず置いておきましょう。
正確な意味では打球速度が158キロに達しなければバレルゾーンには入りませんが、この研究から、ある程度の角度で打ち出さないと長打にはなりにくいことが分かります。
このある程度の角度で打ち出すことに取り組んでいかなければ、打球速度158キロの打球を打てるようになってもバレルゾーンには入りにくいということになるわけです。
ということはJBS武蔵さんの動画でいうところの①~②ではこの角度はつきづらいですよね。
③もなかなか難しいかもしれません。
ただし、ここから持論になります。
ダウンスイングが必ずしも長打を打つ、もしくは打率を上げるのに適したスイングではないのではないかと広まったことは良いことだと思います。
しかしながら、
「だから正しいスイングはレベルスイングだ!」
「いやいや、アッパースイングだ!」
という論争もまた微妙に感じています。
私自身は長打が打てる、打率が上がるスイングはレベルスイングだと考えています。
しかしながらこの私が考えるレベルスイングは「ボールの軌道にスイング軌道が入るスイング」=「バレルゾーンに入りやすいスイング」のことであって、一般的な地面と平行になるレベルスイングではありません。
その理想のスイング軌道を考える際に大切なことは、先にスイングありきではないということです。
先にピッチャーが投じるボールがあって、正しいスイング軌道があります。
先にスイングありきだと、正しいスイング軌道はダウンスイングだ、アッパースイングだ、(一般的な)レベルスイングだという議論になってしまいます。
スタンドティーばっかり練習しているとあるあるなのですが、ボールの軌道を点で考えてしまいます。
↑おすすめはしていますが、注意が必要ということです。
ピッチャーの投じるボールの軌道は線です。
そしてその線はピッチャーの身長、球速、回転数、変化量、高低、コースなど様々な要素が絡んで、無限に近い種類があるわけです。
その無限に近い線にいかに確率高くスイングの軌道を入れるかが重要です。
そういった意味では、JBS武蔵さんの動画のスイングは全て正解、全て不正解という可能性もあります。
身長2mの投手がオーバースローから投じた70kmのど真ん中のボールと、超サブマリンの投手が投じた150kmのど真ん中のボール。
あり得ないような極端な例ですが、同じくホームベース上ではど真ん中でも求められるスイングが異なると思いませんか?
一般的な投手の真ん中に来たボールを遠くに飛ばそうと思ったら、バレルゾーンに入れようと思ったら、④のような軌道になるのではないかと思いますが、それは先にスイングありき。
ピッチャーの投じるボールの想定無くして「正しいスイング」など存在しないのです。
これはバッティングを考える上ではものすごく大切なことになると思います。
レベルスイングについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
〇レベルスイングの考えを常に練習で意識する!
そうなると指導者にとって大切なことは、バッターのスイングだけ見てはいけないということになります。
たとえば素振りやスタンドティーをしていて、指導者が「正しいと思うスイング」をしていたとしても、その選手が想定しているボールに軌道が入らなければ(軌道に入る)レベルスイングではありません。
選手に、常にどんなボールなのかを想定させる必要があります。
選手は素振りであっても常にピッチャーのボールを想定しなければあまり意味のない練習になってしまうのです。
前から来たボールを打つ際も常に同じスイングではなく、1球1球そのボールの軌道に入るスイングを意識して練習するようにしましょう。
その導入としては、以前紹介したラケットバッティングがおすすめです。
ぜひ取り入れてみてください。
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