中学校野球部!絶対に強くなるヒント集

中学野球や部活動の経営をしている方々のお役に立てるように、野球技術のみではなく、組織づくりのことなど、野球部の経営に役立つ情報をどんどん発信していきます。また、野球小僧を育てたい親御さんに役立つ情報も掲載していきます。宮川理論の公認指導員です。

部活動ガイドラインが導入され、現場はどう変わったか?

部活動ガイドラインが導入された結果、現場はどのように変化したのか!?

実際に遵守している私が感じていること、結果をまとめてみました!

 

〇部活動ガイドラインとは?

スポーツ庁は2018年3月に部活動ガイドラインを定め、通達を出しました。

簡単に要点をまとめると、「週に2日以上(土日どちら1日含む)の休養日を設け、平日2時間以内、土日どちらか3時間以内に活動を規制する」という内容になっています。

 

私の勤務校では、ガイドラインが無かった時期に入部した生徒や保護者から理解を得るために、緩やかに移行していくこととし、今年度から完全実施となりました。

活動時間、日数が変わり、様々な部分で変化が出ています。

部活動ガイドライン(完全週休2日、平日2時間、休日3時間の活動)を遵守して1年ほど経ちましたので、どのような影響があったか今回の記事でまとめていきたいと思います。

この投稿はあくまでも中間報告であり、ガイドラインの批判ではありません。

今後どの学校でも完全実施されることになるでしょうから、参考にしていただけたらと思います。

 

〇選手の技術はどう変化したか?

まず、選手の技術がどうなったかです。

結論から申し上げますと、分かりません。

大会での成績はあまり変わりませんが、大会成績は相対的な影響がありますし、代替わりしている関係もあり、よく分かりません(現時点では、私の市では完全に遵守しているのは私の中学校だけのようです)。

練習試合は年間で30試合ほど減りましたが、もともと鬼のように練習をしていたわけではないので、練習試合が減った影響で技術が落ちたのかどうかはなかなか判断がつきません。
ただ練習時間が減り、指導者が練習メニューをこれまで以上に精査するようになりましたし、効率を上げる努力もしてきました。

また、選手がこれまで以上に自主練習をするようになりました。

そのあたりを踏まえると、技術的には大幅に落ちたり上がったりということはなく、あまり変わっていないのかなという気もします。

ただし、試合の中でしか養いにくい部分はなかなかうまくいかないケースが増えてきている気はします。

これも代替わりしているので、どこまでガイドラインの影響かは分かりませんが…。

また、当然ですが、指導者が何の工夫もせず、選手も自主練習しなければ技術的には下降するものと考えられます。

 

〇選手の自主性はどう変化したか?

前項では技術面の話をさせていただきました。

今回はそれに絡む部分もありますが、「自主性」の変化についてお話したいと思います。

私のチームではもともと部活内委員会を取り入れるなど、自主性を重んじてはいましたが、単純に練習量が減ったことで、練習量を補うべく、自主性がさらに育ったように感じています。

たとえば、戦術面で反復練習する数が減ったため、それを補う工夫として、広報委員会発行の部活通信(私が発行している物とはまた別の物になります)にケースに応じた野手の動きを掲載するようになりました。

始めはアドバイスしたものの、最近はほぼ自分たちで考えて発行しています。

また、活動時間内の意識も高まったように感じています。

練習委員会を中心に自分たちで質の高い練習をしなければという意識を感じます。

ただし、これはまた代による個性かもしれませんので分からない部分もあります。

活動日数、時間が減ったことで、自主練習の時間も明らかに増えました。

個別の自主練習の他に、選手同士で集まって課題を克服するような練習もしているようです。

このように自主性は育っているように感じますが、ガイドラインによって活動が減ったら自主性が育つわけではないと思います。

自主性が育つような指導の工夫、モチベーションを高める工夫が無ければ、正直活動時間が減るだけで終わるような気がしています。

この辺りは過去の記事も参考にしていただけたらと思います。 

www.taguchizu.net

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〇選手の健康面はどうなったのか?

この項では選手の健康についてお話したいと思います。

活動が減り、意外なことに選手の故障が増えたように感じています。

疲れているように見える選手は減りました。

「練習がしたい」と言う選手も増えました。

しかしながら肩肘を中心に故障をする選手が増えてしまっています(これまた代替わりによる個人差の影響もあると思われますが…)。

これは私の指導に問題があったと考えています。

私はガイドラインを徹底遵守する以前から選手が肩肘を壊さないように、投手と捕手のイニング制限をしたり、野手も投げ過ぎを防止するためにノースローデーを作ったりしていました。

もちろんガイドライン遵守後も継続して選手の健康を第一に考えてやっていましたが、前の項で書いたように選手の自主練習がかなり増えました。

これ自体は強制しているわけではなく、選手が進んでやっているわけですから悪いことではありません。

しかし、どうもこの自主練習で投げ込みなどを行っていたようなのです。

以前は部活動で疲れているためにそこまで自主練習を行っていなかったのが、余力が出たために自主練習を熱心にするようになりました。

その自主練習での投球数は私が把握できませんので、これまでには無い投球数を投げてしまっていたり、こちらが意図しない連投になってしまったりしてしまったのです。

これは8月くらいに気づき、ミーティングで指導というか、確認をしたため、今はほとんど無くなりました。
このことは悪かったことかと言われれば、幸い重大な故障は出ませんでしたので言えることなのですが、結果としては選手と私の成長に繋がる出来事だったと考えています。

これまで故障が少なかったのは私が「管理」したからです。

もちろんまだ中学生ですからある程度の管理は必要です。しかし、今回の件をきっかけに選手が「自分の身体は自分が守る」、「ただ練習をすれば良いというわけではない」という意識が生まれてきた(正直まだまだですが)のは良いことではないかと考えています。

肩肘の故障以外の健康面はかなり良い効果が出ていると感じています。

私のチームはもともと朝練習はしていませんでしたが、平日の活動時間が短くなったことで夜寝る時間も早まったようで、睡眠時間が伸びたと選手は言っています。

また、授業で見ていて疲れている選手も減ったように感じています。

 

 

〇指導者はどう変わったか?

野球部の私と主顧問に関して言えば、確実に指導が改善されたと感じています。

平日は一日30分活動時間が短くなったので、何を削るか、いかに効率を良くするかをかなり検討しました。

アップも必要最低限、バント練習を廃止し、グループに分けての練習を行うなど、指導法の改善が進みました。

また、練習時間の不足を補うために「質問ノート」の取り組みを始めるなど、練習以外の工夫も行いました。

手前味噌ですが、私の部だけで言えば指導レベルは上がったと感じています。

しかしながら、ガイドライン導入によって全ての部活動でこのような影響があるかは分かりません。

残念ながら指導の工夫が無く、単純に活動時間が減少しただけというチームも多いようです。

というか、知り得る範囲では

「指導の改善が見られない→結果が出なくなる→ガイドラインのせいにする→ガイドラインの抜け道を探るようになる」

ということも起こってしまっています。

具体的には、

・土日両方これまで通りの活動をしたいが為に、交流大会を増設する。

・自主的な活動として保護者が活動場所を抑える形にし、そこに指導者が指導しに行く。

・土日はクラブチームを名乗り活動する。ただし、メンバーも指導者も同じ。

といったことを行っているようです。

このあたりについては様々な方が記事にしていますので、そちらをご覧ください。

news.yahoo.co.jp

↑何でもかんでも「闇部活」としてしまうのもどうかとは思いますが、選手の健康よりも勝利を優先し、抜け道を探して活動しているところがあるのも事実かと思います。

 

後述しますが、こんなことをするのであればクラブチームとの連携を考えればいいのにと思います。

まあ、クラブチームが地域にないような部活動もありますが…。

結局、指導者というか、教員が部活動ガイドラインの趣旨を十分に理解していないのだと思います。

管理職や教育委員会の運用を見ていても、部活動ガイドラインの「手段の目的化」が起こっている部分も否めない気もします。

 

〇選手の生活面はどう変化したのか?

よく「選手に暇を与えるとろくなことをしない」、要するに悪さをすると言う方がいます。

部活動ガイドラインに反対する理由として述べられることも多いです。

しかしながらこんなことは全くありませんでした。

選手は空いた時間を、自主練習をしたり、塾に通ったり、友達と遊んだり、家族と出かけたりして過ごしているようです。

家庭学習の時間も少し増えたと言っています。

睡眠時間も増えたそうです。

宿題が終わらない、授業に集中できないということも減ったと感じています。

ゆとりが生まれ、疲労が溜まることが減ったのだと思います。
これも代替わりの影響もあるので分からない部分もありますが、これまで述べたことの中で一番大きな変化であり、この点については部活動ガイドラインの効果は大きいのではないかと感じています。

そもそも、「暇を与えるとろくなことをしない」という発想はいわゆるクソ野郎を育ててきた指導の発想です。

徹底的に厳しく管理することで悪さをする暇を与えないだけで、引退して暇になったらクソ野郎になるだけだと思います。

そりゃ暇があったら失敗する子もいるかもしれません。

というか多分いる。

そしたら叱ってあげたらいいじゃないですか。

失敗する機会=学ぶ機会を奪ってはいけないと思いませんか? 

www.taguchizu.net

  

〇クラブチームとの兼ね合いはどうすべきか?

これは結果と言って良いのか分かりませんが、休日の活動が減ったことで、もっと野球をやりたい選手がクラブチームに流れることが予想されています。

現在、私のチームから外部のクラブチームに流れた選手はいませんが、他の中学校ではいるそうですし、来年度以降、私の中学校でも活動が少ないことを理由に新入生がクラブチームに流れる可能性もあります。

これは致し方ないことだと考えています。

というか、今後の流れを考えるに、地域の力を活用していくべきだと思います。

部活動ガイドラインは選手の健康を考えたものですが、選手には個人差があり、余力があってもっともっとやりたいと考えてクラブチームを選択することは本人・保護者の方の自由です。

したがって、以前から述べているように中学校野球部とクラブチームの連携・協力を深めていくべきだと考えています。

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私はクラブチームとの兼部を認めています。 

その際にどちらが本籍なのか保護者の方にはっきりさせてもらっています。

それによって指導に差をつけたりしませんが、クラブチームが本籍の選手は試合の頭数には数えません。

週末たまたまクラブチームが休みの場合は参加させますが、基本的にはクラブチームの試合で活躍できるように支援するというスタンスです。

 

※これは伝え方によってはクラブチームに入らないように釘を刺す形になってしまいますが、本当にそういう意味ではなく、選手の健康面と互いのチームのことを考えての対応です。

「こちらを本籍にしないなら試合に出さねーからな」

というスタンスでは絶対にいけないと思います。

あくまでも選手がメインでがんばりたい方でがんばれるようにするための措置です。

 

そのために、クラブチームの指導者の方と連絡を密にとって、週末どのくらい投げたのかなど確認するようにしていました。

残念ながら、今のチームは近隣のクラブチームが潰れてしまい、兼部の選手はいなくなってしまいましたが…

ちなみに硬式クラブチームの選手も普通に受け入れています。

前任校では長く指導していたためけっこういましたが、現任校ではゼロです。 

ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う

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以上、部活動ガイドラインの導入によってどのようなことが起こったのかをまとめてみました。

あくまでも私の周りで起こったこと、私が感じたことになりますが、参考になれば幸いです。

個人的には選手の健康をあまりにも省みない指導者がいたり、様々な有形無形の圧力で苦しんでいる教員がいたりするのであればガイドラインは致し方ないのかなと思っています。

そのルールの中で最大限の努力をするだけだと思います。

しかしながら、一方で遵守し、一方で無制限に活動しているという状態になるのであれば、それは誰にとっても良くないことだと考えます。 

ホワイト部活動のすすめ―部活動改革で学校を変える

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