スピードボールを打つためにどのような練習をしていますか?
速球対策に特化した「鬼殺し」をぜひ取り入れてみてください!
〇選手権を勝ち上がるには速球対策!
今回お届けするのは速球対策のバッティングドリルです。
どうしても夏の選手権大会を勝ち上がるには120kmを優に超えるピッチャーを打ち崩す必要が出てきます。
各ブロック1人くらいは最速130km(アベレージではないです)投手がいる印象です。
私もこれまで選手権大会に向けて、ずっと速球対策について考えてきました。
↑過去にはこんな記事も書いていますので参考にしてみてください。
正直、実際にスピードボールを体験し、慣れるのが一番という気はしています。
これは元プロ野球選手の方などからも、「ある程度の速球は慣れれば打てる」というお話を伺ったことがあり、自分の経験からもそう思います(といっても、私は現役時代でも140kmは打てませんでしたが)。
ですが、慣らすための練習相手がいないんですよね。
自分のチームにそんな大エースがいればいいのですが、基本いません。
マシンがあればいいのですがほとんどの公立中学校にはそんなものありません。
そこで私が考案したのが今回紹介する「鬼殺し」というドリルです。
〇野球ドリルは処方箋
私はバッティングドリルは処方箋だと考えています。
その選手のその時の状態=症状に合わせてドリル=処方箋を提供する。
たとえば、実戦の中で着地が弱くなり、合わせて手打ちのようになってしまう選手には「一本足」というドリルを。
実戦の中で変化球にタイミングをずらされてしまったらもう対応できない選手には敢えて突っ込んだ状態で対応する練習「突っ込み」というドリルを。
このようにドリルを処方箋として与えています。
私のバッティング指導については以下の記事を見ていただけたらと思います。
ただ、処方箋って「副作用」があるじゃないですか。
バッティングドリルも副作用があると思うんですよね。
たとえば上で挙げた「突っ込み」なんかは、あくまでも変化球に泳いでしまったときの緊急対応の練習なんですが、これが上手くなってくると、0ストライクから上手く外野の前に落とすようなバッティングをしたり、突っ込む頻度が上がってしまったりします。
これが副作用です。
そんな副作用が出たら、今度は別のドリルで修正をするという繰り返しになるわけなのですが、今回紹介する「鬼殺し」はこの処方箋の中でも劇薬です。
取り扱い注意のドリルになりますのでご注意ください。
〇「鬼殺し」とは
「鬼殺し」は速球対策、それも速いストレートの特に高めの対策に特化したドリルになります。
映像は用意できなかったので、拙い絵で申し訳ございませんが、10m~15m程度の短い距離から投げ手はワンバウンドを投じます。
このワンバウンドは画像のように、必ずバッターのストライクゾーンを通過する時点でバウンドが上がってくるようにしてください。
↑こんな感じでボールが落下する局面で打たないようにしてください。
ですので緩いワンバウンドではなく、わりと速いボールを地面に叩きつけるように投げる必要があります。
どうして上がり際を打たせる必要があるのかというと、多くのバッターは高めのスピードボールをボールの下を振って空振りしてしまいます。
こちらはプロ野球の動画なのでスピードボールのレベルがちょっと違いますが、やはりバットが下から出てボールの下を空振りしています。
私は宮川理論の公認指導員ですが、宮川理論に限らず、最近投じられたボールに対して軌道が入るように下からバットを出す選手・指導が増えてきています。
120kmの速球でも140kmの速球でも、投手がマウンドの上からオーバースローで投げている限りは高めであっても絶対に上から下に向かってきているわけで、そのボールに対しても下から上に振り上げることは間違っていません。
しかし、多くの選手は常には130km超のボールを想定しては打っていないはずで(そうすると逆に普段練習試合や大会で当たるであろう110km程度のボールへの軌道が逆におかしくなると思います)、急にそれまで以上のスピードボールに対応しようとするとこの下から出る癖が空振りに繋がってしまいます。
そこで必要になるのが極端な練習です。
「鬼殺し」は普段は絶対にあり得ない軌道でボールが来ます。
地面から高めに来るわけですから叩かないといい打球は飛びません。
実際、「鬼殺し」を初めてやると空振りやこすったようなポップフライが多くなります。
「高めのスピードボールは叩くように打つ」
この意識づけ、イメージ作りにはぴったりの練習になります。
私のチームでは、この「鬼殺し」を選手権大会前に取り入れ、ブロックナンバー1投手からヒットを量産することができました(もちろん鬼殺しだけのおかげではありませんが)。
ただ、本当に注意して欲しいのはこのくらい極端な練習をして軌道がちょうど良くなる(イメージと実際の違い)というだけであって、実際にはボールはやっぱり上から下に来ているという点です。
王貞治氏が自分は下からバットが出ているのに「ダウンスイング」を推奨(自分はダウンスイングしているつもりだった)というのと同じ話です。
普段きれいなレベルスイングをしている選手だからこそ「鬼殺し」をして高めにおいてはダウンスイングを意識するくらいでちょうど良くなるだけであって、普段からダウンスイングをしている選手がこれをやったら、高めだろうが低めだろうが、もう大根切りみたいなスイングをしてしまう選手(緩い変化球や低めに対応できない)が誕生してしまうのでマジで注意してください。
ちなみになんですが、「鬼殺し」は私が考えた名称です。
最近、わざとインパクトがある名称を練習メニューにつけるようにしています。
「ワンバウンドバッティングをやろう!」
と言うよりも
「鬼殺しやるぞ!」
と言った方がワクワクするじゃないですか。
「鬼殺し」だけじゃないのですが、最近は選手のワクワク感が出るように、こういう遊び心を大事にしています。
〇「鬼殺し」の注意点
先にも述べましたが、「鬼殺し」は劇薬です。
注意点がいくつかあります。
注意点1:レベルスイングで振れている選手のための練習であること
レベルスイングというのは地面と平行のスイングのことではありません。
ここでは、そのボールの軌道に入るスイングのことを指していて、多くの場合、ボールは上から下に来るので、下から出ることが多くなるとは思います。
レベルスイングでスイングできているからこそ高めが課題になる=「鬼殺し」が必要になるのです。
便秘じゃない人に下剤は処方しません。
レベルスイングで振れていない人に「鬼殺し」を処方しないでください。
注意点2:「鬼殺し」だけを延々としないこと
「鬼殺し」は劇薬です。
「鬼殺し」ばかり続けているとダウンスイング傾向が強くなってしまいます。
バッティング練習の中の20%ほどにとどめ、逆に敢えて緩いボールを打つ練習もセットで行う、交互に行うなどダウンスイングになりすぎないように注意してください。
処方箋は用法用量をお間違えないようにということですね。
注意点3:テニスボールで行うこと
「鬼殺し」は強くワンバウンドさせるという練習の性質上、コントロールが難しいです。
「鬼殺し」の練習を見ていると、けっこう頻繁にデッドボールが来ます。
また、下から伸びてくるボールを打つため、ファールチップにもなりやすいです。
そのため自打球も増える印象です。
ですのでできれば硬式テニスボールを使用して練習することをおすすめします。
コントロールが良ければ軟式球・硬式球でもできるかもしれませんが、絶対にヘルメット着用で安全面に注意して行ってください。
以上、スピードボール対策に特化した「鬼殺し」の紹介でした。
近年多くのチームで「上から叩く」ではないバッティング指導がされているので、そうしたチームにこそ取り入れてもらいたい練習です。
ぜひ取り入れてみてください。
また、やってみた感想もお聞かせいただけると嬉しいです。
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