1回戦負け続きの弱小チームが都大会へ行くまでの改革をまとめました!
※こちらの記事は2012年に私が初めて都大会に出場したことを振り返って2014年に書いたものです。現在と考え方が異なる部分もあるのですが、当時の文章をそのまま残してあります。
はじめに
この文章は私が指導した中学校野球部が平成初の都大会に出場することができた理由を分析し、まとめたものです。万年1回戦負けで、チームとして成り立っていなかった私の中学校野球部が都大会まで進出することは難しいことでした。しかし、あの都大会出場はたまたまメンバーが揃ったという類のものではなかったと思います(実際能力的に突出していたわけではありませんでした)し、どちらかというと技術指導では並以下の力しかなかった私の元での都大会出場は、別のところでの工夫が大きいと考えます。そこで、今回はそうした工夫をまとめてみましたのでぜひご覧ください。
0、チームの理念
①「目的は人間形成」
…学校の部活動として行う理由は「人間形成」であるということは常々伝えなくてはならない。顧問も監督の前に教育者であるという自覚が必要。校内の生活指導もしくは学級経営と全く同じである。野球を通じて人間性を高めるのであって、野球だけがんばればいいのではないという姿勢で臨む必要がある。この目的は後述する全ての事柄の根底となる。
②「目標は都大会」
…ここはチームの実情によって変わってくるだろうが、私の中学校では都大会と設定した。目的は人間形成だけだと、負けても人間的に成長できれば良いとなってしまう選手もいる。野球はスポーツである。やはり勝ちにこだわることで成長する人間性もある。また、チームの目標がないとチームもまとまるはずはない。ただし優先されるべきは人間形成である。
③学校で活躍する人間作り
…①をより細かくした理念。グラウンドでのみ挨拶がしっかりとできたり、ユニフォームを着ているときだけ礼儀正しかったりする選手がいるが、それでは部活動をしている意味はない。生活の場=学校で活躍できてこそ野球部である。したがって、委員会活動や係活動、授業や行事などで活躍することを選手に求める。また、校歌を一生懸命に歌うことも求める。そのために、毎日練習後、試合の日は試合前に全力で校歌を歌う。ちなみに都大会でも歌った。合言葉は「野球部が学校を変えるんだ」。現に、生活指導困難校であった私の中学校が野球部の変化とともに劇的に変わっていった。愛校心を培うということも大切である。
1、組織作りの工夫
①キャプテン、副キャプテン
…決め方はいろいろあると思うが、投票で決めた。基本的には「みんなから選ばれた」「みんなが選んだ」と言えた方が良いと感じる。大きな権限を与えることで責任感が生まれ、日々の練習から周りをよく見るようになる。そのため、大会の背番号はキャプテンと副キャプテンに決めさせることとしていた。もちろん助言はする。
②幹部会
…キャプテンと副キャプテンにプラスして後述する委員会の長に参加させた。練習や試合の開始前に私のところに集合し、事前にその日の練習の注意点や目標を確認し、練習や試合が成功するように打ち合わせを行う。練習中は私が言わなくとも幹部会が中心になって声かけを行えるようにする。
③委員会
…キャプテンや副キャプテン以外の責任感はどうしても低くなりやすい。そこで委員会を設置した。全選手がいずれかの委員会に所属する。私が設置した委員会は庶務委員会(遠征の連絡、練習試合相手チームのおもてなし、カギの管理、後述するしおりの作成など)、整美委員会(倉庫や道具の管理、清掃の指示、グラウンド整備の指示)、練習メニュー委員会(練習メニューを考える、練習グループの作成など)、野球ノート委員会(野球ノートの管理、書き方指導など)、日本一委員会(後述する日本一への取り組みの指揮)である。気をつけたいのは、役割分担になってしまわないことである。各委員会が真剣にチームがさらに良くなるためにはどうしたら良いか考えることでチームは成長する。責任感が生まれる。キャプテンや副キャプテンではないが使える、使いたい選手を長にすることで活躍の場を与えることができる。
④日本一への取り組み
…技術で日本一になることは難しいが何かで日本一になれれば精神的に優位に立てるということで始めた取り組み。選手がミーティングで決めた日本一を目指す項目は、ベンチワーク・キャッチボール・カバーリング・礼儀の四つ。それぞれ委員会を中心に取り組みを行う。
⑤しおりの作成
…2ヶ月に一度程度、野球部のしおりを作成する。そこまでの練習や試合を振り返ることと、気持ちを新たにすることを目的に発行する。また、各委員会に仕事を分担することで生徒も伸びる。また、全選手の所見を書き、「お前のことをここまで見ているんだぞ」と伝えることで、顧問との関係をさらに良くすることもできる。
2、ミーティングの工夫
①行い方
…日々の練習後のミーティングは5列横隊の形にし、選手主導(キャプテン司会)で行う。時間がある日は委員会ごとに集まって反省をしてから行う。選手の自治力を高めるミーティングであることが望ましい。したがって、教員が一方的に話をするミーティングではいけないと考える。
②次第
…1委員会から 2キャプテン・副キャプテンから 3今日のMVP 4先生から
時間があるときはグループミーティングやスピーチをさせることもある。
③今日のMVP
…その日の試合や練習で一番がんばっていた選手をキャプテン・副キャプテンが選出する。タイムリーを打った選手が選ばれることもあるが、できるだけ目立たないところでも一生懸命にチームのために尽くした選手を選ぶようにキャプテン・副キャプテンには話をしてある。MVPには私からMVPシールが送られる。このシールはしおりに貼って集めることで素敵な景品(バッティングマンツーマン指導券などです)と交換できる。
3、顧問の工夫
①指導後は必ずフォロー
…厳しい指導は必要である。ただし、フォローのない厳しい指導は体罰に等しいと考える。厳しい指導の後にはやり方は問わず必ずフォローを入れる。具体的な指示があると改善されたかどうかも判断できてなお良い。基本的にはその日のうちが望ましい。泣くような厳しい叱責をした場合には選手とともに帰り、家庭訪問を行い、保護者の方に事情を話すこともある。干すことも時として必要であるかもしれないが、干すことは見捨てることと同義ではない。顧問が絶対に見捨てないという姿勢はチームにまとまりを生む。「選手がダメだ」という姿勢は選手に絶対に伝わる。それでは強いチームはできない。選手がダメなのは顧問のせいである。愛のない指導は顧問の自己満足である。部活動は選手の人間形成のためにあるということを忘れてはいけない。愛のある指導は選手のやる気を引き出すことができる。選手のやる気がないのは顧問のせいだと思わなくてはいけない。
②部活通信の作成
…顧問の思いは時としてうまく伝わらないこともある。また、ミーティングで話したことを選手が失念してしまうこともある。そういったことを減らすため、また、選手の意欲をさらに引き出すために部活通信を作成する。私は週1回ペースで作成していた。内容としては先週出た課題と今週取り組むことがメイン。時には食事の大切さや道徳的な内容など、そのときに伝えたいことを盛り込む。また、保護者の方へのメッセージも盛り込むことができるので、保護者の方との関係作りにも用いることができる。
③野球ノートの活用
…毎日の練習の反省や試合への意気込みなどを書かせる。毎日委員会を通じて提出させ、コメントを書いて返却する。
④定期的な二者面談の実施
…意外に個人の悩みは見えてこないものである。定期的に二者面談を行うことで、チームの状況や個人の悩みが見えてくる。この際に、「こういう選手になって欲しい」「これができたらレギュラーだ」「君にはこういう才能がある」といった顧問の思いも伝える。これをしておくだけでモチベーションがかなり変わってくる。
⑤選手の良き見本になること
…選手にはやらせるのに、自分はやらないという人も多い。ものによっては、立場が違うのだからそれも当たり前なのだが、中学生には納得できないこともある。まずは自分が見本を見せることが大切。グラウンドマナー、礼儀、掃除。さらには、食事作法まで見本になるべきであると考える。後述する道徳のこととも関わる。
⑥週1回の道徳授業
…先に話した「人間形成」に関わることである。グラウンドの中だけの指導では「人間形成」に不十分であることも多い。そこで、週1回程度座学で道徳を行う。特に「思いやり」の指導を重視する。「思いやり」は野球のプレーにも大きく関わってくる。声かけ、カバーリング、相手をリスペクトする気持ちなど、思いやりの足りないチームは弱い。野球にも大きく関わってくる。また、私が話をするだけではなく、選手が授業を行ったり、発表したりする時間も多くとる。
※その他、練習面の工夫や技術面、戦術面の工夫ももちろんあります。気になる場合は直接お尋ねください。
以上、私が指導した野球部が都大会に行くまでをまとめた資料でした。
野球部での実践でしたが、その他の部活動にも通用することだと思いますので、ぜひご活用ください。
また、疑問点等ありましたらお気軽にお尋ねください。
関連記事です。