(バッティングの基本)
バッターにはいろんなタイプがいます。プロ野球を見てみても、筒香選手や大谷選手のようなホームランバッター、秋山選手のようなアベレージヒッター、またはバントなどの小技が得意な選手、いろんなタイプがいますよね。もちろんみなさんにも「こんな選手になりたい」という思いはあると思いますが、初めから小さくまとまろうとしないで欲しいと思います。野球をやっているからには誰もが一度はホームランを打ってみたいと思ったことがあるのではないでしょうか。
先生はバッティングで特に重要な三要素は「軌道」、「着地」、「回転」だと考えています。その三要素を習得できるようにこの項では説明していきます。ただし、個々に合う合わないは当然あるので、自分にあったスタイルを確立していきましょう。
1、軌道(スイングパス)
①ボールの軌道に入るスイングパスを習得しよう。
…この後、構えのことなどに入っていきますが、まずバッティングの一番大事な要素として、スイングの軌道(スイングパスとも言います)について触れておかなくてはいけません。ダウンスイング、レベルスイング、アッパースイングなどとスイング軌道によってスイングの名称を使い分けることがありますが、重要なのは「ピッチャーが投げたボールの軌道にスイングパスが入ること」です。そうするとボールを面で捉えることができるので芯で捉える確率が高まります。先生は宮川理論という打撃理論をベースに独自のバッティング指導をしています。そのバッティング理論の中で、ボールの軌道にスイング軌道を入れるというテクニックを習得していきます。長打を打つためには必須の考え方なので覚えましょう。ボールの軌道に入るスイングが本当のレベルスイングです。
2、スタンス
①多少オープンスタンスで構えてみよう。
…簡単に言うと足の位置、構えのことをスタンスと言います。いろんな考え方はありますが、おすすめは多少のオープンスタンスです。理由は身体が開きにくいからです。打てない理由で多いのは身体が開いてしまうことです。開いたら絶対打てないということではないのですが、開いた結果として手打ちになってしまうと強い打球を打つことはできません。初めから開いて構えるオープンスタンスだと後は踏み込むだけなので開きにくいです。おまけにふところが深くなるのでインコースも打ちやすくなります。ただ、構えに関しては相当に個人差があると思います。いろいろと試した上で自分に合ったものを見つけましょう。
②重心は少し後ろ足にしてみよう。
…重心は後ろ足にかけます。後ろ足体重だとあとはパワーを前に伝えるだけです。真ん中重心だと一旦後ろに体重を移す作業が加わります。よってスタンスはオープンスタンスの後ろ足体重がおすすめです。このときに後ろの膝を内側にしぼりすぎると「回転」する余地が少なくなってしまうので、膝をしぼりすぎないようにしましょう。プロ野球選手の多くもこのスタンスで、横浜の筒香選手がまさにこのスタンスを取っています。
~メジャーへ~ 筒香嘉智 2019 ホームラン集 全29本+3本 yositomo tsutsugoh
2、上体の構え
①グリップの位置を定めよう。
…今度は上体の話です。足の位置が定まったらバットを構えます。右の鎖骨の下に窪みがあると思います。そこの前方くらいでバットを握ることがおすすめです。そして右の肘を地面と平行になるくらいまで上げてみましょう。左肘は力を入れずに下ろしておいてください。バットは地面と垂直、真っ直ぐもしくは少しトップをピッチャー側に傾けるように構えます。これがおすすめの姿勢となります。構えた時点でバットが寝過ぎていると腕に力が入り、力み過ぎる原因になります。右肘を不自然に上げすぎる(地面と平行ではない)とこの後のテイクバックに悪影響があるので気を付けましょう。右肘を下げた方がしっくりとくる選手もいるので、いろいろと試してみましょう。この辺りは個人差がかなり大きいです。その後のスイング軌道に悪影響がなければ自分がしっくりくるところで全く構いません。
3、シンクロ
①シンクロ動作を覚えよう。
…テイクバックの前にシンクロ動作(手塚一志さんの提唱しているものです)を入れます。これは聞いたことがないバッティング動作だと思いますが、プロ野球選手のほとんどが入れている動作です。やることはすごく簡単、ピッチャーのモーションで足を上げた後に重心を下げる瞬間(お尻が下がる瞬間)に合わせて前足のかかとを踏んでから足を上げるだけです。なぜこんなことをするのかというと、ピッチャーとタイミングを合わせる(シンクロさせる)ためです。打てない理由で一番多いのはタイミングが合わないことです。どんなモーションのピッチャーでも実は重心を下げてからボールを放すまでの時間はほぼ同じです。つまりシンクロすることによって、ピッチャーのモーションによってタイミングを外されてしまうことは無くなります。バットでシンクロする選手もいるのですが、おすすめはかかとでのシンクロです。かかとでシンクロするためには前足のかかとを少し上げて構えておく必要があります。
4、テイクバック
①縦の意識でテイクバックしよう。
…グリップの位置を下げすぎないように、足を上げ、テイクバックします。背中方向にテイクバックしすぎるとボールから目が離れてしまう、スイングが外回りする、腰を痛める、など良くないことが多いです。縦の意識でテイクバックしましょう。バットはピッチャー方向に斜めになると思いますが、それで構いません。ヘッドをピッチャー方向に入れることで、インサイドアウトでバットが出やすくなります。外に回ってしまったり、ダウンスイングになってしまったりすることが減ります。トップの位置でバットの芯が身体から離れると外回りしやすいので注意が必要です。また、テイクバック時の足の上げ方はバランスを崩さないのであればある程度自分次第で構いません。足を上げたときにテイクバック完成ではなく、接地時にテイクバック完了です。この点も注意しましょう。ボール球の際にテイクバックを取らない選手も多いのですが、それではタイミングが取れません。タイミングを合わせる部分は足をあげるところと、着地のところの2点です。「着地でドン」ができるように、ボール球であっても必ず打つつもりでテイクバックと着地を意識していきましょう。
5、着地
①強く着地しよう。
…前足の着地は意識しないと、そっと着いてしまうことが多いです。着地でボールにタイミングを合わせて、カカトを勢い良く踏み込むことが重要です。強くカカトを着地することで、勝手に上体もついてきます。そうするとグリップからバットが出やすく、インサイドアウトでヘッドが走りやすくなります。たとえノーステップ打法やすりあし打法でもカカトは強く着地することが重要です。また、着地でボールにタイミングを合わせられるようになると、差し込まれたり、泳いでしまったりすることが減ります。そっと着地すると着地のタイミングがつかみにくいので、強く着地するようにしましょう。イメージは「着地でドン」です。
6、スイング
①バットをグリップから出していこう。
…テイクバックの位置がしっかりとできたら、スイング軌道も正しくなりやすいです。バットを振る意識ではなく、バットのグリップをピッチャーの方に出していく意識でスイングしましょう。これだけで、パワーポジションに入りやすくなります。バットを振ろうとするとヘッドが遠回りしたスイングになりやすいです。グリップから出していくことで振り遅れることが少なくなります。スイングに関してはL字逆手を中心とする宮川理論で学んでいきましょう。
②基本はレベルスイングをしよう。
…バッティングの基本はレベルスイングです。しかし、よくレベルスイングを「地面と平行なスイング」と間違えていることがあります。レベルスイングとはボールの軌道に入るスイングのことで、基本的には肩からバットのヘッドまで一直線になります。ですから、低めを振ればゴルフスイングのようになるし、高めのボール球は大根切りのようになります。それがレベルスイングです。
③前脇をあけてみよう。
…「前の脇をしめろ」とよく言われるのですが、それは間違いです。前の脇はあけて構いません。巨人の坂本選手なんかはかなり前脇があいていますよね。前脇をしめるスイングだと、インコースや高めはかなりミートポイントが前になってしまいます。ミートポイントが前になるということはそれだけボールを見る時間が少ない、ファールになりやすい、差し込まれたときにどうにもならないということになります。したがって前脇はしめなくてはいけないという先入観は捨てましょう。脇をあけることでより近くでミートすることができます。
7、フォロースルー
①引き手(ボトムハンド)だけではなく、後ろの手(トップハンド)の使い方も意識しよう。
…フォロースルーとは振り終わりのことです。フォロースルーは肩よりも上にくることが重要です。肩よりも低い位置に来てしまうということはレベルスイングがうまくできていないと考えてください(高めのボール球は除きますが)。また、バッティングは前の引き手が重要とよく言われますが、前の手(ボトムハンド)は正しいスイングパスにするために重要です。それに対して後ろ手(トップハンド)はよりヘッドを走らせる=遠くまで飛ばすために重要です。これも〇〇中野球部で練習をしていく中で自然とできるようになっていきます。どちらの手をメインに使っていくかは選手の個性にもよるのですが、そのあたりは個別にスイングを見ながら教えていきたいと思っています。難しい言葉を使うと、バッティングのタイプが「パンチャー」か「スインガー」かで分類されます。
②大きなフォロースルーを取ろう。
…フォロースルーで後ろ手(トップハンド)を離して良いのかどうか、これはよく議論になることです。プロ野球選手でも半々くらいのように見えます。どちらかというとホームランバッターほど片手のフォロースルーが多いようです。ただ、片手でフォロースルーするにしてもしっかりとミートした最後に後ろ手を離すというイメージでなくてはいけません。結論を言うと両方練習した方が良いと思います。その上で自分にあったフォロースルーを身につけましょう。個人的な見解としては、片手フィニッシュの方がオーバースイング(無理な振り過ぎ)になりにくく、ケガをしにくいという利点があると感じています。どちらにするにしろ、「フォロースルーは大きく」です。また、練習で正しいスイングパスの習得を目指す場合は片手フィニッシュをおすすめします。あくまでも「練習は練習」です。
8、バッティング練習の具体例
①3種類のティーバッティング
…先生が推奨している3種類のティーバッティングを紹介します。どのティーバッティングも斜めからトスするのではなく、正面からトスするようにします。実践で斜めからボールがくることはありません。
・正対打ち(45度打ち)
→トスする人と正対し、ねじりを作って正面に打ち返します。深いトップを作り、外角のボールを強く打ち返すスイングパスを習得する良い練習になります。難しい人は45度で行います。
・ワンバウンドティーバッティング(一本足)
→緩くワンバウンドでトスされたボールに「着地でドン」の意識を強くもってバッティングします。軸足のタメを作り、変化球対応を覚える練習になります。難しい人は一本足で行います。
・突っ込みティーバッティング
→足を大股にし、わざと突っ込んだ状態を作り、軌道の力だけで外野に運ぶ練習です。変化球でタイミングを外されたときの対応の練習になる他、スイングパスの確認にもなります。
9、宮川理論
①長打を打つためのバッティング理論
…宮川理論とは長打を打つためのバッティング理論です。長打を打つためには、「軌道」「回転」「着地」の3点が主に重要になります。この「軌道」「回転」「着地」を様々な練習を通じて習得していくのが宮川理論です。基礎となるL字逆手の練習はバッティングを良くするためには必須の練習だと考えていますので、ぜひ取り組んでみてください。
※先生は宮川理論の元公認指導員ですが、宮川理論を100%そのまま教えているわけではありません。野球理論は様々あり、そのそれぞれに一長一短があります。自分に合った理論を身につけられるようにしましょう。
②宮川理論の思考
…長打を打つために、宮川理論独自と言っても良い思考があるので紹介します。まずは「甘球必打」。これは甘いボールを見逃さずに打つことを指していますが、逆に言えば、甘いボール以外は打たなくて良いことを指しています。早いカウントから厳しいボールに手を出してしまうケースをよく見ると思いますが、もったいないですよね。自分がヒットにできるコースだけを待つことで打率・出塁率が上がります。これをチーム全員で徹底することによって相手チームにプレッシャーを与えることができます。他には「練習は練習」という言葉もあります。日本では練習を試合のように全力で行うことがすばらしいとされていますが、練習はあくまでも練習です。たとえば、スイングの正しい軌道を習得したい場合、全力でスイングするよりも脱力して軽くスイングした方がうまくいきます。「練習は練習」と割り切って、練習ではチャレンジするという姿勢がチームに根付いていくといいですね。
以上になります。
次回はバントやエンドランなどの小技について掲載します。
関連記事です。